博愛が偏愛の味消しになることはない。味消しになるのはたいてい、博愛への偏愛である。
■クローバーフィールド/HAKAISHA■ お、面ッ白えぇぇぇ~~~~ッ! 大満足ですぅほんともう。怪獣映画はこうでなきゃ! マンハッタンのど真ん中に怪獣出現、偶然巻き込まれて逃げまどう群衆の一凡人がハンディカメラで一部始終を撮影……、って工夫無いようにみえてじつはもンのすげーシチュエーションじゃないですか! すげーよこれ。怪獣マニア的にとてつもない臨場感。怪獣のほぼ真下を間一髪地下鉄駅に駆け込むところなんざ鳥肌立ちました。怪獣映画観て心底怖いと思ったの、実に『ガメラ対バルゴン』以来四十何年ぶりっす。すげー、素直にすげーよこれ。怪獣がまたいいんだなぁ。フリークスっぽいいうかほんと身悶えるような痛々しいような不定型な動きしてて、ゴジラみたいな予想可能な動きじゃないもの、不意に方向転換だもの、怖いよ~~。チビのパラサイト怪獣(?)たちもおっかねーのなんの。おっかないクチをガシガシやってるわりに人間とサシでいい勝負って微妙な弱さがまたいいねぇ。メイン怪獣の身体からボロボロこぼれてたとこからしてパラサイトですかねぇ、最初は子どもかと思ったんだが? 咬まれた人間にとっちゃパラサイトだったようだが……、変身場面だか体ぶち破り場面だかはシルエット止まりでちゃんと映しちゃくれませんでしたね。あれでいいんですが。パロディ版(つか、真面目な真似っこ?)の『バトルフィールド TOKYO』みたいな小うるさい画像乱れの小技に頼らず、正々堂々リアルタイム風を表現しおおせました。セントラルパークにヘリ墜落したあとで、なんか怪獣が丁寧にも撮影主にかかりっきりでモーションつけて襲ってくれますよね。しかしサイズが全然違うんだからたった一匹の人間相手にああいう律儀なフォローってどうなの、とあそこだけ疑問でしたが。しかしあれがないとドアップで怪獣の顔映せんかったものね、ストーリー的にはともかく作品的にはOKです。つかヘリにジャンプしたあいつもいっしょに墜落現場にとどまって、這い出す生存者にじっと注目してたって流れはべつにそうおかしくもないか。こんなディテールが気になるのも全体リアルすぎる仕上がりになってたからでね。自由の女神のアタマがすっ飛んでくるシーンにしても、「おいおいみんな、もっとあわてふためいてパニクるだろう? なに回り込んでしげしげ見つめてんだい?」て突っ込みたくなるとこだけど、それは映画的感覚でのこと、いきなりこられたら実際たぶんああいう反応になるんじゃないかなと思わされたし(911んときもみんな逃げるどころか一斉にボケーッと見上げてたでしょ?)。しかしアタマふっ飛びの瞬間からしてそうなんだけど、大半の破壊が高層ビルに隠れて見えない角度でなされてるために、ええほんと、前半は恐怖倍増でした。見えない恐怖と見えてからの恐怖のバランスがほんと絶妙。見えなかったときの恐怖に負けてませんもの、あのフリークスっぽい異形怪獣のビジュアルったら。ところでこの映画は「POV系」とでもして別に立項すべきだったかな? 誰もドキュメンタリーとは思わないしな。
■[Focus]■ しょせんああいったマニア族って性根は犯罪者よ、的メッセージを伝えてるって言っちゃ身も蓋もないが、そのへんの急変がぞくぞくもの。ああいううざったいディレクターは俺もサプリメントの煩雑な取材などで経験あるから早く天誅下っちまえって感じで観てたし、浅野忠信がブチキレた瞬間は「ついに! よくぞ!」的カタルシスがありましたな。しかも予想よりずっと深くぶち切れてくれたんで。ああいううざったいレポーターっているんだよ、ほんとに。でこれ、ブレアウィッチプロジェクトより前だよね。