三浦俊彦@goo@anthropicworld

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オトイアワセ:
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夢幻系1

2010-12-25 21:34:00 | モンスター映画
 ■インセプション■ うわあ、この映像はすんげーや。ぐわーっと地面が反り返って街が折り畳みゴッツンコになるとことかさ。あーゆー映像作ろうなんて思うか普通? それとか一段外の世界の動きに従って夢の世界が無重力遊泳になる描写とかさ。商店街の爆発とか崩落シーンとかもね。カーアクションだって並のアクション映画以上だし、ビジュアル的にはほぼ満点ですね。で、肝腎の「哲学的(?)含意」はどうだろうな。う~む、これは保留かな。夢の中の夢、ってモチーフは新しいとは言えないし、夢への侵入、共有、観念の植え付けも、そのメカニズムがはっきりしないので哲学的とは言えない。一段深くもぐるたびに時間の速度が変わる、というのもさほどの奇想とは言いがたい。時間経過の変化は実際に起きていることだろうし。ただ明晰夢でそれをやったのは面白いといえば面白いんだよな。意図的に時間の変化を利用したりするわけでね。時間がないときはわざともぐって作業したりと、ふむふむ。夢の中で死ぬと目覚めるけどドラッグが入ってると魂の抜け殻になるんだっけか、確か? オモロイ発想だやね。どうしてそうなるんやという説明がないので現象的面白さにとどまり哲学的にはどうってことないのだが、トーテムによって夢か現実かを区別できるってのは、実際そういうの可能かどうか、考えさせられるって点で哲学挑発的と言えるよな。現実と夢、あるいは夢の異なるレベルの間での人格同一性、自己同一性もテーマになりうるぞ。なるほどそうね、こうやって一つ一つ考えてみるとなかなか哲学的に深い映画なのかも。チューブで繋ぐっていうどうもこの、侵入する技術が何ともローテクなのと、植え付けの方法もまったく手仕事で、言葉で相手に語りかけにゃいかんと。死んだ妻がちょいちょい妨害に来るのがそれこそ観賞上邪魔だったけど、死んだ理由が植え付けの哲学的(でもないか、これは)副作用だったという中落ちには感服しましたわ。あとそう、主人公と妻の住んでた街、中途半端な廃墟っぽさがきわめて魅力的でしたっけ。同系統映画でもやたらアクションづくしだった『マトリックス』に比べてセンチメンタリズムも入って、いっそうバラエティに富んだ内容だったかもな、こっちは。
 ■マウス・オブ・マッドネス■ これ、「メタフィクション系」なんだけど、作品数揃わないから夢幻系に入れさせてもらいますわ。でこれ、全体いい感じなんだけどねえ。映像も綺麗に撮ってるし、室内や深夜のおどろおどろげな閉塞ムードと白昼の明朗ムードの対照もいいし。迷宮感こってり。だけど肝心のクリーチャーがなあ。種類多いし造形もそれぞれ一流とくるので大歓迎なんだけどなあ、出番がなんであんなちょっとだけなのよう。フラストレーションまみれっすよ。いや、要所要所でお目見えなので全体からすると結構クリーチャータイム長いかもしんない気も。そ、『裸のランチ』程度のサービス度にゃいってる感じも。だがいかんせん一体一体がほんの一瞬じゃないの。全体像も一度も無しだし。お、イイクリーチャーだ、と思って俄然身を乗り出すと次の瞬間場面変わってそれっきりでしょう。もっと触手とかじっくり見せてほしかったよう。顔がいっぱい付いてるっぽいのも走ってたっぽいし~、うーんじっくり見つめたかった、予算の関係で特殊効果のボロを出さないうちに引っ込める手法でしょうかねぃ。そのためにチラリズムの奥床しさも生じてクリーチャーの邪悪っぽさも当社比倍増、って手筈かもだが、ま、それでいいか。しかし不完全燃焼なわだかまりも。こういう現実化虚構化的なネタって案外平凡なので、見てる最中はグルグル引きずられる目眩感たっぷり味わえるもののふと我に返ると基本的に安易。そこをテンポの良さで強引に押し通しつつナイスクリーチャー出し惜しみの陰翳効果によって傑作になり得たと。ふむ。著者がチラチラ登場するのは、あれは無しのほうがよかったかなって感じだけど。あとほら、蒸し返して悪いけど著者の姿込みでページ破ってメインモンスター群が現れるあそこんとこは、あぁあそこんとこばかりは、いきなり追跡シーンに移るんじゃなくて、出現場面をじっくりやってほしかったですよう、ハイライトでしょーが、脚、牙、目、そしてまた脚、みたいなディテールだけ個々に映されてもさぁ……。ああもったいない、つか意地悪ぅ。良質モンスターモノだっただけに……。
