[リッチモンド(米バージニア州) 22日 ロイター] - 民主党の大統領候補に指名されたヒラリー・クリントン氏は、共に選挙戦を戦う副大統領候補としてティム・ケーン氏を選んだが、この人選は、アフリカ系米国人の有権者にアピールしようとしてきたクリントン氏の努力に水を差しかねない。
というのも、ケーン氏がこれまで推進してきた犯罪対策戦略によって、米国の刑務所収容人数が増加しており、黒人コミュニティから反感を買っているからだ。
ケーン氏が支持してきた「プロジェクト・エグザイル」はすでに停止状態だが、共和党・民主党を問わず、また代表的な銃ロビー団体も銃規制推進派も同じように支持しているという点で類を見ないものだった。だが、バージニア州リッチモンドで1997年にスタートしたこの連邦制度は、当時から、黒人の若者たちに非常に長い刑期を科す人種的偏見に満ちた取り組みではないかという批判を受けていた。
クリントン氏自身、すでに黒人人権活動家たちによる批判の対象となっている。同氏は1990年代に犯罪取り締まり強化政策を支持していたが、今では、この政策が米刑務所の収容人数を急増させる一方で、警察当局と黒人社会の対立激化を招いた原因とされているからだ。
今年に入り、クリントン氏の政治資金団体の1つが、「大量収監への謝罪」を求める活動家たちによる妨害を受ける事件も起きている。
クリントン氏は22日にケーン氏を副大統領候補に指名したが、共和党指名候補ドナルド・トランプ候補と大統領の座を争ううえで、これは無難な選択と見られている。
1998年から2001年までリッチモンド市長を務めた58歳のケーン氏は、「プロジェクト・エグザイル」を強く支持しており、同市の殺人事件発生率を低下させるうえで大きな効果があったとしている。
「追放」という名称のとおり同制度の目的は、銃器不法所持を州法ではなく連邦法レベルの犯罪とし、有罪判決を受けた犯人(大半は黒人だった)を遠隔の連邦刑務所に最低5年送り込むことを可能とするものだ。
警察による暴力を防ぐことに力を注ぐ団体「キャンペーン・ゼロ」の共同創立者であるSam Sinyangwe氏は、ケーン氏を選んだことにより、クリントン氏がアフリカ系米国民、特に若い人々の支持を集めることはますます困難になる可能性があると述べている。
「ああいう人物を選ぶことは、大統領として優れたリーダーシップ能力を持っている兆候とはならない」と同氏は語る。
ワシントンで活動する公民権活動家で、アフリカ系米国人のニコラス・リー弁護士も、懸念を示している。
「プロジェクト・エグザイルは黒人家庭を引き裂いた」と同弁護士は指摘する。「これは支持できるような生易しいものではない。この制度は、郊外で銃を所持している白人の若者には適用されず、ダウンタウンで銃を所持している黒人の若者に対して使われた」
<劇的な措置>
クリントン氏が11月8日の大統領選でトランプ氏に打ち勝つには、白人有権者からのトランプ人気に対抗するため、黒人などマイノリティ有権者のあいだで多くの票を得ることが必要だ。
1990年代、クリントン氏は、夫である当時のビル・クリントン大統領が推進した犯罪取り締まり強化政策を支持していたが、現在は、「大量収監の時代は終わった」と明言している。
警察官による黒人男性2人の射殺事件、そして警察官に対する狙撃事件がテキサス州、ルイジアナ州で発生した後、クリントン氏の陣営は政治的な綱渡りを試みている。クリントン氏は「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」運動への支持を表明し、その一方で警察官の殺害も厳しく非難している。
ケーン氏の市長時代にリッチモンド市で働いていた職員によれば、当時、同市はクラックコカインの蔓延と殺人事件の急増により荒廃しており、何か劇的な措置をとらざるを得なかったという。
ケーン氏の上院議員事務所で広報官を務めるエイミー・ダドリー氏は、ケーン上院議員は「プロジェクト・エグザイル」を支持しており、それによって銃器犯罪が減少したと考えていると述べた。
当時、警察署長を務めていたアフリカ系米国人のジェリー・オリバー氏は、「プロジェクト・エグザイル」が黒人コミュニティに対象を絞ったのはやむを得なかったと話す。「警察は問題が発生する場所に行かなければならなかった」
米国最大の銃ロビー団体である全米ライフル協会は、銃規制推進団体である「銃暴力防止のためのブレイディ・キャンペーン」と並んで、当初から「プロジェクト・エグザイル」を支持していた。
それまで10年以上誕生していなかった白人のリッチモンド市長として、ケーン氏による人種対立の緩和に向けて行った貢献は広く評価された。だが「プロジェクト・エグザイル」は、被告側弁護人や地域活動家から、不当にアフリカ系米国人を標的にしていると非難を浴びた。
最低量刑を定める連邦制度に反対するワシントンのロビー団体「最低量刑に反対する家族たち」のケビン・リング副代表は、ケーン氏はクリントン氏と同様、この問題に関して「進化した」ことを黒人有権者に証明して見せなければならないだろう、と言う。
「それによって困る人もいるだろうし、疑問も生じるだろう」とリング氏は言う。
ケーン氏は、連邦裁判所判決の最低量刑の一部を短縮し、裁判官の裁量の余地を拡大する法案を支持している。だが、彼は依然として銃器不法所持に対する厳罰を支持しているという。
またケーン氏は「プロジェクト・エグザイル」支持によって、「法と秩序」を選挙運動の中心テーマとするトランプ氏と奇妙な盟友関係にある。トランプ氏はこのプロジェクトの再開を求めており、陣営のウェブサイトではこの制度を「素晴らしい」と称賛しているのである。
以上、ロイター記事
>ケーン氏がこれまで推進してきた犯罪対策戦略によって、米国の刑務所収容人数が増加しており、黒人コミュニティから反感を買っているからだ。
>クリントン氏自身、すでに黒人人権活動家たちによる批判の対象となっている。同氏は1990年代に犯罪取り締まり強化政策を支持していたが、今では、この政策が米刑務所の収容人数を急増させる一方で、警察当局と黒人社会の対立激化を招いた原因とされているからだ。
黒人票の行方が大統領選を決める?かもしれませんね。
ケーン副大統領候補が犯罪対策戦略を行い刑務所収容人数が増加して黒人コミニュティから反感?ということは、黒人犯罪者が多いということか。