こっちの方が出来がいいじゃん。とはいってもブチキレの瞬間から鳴り響いた音楽が気になるなあ。カーラジオだと思えば問題ないんだけど、BGMだとしたらあそこでドキュメンタリーを放棄したことになるなあ。最後までフェイクドキュメンタリーを貫いてほしかったけど。だけどいいのか、あとで押収された映像が後半編集されてBGMがくっつけられたと考えれば。それとカメラマンの立ち位置が気になる。監禁状態の時もカメラマンだけは特別扱いかな? 普通3人並べて監視されるものだと思うが。セックスシーン撮ったくらいで別に恐喝に使えるとも思えんからカメラはもう不要だし。やっぱいくら拳銃持ってるからって3人とも縛りもしないで連れ回すのはしんどいと思うよ。てわけであそこは3人並べて縛っとかないと展開不可能では。といった気がかりもあるにはあるが、根暗気弱な青年が犯罪者の本性を突如全開、あの瞬間のリアリティだけでこれ大傑作ってば。
■オカルト■ 笑えましたわ~。いやあヨカッタヨカッタ。観はじめたときゃ「こんな演技レベルで真面目にやろうってのか?」ってやな予感だったんだけど、大量殺人とかあの世とか呪文とか変な因縁が重なって、強引に持ってってくれて、単なるコメディもといホラーじゃなかったですぜよこれは。男が次第に傲慢に説教臭くなるあたりは実際よくあるパターンなんでリアリティ満点よ。欲を言えば大量殺人は爆弾じゃなくて肉弾でやってほしかったな。どうやったら人混みで短時間に大人数を殺せるかの研究とか二人でやってれば迫力じゃん、爆弾せっせと作るよりは刃物を研ぎ澄ましてくれた方がそりゃあ。そこんとこ除けば全くうまくできてたと思います。町並みを通過するわけわかんない霊体(ですかね、あれ?)といい「次はおまえ」の意味の反転といい演出補の女性の『集団自殺ネット』以来のというかそれ以上の素朴な適度にウザイ熱演といい、ほんのりおどろおどろしい質感つきの軽いホラー、って新ジャンルで成功してる。いやほんとこれ、楽しめたので。この監督の最高傑作でしょうよ。
■シロメ■ これも良かった。笑えました。『オカルト』程度の怖さがあればもっとよかったんだが、ももクロのプロモーション兼ねてる以上ちょっと無い物ねだりか。『悪魔が棲む家2001』みたいにアイドル容赦なく血みどろにしてほんとに怖くしちゃうといくらなんでもイメージダウンになりかねないからね。しかしドッキリというのがどこまでホントなのか。シロメという架空の都市伝説をアカリンがはじめから知ってたり、カナコと2人で超常現象に反応したりとか、どうみてもドッキリじゃないでショ少なくともあの2人は知ってたでしょ。同じ暗示にかかったとも考えにくいからさ。まさかスタッフがほんとに天井に無数の目を映し出してももクロを怖がらせた、なんて手の込んだことはしてないよな。もしそうだったらその百目状態の映像を映画本編に使わない手はないからな。そんな映像が出てこなかった時点でふたりは脚本サイドの人間。とはいうものの、本職として営業中の宗優子と神島剣二郎が出てきた時点でその部分はヤラセなし、とはこりゃ誰もが思うわな。霊能力者が心霊ビデオのヤラセ疑惑普及に進んで一役買うとは思わんものなあ。霊能力業界、けっこう自信持ってるのかもな。ふつう宗教だったらフィクションでも信仰を茶化すようなこと許さんものなあ。ともあれmvpは吉田です。二度目登場んときゃ吹きましたよ、当然でしょう。プチポルターガイストも吹きましたし。あそこ、ももクロも笑いをこらえるの必死だったんじゃないかな。モロ笑わせないためにちっちゃなモニターで見せたのか。ありゃあ笑うよ普通。それにしてもやっぱ、テレビの特番と映画じゃ全然心構えというか、スタンスが違うのかな? でなきゃコンセプトが弱まるもんな。ラスト近くに三転四転て感じでくるくるオチや種明かしが畳み掛けられるところもよかったですわ。憑依じゃないにせよ普通のヒステリーくらい起きてもおかしくないからね。しかしなんちゅうかな、一部のメンバーにとっちゃほんとにドッキリだったとして、あの子たち心の底では全然超常現象なんて怖がってないね。霊だの呪いだのちゃんと信じて怖がるのがアイドルのたしなみ、ってレベルで精一杯やってましたね。無理して怖がり顔作ってるのが初々しい子たちで。