 ■ジェイコブス・ラダー■ ああ、走馬燈系ね、と始めからバレバレの形で進みながら、後半というか終盤で幻覚ドラッグの話になって、走馬燈系を裏切ろうとする仕掛けに工夫が見られたっけな。噂ほどではなかったがそこそこ楽しめました。
 ■エロ怖い怪談 第弐之怪 ポルターガイスト■ 走馬燈系かと思ったら似て非なるものだった。意外ッちゃ意外。登場人物配置にしても医者と看護婦がああいう形で出てきてたとは、って感じ。事故前には彼氏はいなかったって設定がわかるようにでもなってればもっと感動的だったけどな。しかし全部わかってみるとディテールが凝りすぎてるって印象で。いや、いい意味でだけどね。霊視をして前世の似顔絵描く商売なんて、どう考えてもリアルにしか思えないじゃん、フィクションの中だったら。幽霊つうかゾンビつうか、あれが何だったのか不明だが、あれに犯される空中レイプシーンはエロ度満点。ファックに興味のない俺ですら「エロ……っ」て感じたんだからたぶん本物ですわ。ファック好きの人だったらこれ観てどうなっちゃうんでしょうやら。この映画、なにげに傑作ですってば。だいたいラストの電話がほんと物悲しいです。泣けます。こういうエロくてチョイ怖くてしかも泣ける映画って、貴重でしょほんと。「エロ怖い怪談」シリーズの中で最高だったかも。
 ■エロ怖い怪談 第四之怪 呪幻■ とりとめがないんだなあ。ただ雰囲気いいから見入ってもうたですわい。でも次から次へと夢から覚めすぎじゃないかなあ。もっと抑えてもよかったような。ふてくされた助手の両面性がいい味出してたよね。宅配のドアの叩き方はちょっと誇張しすぎじゃないかね。夢の中だからってんで何が起きても辻褄合っちゃうわけだけど。まあなんやかんや雑然としすぎてて「エロ怖い怪談」シリーズの中では一番下だったかな。
 ■CYCLE――サイクル――■ 毛利家の中の科白は超・不自然なので、全体すげーいいムードというか不条理ホラーになってるのに惜しいなぁ、と思いきや、あのモチーフがわかってみると(つまり夢幻系ってことね)ディテールの不自然さが全部生きちゃうってこと。う~むうまい。ってチョイずるいんだけどね。けどこれやっぱ、傑作じゃないかなあ。オレ好きですよこういうの。自転車の音という中途半端なアイテムをキー概念にしてるとこもなにやら不条理感が増して却ってヨシ。何がなんだかわからんまま切羽詰まった不安にがんじがらめのヒロインの表情よし。こぢんまりした感じで結局正確な状況よくわからんのだけど、こういうワカラナサなら不気味で良し、大歓迎です。
 ■沈黙の惑星■ ラストのメンダックス人の鏡越しの「打ち明け」はないほうがよかったな。どうせ真実か欺瞞かわからない夢の中の情報だもの、雰囲気だけっていっても確定的謎解きなふりしてほしくなかったよ。ま、いろいろ追っ駆けっこシーンについてはそれなりにハラハラできて良かったですが。
 ■ウェイキングライフ■ もっと実写っぽいの期待してたんだけど……。あれじゃあセルアニメとあんま変わりませんな。たえず揺れてるんで目がチラチラしちゃったよ。変わり種としちゃ面白いっちゃ面白いけど、それだけのことかな。実験的ってほどでもないな。目覚めては目覚めては、まだ夢まだ夢……の恐怖みたいなのはわかるけど、全体がしょせん夢ってノリに乗せようとしてるので、切迫感は当然ナシと。全体が現実のはずなのにア~レ~? てムードにしといたほうがよくはなかったかな。まあ類似作がないみたいなんで貴重系ですね。そんなに面白いとは思わなかったけど、価値はあるのかなみたいな。
 ■夢の中の恐怖■ ミチオ・カク『パラレル・ワールド』で紹介されたもんだから期待して観たけどさ。大したことなかったな。1945年の映画にしてはいろいろやってますなって程度か。殺人場面も芝居がかっててヘタレだし(その頃の日本映画とあんまかあんま変わんないんじゃないか)、イギリス映画特有ののんびり度がまあいい雰囲気出してるって言っちゃっていいんかな。ハリウッド的大衆迎合ナシで淡々と作ってはいるやな。しかし科学啓蒙本でわざわざ紹介されるに値する映画とは思えないな、コンセプト的にも映像的にも。
