詩  偏西風

2015-11-27 11:55:06 | 
   偏西風

夜になって母に微熱が出た
母の頭の上の時計を見ながら
熱が下がってくれるのを待っている

激しく窓をたたく風は
吹き出したら三日は荒れる
いつものように妹が来て母の夕食を済ませた
いつもより時間がかかった

妹が誰なのか
僕が誰なのか
わかっている時と
わかっていない時と
聞くとキョトンとしている
名前は呼んでくれなくなった

荒々しくさけび返したい
でも めいってはいけない
あしたも また吹くだろう
落ち着かない日が
あと三日は続く

風がおさまると
家のまわりのものの位置が変わっている
あしたは どんな機嫌でいてくれるのか
ふたりで冬を迎える


 今日は母の祥月命日。3歳で亡くした子供の命日に近いというのも何か奥深いものを感じる。今日は風が音を立てて走っている。母の介護は二人の妹と協力してやった。一人だったら無理だったと思う。一昨日急な腹痛で病院へ行ったが翌朝には治まった。母を送ってから11年。今、自分の好きな土地で生きていられることに感謝している。「偏西風」は詩集「スパイラル」所収(2013年)

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