■パラノーマル・アクティビティ■ 楽しめたんでOK。はい、そりゃいろいろ言えばきりがないですよね。あんなんなってたら速攻で引っ越せよとか、家じゃなく人に憑いてるらしいから無駄だというなら霊能者なんぞじゃなく警察呼べよとか。実際もう物理的に引きずられたり具体的にやられてるんだから警察張り込ませるしかないでしょ。霊能者が呆気なく退散しちまったのが効果的だったのかどうなのか。退散の仕方で一悶着あってほしかったような。アッサリしすぎてたんで。ま、とにかく、いろいろ不自然な設定だったが寝室の監視映像があまりに引き込まれるのでみんな帳消し。あのアイディア文句なし。寝てるときにいろいろ起こるって、やっぱ怖すぎですから。ああいう怖いシチュエーションを発見してくれことがこの映画のすべてとも言えるな。ただ、なんだな、予告編でさかんにやってたあの、客席でみんながワーッとのけぞるやつ。あれってたったの一回だけだよね。ラストだけ。ま、過剰広告とは言わないけど、ショックシーンはもうちょい散りばめられててもよかったんじゃないかなと。でもまあ、全体があんなだからラストが生きたとも言えるな。ドッすーん、ッてあれ、マンガチックでよかったな。たしかにウワッと仰け反らされたが、笑いの方が先行しちゃったよ。「もう一つのエンディング」より本編の方がずっとインパクトあったよ、あらゆる意味で。
■パラノーマル・エンティティ■ 家族の不機嫌なやりとりは観てて不愉快。兄にふてくされた応対しかしないカワイゲのない妹が、ピンチの時には兄ベッタリ。いいかげんにせいよ。撮影は主治医(だったっけ?)の指示なんだから撮るな撮るなうるさいよ。自分の問題だろうがっつのよ。現象そのものはパクリ元の『パラノーマル・アクティビティ』よりも凝ってるけど、うん、モノの動き方とかね、音とか。おんなじレベルの超常現象が延々とくどいって感じかな。でも天井の足跡ってのは快挙だったね。あれはかなり怖いんじゃないか、ほんとにああいうのに出遭ったら。そいでこっちの霊能者は危険を察知できずに殺されちゃうのね。自信たっぷりっぽかったのにねえ。『アクティビティ』のヘタレ霊能者よりは健闘した、と讃えたいとこだけどなんせ見せ場なく気づいたら死んでた的な端役だったんでどーにもフォローしようがありませんな。惨殺シーンくらい見せてほしかったのだが。
■パラノーマル・フェノミナン■ なんとも異様な雰囲気。とくに第2話。パクリ元と噂される『フォース・カインド』よりか面白かったぞい。キーン音の効果お見事。ロケはどこだろう。中国の山水画みたいな風景。消えたお友達捜しがなぜか一直線まっしぐらだったのはまあこれもフェノミナンのうちか。そいでモザイクかかってた赤いべっとりしたものはあれいったい何? モザイクやめてよね。AVじゃないんで。モザイクっていえば第1話はどうもちょっとな。や、乳にモザイクトは何事とかそうゆんじゃなくて、絡みシーン(ていうか前戯シーンだな)があまりに定型ってことよ。自画撮りマニアならもっとフェチがかったというかさ。なんかそれ系のカップルだけが被害に遭うんでしたとさ、みたいな含みがほしかった。しかし鏡の手形って意外とこわいもんだね。湯槽の中の髪の毛だけは避けてほしかったけど。