 ■恐怖■ ありゃりゃりゃりゃー。何がなんだかわかんねー代物になっちゃいましたねえ。脳をいじられてるんだか死後の世界なんだか走馬燈なんだかわかんないようにしたかったのかなあ。どうせわかんなくするなら、演技を定型から外してほしかったよ。『CYCLE――サイクル――』を見習ってよ。だいたい片平なぎさはじめ登場人物が格好つけすぎなのよね、わざわざ低い抑揚乏しい声で喋って恐怖感煽ろうと(?)したりねえ、ああいう台詞回し、怖さと関係ありませんって、聴き取りづらいだけですって。怖いでしょ、ねえこういうのって怖いよね、ってしつこくおねだりされてる感じでほとほと厭になった。ラストはありゃ何ですかな、集団自殺の遺体回収風景が出てくることによってどんでん返しとでも言いたいのかな? 肝腎の本筋が行ったり来たり何がなんだかどうでも良くなっているおかげでちっとも効果出てませんや。どうせ夢か幻の可能性ありってことなのか全般流れが恣意的で、とくに途中からやたらエリコ、エリコってさも中心人物っぽくみんなの心配やら懸念やら注目を浴びたりするんだけど、こっちとしちゃエリコって誰?て感じ。中途半端にドラマっぽくしてるもんだから人物相関がわかりづらいのが致命的になっちゃったよ、もう。みんながみんなああ深刻ぶってると誰に注目すべきなんだかさっぱりだし。何が問題だかもさっぱりだし。脳手術か集団自殺か、どっちかに焦点合わしてくんないと全面分裂でしょうが。あっちゃこっちゃ保険かけとかないと不安なんですかねえ。Jホラーも競争激しいのかな、意識の上では? ま、主題分裂状態でもそりゃね、ディテールさえよければ。なのにそこまでがあんなレベルでは……、結局生きてたわけだけどオッサン刑事の殺され方も間抜けこの上ないし、あとほら、母ちゃんが「麻酔は要らない」とかやけに急いで脳操作してもらってたのは何なの? 脈絡無いってばよ。どうせ夢だから、って適当なシーン混ぜこまんでくれや。ああいった見切り発車ぶりが要所要所で水を差しまくるんだなあ。これ、いくらなんでも大駄作。

オカルト系16

2010-12-23 00:39:00 | モンスター映画
 ■スペル■ くだらない言いがかりでの逆恨み系ですな。本人にとっちゃくだらなくないところが怖いのだが。こういうの観ると、理不尽こそが最大のホラーって気がしてくるよね。このラストは、早くもひとつのジャンルを形成したような気配? 一件落着・いや勘違いだった系。地獄に引き込まれるってどんなだろうと思ったらあんなですか。炎がほとばしってましたね。なんかこういう、タイムリミットモノというかな、強制的に緊迫感の中に置かれるっぽいストーリーは、ある意味反則なんだけど実際面白いんだから文句ないやね。しかしああいうクソババアってほんとにいそうだから。そこが怖いよなあ。全編を引っ張ってたのはタイムリミットよりそっちの方だったんだろうな。ババアと女との肉弾戦、グロ面白かったなあ。双方のイジメ合戦みたいなね。あはは。振り返ってみると、窓口でのババアの形相が一番怖かったりするんだよね。ほとんどコメディなんだが、あのラストで無事ホラーとして軟着陸できましたな。唾やゲロや痰がホラーの小道具として有効だってことこの映画で再発見させていただきましたよ。あともちろん老醜もね。しかもそれだけじゃない。「出世のためには無理にも冷酷に」的ステロタイプ対応が命取り、って教訓もそこはかとなく読み取れたしね。冷酷が仕事できるの意、なんて誰も決めてないのにね。つまり俗物的自業自得と。しかもあの女、根はさほどの性悪女でないだけに、というか細かいとこ忘れたけど確か自己犠牲的なところもありむしろ善良な人間とも言えるだけにこのオハナシ、かわいそうで救いが無くて爽快だったです。いやあ、中身濃い娯楽映画でした。