■パラノーマル・サイキック■ どひゃ。こりゃあ例によって駄目ダメだ。この監督って超駄作しか作らない珍しい人だが、中ではこれが一番マシなのかもな、これでも。しかしのっけから無駄なシーンづくしだねえ。無内容な打ち合わせが延々と続く。ほんとこれ以上無内容にできないって会話が続いて、そのわりに女性レポーターはそのあとほとんど登場せず。霊感あるとやらの女性タレントも一瞬にして退場。監督自身もときおりゴキゲン伺いに顔出すだけ。夫婦(にはまだなってないらしいけど)の会話がまた無内容この上ない。時間稼ぎのためだけの捨てシーンが多すぎだよ。ときどき訪れる紹介者のオバチャンは結局何だったの? 伏線でも何でもなかったね。なんか思わせぶりにいろいろやっといて全部放りっぱなしかい。全然関係ない素材を3つ4つくっつけてみた感じだな。そもそも定点カメラの至近距離で一回くらいコトを起こさにゃ話にならんでしょう。二階で起こることもなんか箱が落ちるってだけのチマチマぶり。ガラス戸の向こうを影が横切るとこだけが見どころってか。侘び寂び的なストイックな味をもし狙ったなら狙ったで、やりようがあったでしょ。こうも低レベルの出来事ずくめじゃあ忍耐が続かんかったなあ……、ふわっと暖簾がそよぐあたりの描写は一瞬期待させたんだがねえ……。ラストがあれっぽっちじゃあどうも……『アクティビティ』のラストを知ってる身としちゃあさ。
■フォース・カインド■ 日本版だけに収録のミラのインタビュー、あれ反則だろ。作品内だけでフェイクを完結させるのが筋なのに。あれはルール破りですよ、作品外からああいうこと言われると、ほんとに信じる人がでてくるぞ。薬事法に相当する法律でフェイク映像も取り締まるべきでは、と言いたくなってしまう。円盤の映像は微妙なアングルで撮られていて良しと思ったが、むしろポイントは心理学者と患者のやりとりっていうか、そのへんもっとリアルに仕立ててほしかったな。狂乱の有様はなくてもよかったと思うが。サイコなのかオカルトなのか判別しがたくしたかったのはわかるけど。しかし再現映像と記録映像を交互に、って手法は新しいのでは。いや、普通っちゃ普通だが、再現の方でしっかりドラマを作ってメインの物語にするってのはやっぱ新しい。これなら有名な俳優使っても違和感ないしね。だから手法的に満点だが、肝腎の本体が迫力不足、ってとこかな、うん。じつはもっといろいろ評してやろうと思ったけどもうさっそくほとんど憶えてないんですよ。意外と薄味な映画だったんだな。まさかほんとに騙そうとして抑制した結果があれかな? やめてよ、観る方もわかってんだからちゃんとエンタテイメントにしといてよね。
■ノロイエ■ ぷは。いやぁブッたまげました。こういうのでしたかや。ほんとどーゆーんだってずっと思ってましてね、amazonはじめウェブでいろいろレビューを見せられてましたが、えーとみなさん、お怒りのようで。あるいは御脱力のようで。下手な演技、とか学芸会レベル、とかウソ臭い、とかリアリティゼロ、とか真面目にけなしてらっしゃいますが、あのですね、この演技、下手なんじゃなくてですね、そしてウソ臭いとかリアリティ云々とかじゃなくてですね……、当然……、しかしあれれ? これ系のファンの方々ってそういう見方してるのかと改めて……、いやぁ私はこういうのアリだと思いましたよ。笑えますよこれ。真顔であの演技を通したキャストの皆さんに拍手ですよ。って、そういう反応でいいのか? ほんとにただドヘタなだけという可能性もあるぞ。確信犯でも何でもなくてただ大根なだけだという。いや、そうじゃないと思いたい。だからほんもんですって『ノロイエ』は。この極限的ど~しょ~もなさは狙って作れるもんじゃないし、狙わなきゃなおさら作れるもんじゃない。うーんなんていったらいいかなあ。子どもが倒れるときにポタポタポタっと水が滴るところ、謎めいていてよかったじゃないですかとか、そんなのフォローにならんやな。しかし脚本がけっこう工夫されてたことは確か。その工夫が、わざとかなあ天然かなあ、ことごとくピント外れなところが大駄作いや大珍策になった原因だな。CMだけが手がかりのほとんど誰も見てないローカル放送って……、だいたい編集済みの商品に仕立てたって設定なんだからCMの早送りは要らんでしょうが。ほーんと馬鹿。それに早送りであれじゃあCM長杉。だいたいあの画面はVHSじゃあるまいし。ラストの煙の出方も、玄関ドアわきで煙幕焚いてるだけって位置関係が見え見えすぎ。それに髭のディレクターが自殺しにゆくっぽいラストなんだけどなぜにそこまで映像に入ってるですか? 生放送のスタジオに髭がいて喋ってて、その放送を録画した投稿なんだから髭の最期にゃ間に合わんはず。あの映像はどこから? 番組の続きっぽいのが時間関係無視したデタラメもいいとこですな。とまあ、すべて意図的なウケ狙いでない限りフォローのしようもないしょー~もない作品でした。って意図的でしょ? よくやった。よくやったと言わせてくれ。このジャンル(ホラードキュメンタリー)のパロディ的自己批評としては大傑作。といいつつ結局、いくら何でもこれはなぁ、俺もアマゾンに評価出すとしたら絶対星一つだなこれ。それ以外は無理でしょ。
■[Focus]■ しょせんああいったマニア族って性根は犯罪者よ、的メッセージを伝えてるって言っちゃ身も蓋もないが、そのへんの急変がぞくぞくもの。ああいううざったいディレクターは俺もサプリメントの煩雑な取材などで経験あるから早く天誅下っちまえって感じで観てたし、浅野忠信がブチキレた瞬間は「ついに! よくぞ!」的カタルシスがありましたな。しかも予想よりずっと深くぶち切れてくれたんで。ああいううざったいレポーターっているんだよ、ほんとに。でこれ、ブレアウィッチプロジェクトより前だよね。こっちの方が出来がいいじゃん。とはいってもブチキレの瞬間から鳴り響いた音楽が気になるなあ。カーラジオだと思えば問題ないんだけど、BGMだとしたらあそこでドキュメンタリーを放棄したことになるなあ。最後までフェイクドキュメンタリーを貫いてほしかったけど。だけどいいのか、あとで押収された映像が後半編集されてBGMがくっつけられたと考えれば。それとカメラマンの立ち位置が気になる。監禁状態の時もカメラマンだけは特別扱いかな? 普通3人並べて監視されるものだと思うが。セックスシーン撮ったくらいで別に恐喝に使えるとも思えんからカメラはもう不要だし。やっぱいくら拳銃持ってるからって3人とも縛りもしないで連れ回すのはしんどいと思うよ。てわけであそこは3人並べて縛っとかないと展開不可能では。といった気がかりもあるにはあるが、根暗気弱な青年が犯罪者の本性を突如全開、あの瞬間のリアリティだけでこれ大傑作ってば。
■オカルト■ 笑えましたわ~。いやあヨカッタヨカッタ。観はじめたときゃ「こんな演技レベルで真面目にやろうってのか?」ってやな予感だったんだけど、大量殺人とかあの世とか呪文とか変な因縁が重なって、強引に持ってってくれて、単なるコメディもといホラーじゃなかったですぜよこれは。男が次第に傲慢に説教臭くなるあたりは実際よくあるパターンなんでリアリティ満点よ。欲を言えば大量殺人は爆弾じゃなくて肉弾でやってほしかったな。どうやったら人混みで短時間に大人数を殺せるかの研究とか二人でやってれば迫力じゃん、爆弾せっせと作るよりは刃物を研ぎ澄ましてくれた方がそりゃあ。そこんとこ除けば全くうまくできてたと思います。町並みを通過するわけわかんない霊体(ですかね、あれ?)といい「次はおまえ」の意味の反転といい演出補の女性の『集団自殺ネット』以来のというかそれ以上の素朴な適度にウザイ熱演といい、ほんのりおどろおどろしい質感つきの軽いホラー、って新ジャンルで成功してる。いやほんとこれ、楽しめたので。この監督の最高傑作でしょうよ。