 ■クライヴ・バーカー 血の本■  欲求不満の女性教授がイケメン学生をひっかけて強引に心霊実験に参加させる話ってか。チョイ面白い。ってあの学生が実際に霊能力持ってるって設定だからややこしいんだなあ。だから趣味と実益を兼ねた形であの学生に惹かれたって設定なのかな。しかし自分で監視カメラ仕掛けた部屋でわざわざセックスするなよ。しかもその映像、研究協力者のカメラマンといっしょに確認しなさんなっての。しかも相手の学生当人もいっしょにさ。しかしビジュアル面は皮膚に血文字が書かれてく描写が生々しくてよかったすよ。あ、もちろん女の子の顔皮剥ぎもね。サービスも良くて3回くらいリプレイしてくれたじゃないですか。剥がれたあと顔面引きつりピクツきしてくれてたりしたしね。幽霊が大挙して姿を見せるのはラストシーンだけだが、そこまでの盛り上げ方はすこぶる良し。と思ったら、ラストのラストは血の海かい。トランクが血の泉に変わるシュールな展開には得した気分。ラストシーンを二つもらったような気分だよね。この映画、期待ゼロだっただけに(だって『ヘルレイザー』系以外のクライヴ・バーカー発の映画って、『ロウヘッド・レックス』だの何だの、クズ中のクズばっかりだったんだもん)ほんと得しました。
 ■シェルター■ とりとめのない内容だったな。というかどんどんずれていく感じ。多重人格者っていうからもっとこう、『アイデンティティー』みたいな緊迫感を期待してたんだがな。だいたいオカルトになっちゃった時点で脱力するよ。多重人格じゃなくて憑依なんだろ。多重人格否定派のヒロインがほら、殺された車椅子少年と母親の会話に立ち合って困惑するあたりの微妙な描写あたりまではわくわくさせたんだけどねえ。というか、最初のオッサンが土を吐いてオッ死ぬところでいやな予感はしてたんだわ、こりゃジャンルが違うなと。いや、いいんですよオカルトでも。ちゃんとオカルトになってればね。しかし何だかなあ、鍵握ってるはずのまじない師も出番少ないし、目の代わりする少女っぽい不気味キャラは期待させただけでなおさら影薄いまんまだったし、ああいう大仰な人工呼吸姿勢でわざわざ魂を吸い取ってく意味もよくわかんないんだよね。何をしようというのか。そいでどうして咳き込んで死にいたる症状をばらまかにゃならんのか。シェルターっていったい何に使うのか。しかしまあ、信仰と懐疑の拮抗とか、有神論文化圏ではそれなりの問題意識投げかけてるんだって認めにゃならんのかねえ。娘が最後、生き返ったときにゃ一瞬「ああ、しょせんこれかよ……」と再度脱力モノだったが、例の歌を口ずさんだ時点で「おうおう、そういうことか、よっしゃよっしゃ」と満足いたしました。全般、よくできた映画だったけど焦点がいまいち定まりませんでしたね。
 ■ニードフル・シングス■ 店主がどうも不死身の悪魔ってだけでオカルト系に入れるのもどうかと思うがまぁ……、最後ンとこで破壊シーンになるとはね。なんかそれぞれの秘めた大切なモノ、系のサイコ寄り設定かと思ったら絵的にどうしてもああいう展開になるんかいな。ああいう悪魔って、とことん愉快犯なんだろうな。そういう目で見ると一気に冷めちゃうけどね。
 ■エコエコアザラク(2001)■ ラストがなあ……。ラストってテレビ局のスタジオんとこね。そこまでは結構いい雰囲気だったんだけど。教師のオーバーアクションなんかがブチコワシだったりしてたけどそれなりにさ。
 ■満月のくちづけ■ 深津絵里ってあんなに眉毛太かったっけ? それともそうゆーメイク? いずれにしても『1999年の夏休み』観たばっかりだったせいか男子が女装してるようにしか見えんで困ったよ。マーク・ケア似の美術教師がうたた寝してるとこキスしようと迫られてもなあ、あの眉毛で……、つかここに出てくる女の子みんな眉毛太いんですけど。ああ気色わりッ『1999年の夏休み』の呪縛がキツイねぇ。
 ■スクリーム・ハウス■ ほとんどオカルトとしての意味ないけど、彫像が恐怖をオーダーメイドで受け付けます、てなコンセプトが新しかったつもりかなあ。本人の怖いモノに殺されてくわけね。ていうわりには各々死に方それぞれがいまいち鮮明でないし、恐怖のカテゴリを列挙したわりにはコウモリ、蜘蛛なんかは完全無視されてるし、黒人の死に方ときたらまったく無個性。一人一人に合わせて丁寧に虐殺してほしかったよね。あゆふに列挙されたからにはマニアックにえぐっていくのが当然じゃないかい? あともうちょいお化け屋敷らしさがほしかったかも。ただグルグル走り回ってる印象しか残ってないのよ……。