■シロメ■ これも良かった。笑えました。『オカルト』程度の怖さがあればもっとよかったんだが、ももクロのプロモーション兼ねてる以上ちょっと無い物ねだりか。『悪魔が棲む家2001』みたいにアイドル容赦なく血みどろにしてほんとに怖くしちゃうといくらなんでもイメージダウンになりかねないからね。しかしドッキリというのがどこまでホントなのか。シロメという架空の都市伝説をアカリンがはじめから知ってたり、カナコと2人で超常現象に反応したりとか、どうみてもドッキリじゃないでショ少なくともあの2人は知ってたでしょ。同じ暗示にかかったとも考えにくいからさ。まさかスタッフがほんとに天井に無数の目を映し出してももクロを怖がらせた、なんて手の込んだことはしてないよな。もしそうだったらその百目状態の映像を映画本編に使わない手はないからな。そんな映像が出てこなかった時点でふたりは脚本サイドの人間。とはいうものの、本職として営業中の宗優子と神島剣二郎が出てきた時点でその部分はヤラセなし、とはこりゃ誰もが思うわな。霊能力者が心霊ビデオのヤラセ疑惑普及に進んで一役買うとは思わんものなあ。霊能力業界、けっこう自信持ってるのかもな。ふつう宗教だったらフィクションでも信仰を茶化すようなこと許さんものなあ。ともあれmvpは吉田です。二度目登場んときゃ吹きましたよ、当然でしょう。プチポルターガイストも吹きましたし。あそこ、ももクロも笑いをこらえるの必死だったんじゃないかな。モロ笑わせないためにちっちゃなモニターで見せたのか。ありゃあ笑うよ普通。それにしてもやっぱ、テレビの特番と映画じゃ全然心構えというか、スタンスが違うのかな? でなきゃコンセプトが弱まるもんな。ラスト近くに三転四転て感じでくるくるオチや種明かしが畳み掛けられるところもよかったですわ。憑依じゃないにせよ普通のヒステリーくらい起きてもおかしくないからね。しかしなんちゅうかな、一部のメンバーにとっちゃほんとにドッキリだったとして、あの子たち心の底では全然超常現象なんて怖がってないね。霊だの呪いだのちゃんと信じて怖がるのがアイドルのたしなみ、ってレベルで精一杯やってましたね。無理して怖がり顔作ってるのが初々しい子たちで。
■パラノーマル・アクティビティ■ 楽しめたんでOK。はい、そりゃいろいろ言えばきりがないですよね。あんなんなってたら速攻で引っ越せよとか、家じゃなく人に憑いてるらしいから無駄だというなら霊能者なんぞじゃなく警察呼べよとか。実際もう物理的に引きずられたり具体的にやられてるんだから警察張り込ませるしかないでしょ。霊能者が呆気なく退散しちまったのが効果的だったのかどうなのか。退散の仕方で一悶着あってほしかったような。アッサリしすぎてたんで。ま、とにかく、いろいろ不自然な設定だったが寝室の監視映像があまりに引き込まれるのでみんな帳消し。あのアイディア文句なし。寝てるときにいろいろ起こるって、やっぱ怖すぎですから。ああいう怖いシチュエーションを発見してくれことがこの映画のすべてとも言えるな。ただ、なんだな、予告編でさかんにやってたあの、客席でみんながワーッとのけぞるやつ。あれってたったの一回だけだよね。ラストだけ。ま、過剰広告とは言わないけど、ショックシーンはもうちょい散りばめられててもよかったんじゃないかなと。でもまあ、全体があんなだからラストが生きたとも言えるな。ドッすーん、ッてあれ、マンガチックでよかったな。たしかにウワッと仰け反らされたが、笑いの方が先行しちゃったよ。「もう一つのエンディング」より本編の方がずっとインパクトあったよ、あらゆる意味で。
■パラノーマル・エンティティ■ 家族の不機嫌なやりとりは観てて不愉快。兄にふてくされた応対しかしないカワイゲのない妹が、ピンチの時には兄ベッタリ。いいかげんにせいよ。撮影は主治医(だったっけ?)の指示なんだから撮るな撮るなうるさいよ。自分の問題だろうがっつのよ。現象そのものはパクリ元の『パラノーマル・アクティビティ』よりも凝ってるけど、うん、モノの動き方とかね、音とか。おんなじレベルの超常現象が延々とくどいって感じかな。でも天井の足跡ってのは快挙だったね。あれはかなり怖いんじゃないか、ほんとにああいうのに出遭ったら。そいでこっちの霊能者は危険を察知できずに殺されちゃうのね。自信たっぷりっぽかったのにねえ。『アクティビティ』のヘタレ霊能者よりは健闘した、と讃えたいとこだけどなんせ見せ場なく気づいたら死んでた的な端役だったんでどーにもフォローしようがありませんな。惨殺シーンくらい見せてほしかったのだが。
■パラノーマル・フェノミナン■ なんとも異様な雰囲気。とくに第2話。パクリ元と噂される『フォース・カインド』よりか面白かったぞい。キーン音の効果お見事。ロケはどこだろう。中国の山水画みたいな風景。消えたお友達捜しがなぜか一直線まっしぐらだったのはまあこれもフェノミナンのうちか。そいでモザイクかかってた赤いべっとりしたものはあれいったい何? モザイクやめてよね。AVじゃないんで。モザイクっていえば第1話はどうもちょっとな。や、乳にモザイクトは何事とかそうゆんじゃなくて、絡みシーン(ていうか前戯シーンだな)があまりに定型ってことよ。自画撮りマニアならもっとフェチがかったというかさ。なんかそれ系のカップルだけが被害に遭うんでしたとさ、みたいな含みがほしかった。しかし鏡の手形って意外とこわいもんだね。湯槽の中の髪の毛だけは避けてほしかったけど。
■パラノーマル・サイキック■ どひゃ。こりゃあ例によって駄目ダメだ。この監督って超駄作しか作らない珍しい人だが、中ではこれが一番マシなのかもな、これでも。しかしのっけから無駄なシーンづくしだねえ。無内容な打ち合わせが延々と続く。ほんとこれ以上無内容にできないって会話が続いて、そのわりに女性レポーターはそのあとほとんど登場せず。霊感あるとやらの女性タレントも一瞬にして退場。監督自身もときおりゴキゲン伺いに顔出すだけ。夫婦(にはまだなってないらしいけど)の会話がまた無内容この上ない。時間稼ぎのためだけの捨てシーンが多すぎだよ。ときどき訪れる紹介者のオバチャンは結局何だったの? 伏線でも何でもなかったね。なんか思わせぶりにいろいろやっといて全部放りっぱなしかい。全然関係ない素材を3つ4つくっつけてみた感じだな。そもそも定点カメラの至近距離で一回くらいコトを起こさにゃ話にならんでしょう。二階で起こることもなんか箱が落ちるってだけのチマチマぶり。ガラス戸の向こうを影が横切るとこだけが見どころってか。侘び寂び的なストイックな味をもし狙ったなら狙ったで、やりようがあったでしょ。こうも低レベルの出来事ずくめじゃあ忍耐が続かんかったなあ……、ふわっと暖簾がそよぐあたりの描写は一瞬期待させたんだがねえ……。ラストがあれっぽっちじゃあどうも……『アクティビティ』のラストを知ってる身としちゃあさ。
■フォース・カインド■ 日本版だけに収録のミラのインタビュー、あれ反則だろ。作品内だけでフェイクを完結させるのが筋なのに。あれはルール破りですよ、作品外からああいうこと言われると、ほんとに信じる人がでてくるぞ。薬事法に相当する法律でフェイク映像も取り締まるべきでは、と言いたくなってしまう。円盤の映像は微妙なアングルで撮られていて良しと思ったが、むしろポイントは心理学者と患者のやりとりっていうか、そのへんもっとリアルに仕立ててほしかったな。狂乱の有様はなくてもよかったと思うが。サイコなのかオカルトなのか判別しがたくしたかったのはわかるけど。しかし再現映像と記録映像を交互に、って手法は新しいのでは。いや、普通っちゃ普通だが、再現の方でしっかりドラマを作ってメインの物語にするってのはやっぱ新しい。これなら有名な俳優使っても違和感ないしね。だから手法的に満点だが、肝腎の本体が迫力不足、ってとこかな、うん。じつはもっといろいろ評してやろうと思ったけどもうさっそくほとんど憶えてないんですよ。意外と薄味な映画だったんだな。まさかほんとに騙そうとして抑制した結果があれかな? やめてよ、観る方もわかってんだからちゃんとエンタテイメントにしといてよね。
■ノロイエ■ ぷは。いやぁブッたまげました。こういうのでしたかや。ほんとどーゆーんだってずっと思ってましてね、amazonはじめウェブでいろいろレビューを見せられてましたが、えーとみなさん、お怒りのようで。あるいは御脱力のようで。下手な演技、とか学芸会レベル、とかウソ臭い、とかリアリティゼロ、とか真面目にけなしてらっしゃいますが、あのですね、この演技、下手なんじゃなくてですね、そしてウソ臭いとかリアリティ云々とかじゃなくてですね……、当然……、しかしあれれ? これ系のファンの方々ってそういう見方してるのかと改めて……、いやぁ私はこういうのアリだと思いましたよ。笑えますよこれ。真顔であの演技を通したキャストの皆さんに拍手ですよ。って、そういう反応でいいのか? ほんとにただドヘタなだけという可能性もあるぞ。確信犯でも何でもなくてただ大根なだけだという。いや、そうじゃないと思いたい。だからほんもんですって『ノロイエ』は。この極限的ど~しょ~もなさは狙って作れるもんじゃないし、狙わなきゃなおさら作れるもんじゃない。うーんなんていったらいいかなあ。子どもが倒れるときにポタポタポタっと水が滴るところ、謎めいていてよかったじゃないですかとか、そんなのフォローにならんやな。しかし脚本がけっこう工夫されてたことは確か。その工夫が、わざとかなあ天然かなあ、ことごとくピント外れなところが大駄作いや大珍策になった原因だな。CMだけが手がかりのほとんど誰も見てないローカル放送って……、だいたい編集済みの商品に仕立てたって設定なんだからCMの早送りは要らんでしょうが。ほーんと馬鹿。それに早送りであれじゃあCM長杉。だいたいあの画面はVHSじゃあるまいし。ラストの煙の出方も、玄関ドアわきで煙幕焚いてるだけって位置関係が見え見えすぎ。それに髭のディレクターが自殺しにゆくっぽいラストなんだけどなぜにそこまで映像に入ってるですか? 生放送のスタジオに髭がいて喋ってて、その放送を録画した投稿なんだから髭の最期にゃ間に合わんはず。あの映像はどこから? 番組の続きっぽいのが時間関係無視したデタラメもいいとこですな。とまあ、すべて意図的なウケ狙いでない限りフォローのしようもないしょー~もない作品でした。って意図的でしょ? よくやった。よくやったと言わせてくれ。このジャンル(ホラードキュメンタリー)のパロディ的自己批評としては大傑作。といいつつ結局、いくら何でもこれはなぁ、俺もアマゾンに評価出すとしたら絶対星一つだなこれ。それ以外は無理でしょ。