ロシアによるウクライナ侵攻により、その恐怖がリアルなものとなった、中国と台湾の関係。池上彰さんは、中国の狙いを「孫子の兵法」になぞらえて解説します。
『知ら恥ベストシリーズ1 知らないと恥をかく中国の大問題 習近平が目指す覇権大国の行方』より一部抜粋・再構成してお届けします。
2022年2月24日、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めると、世界の首脳たちは一斉に「プーチンは侵略者だ」と批判しました。
態度を保留したのが中国です。2022年2月25日午後、国連安全保障理事会で、ロシア軍の即時撤退を求める決議案が採決にかけられましたが、常任理事国であるロシアが拒否権を発動。廃案となりました。
安保理決議は15の理事国のうち9カ国以上が賛成し、アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシアの常任理事国がいずれも拒否権を使わない場合に採択されます。
今回はアメリカなど11カ国が賛成しましたが、常任理事国の中国に加え、インド、アラブ首長国連邦(UAE)の3カ国が棄権に回りました。
ロシアが拒否権を行使することは当然視されていましたが、中国、インド、UAEは、ロシアとの外交関係を重視したということでしょう。
ロシアだけでなく、ウクライナとも親密な関係
ただ、中国はウクライナとも親密な関係にあります。中国にとってウクライナは巨大経済圏構想「一帯一路」を成功させるための要衝ですし、中国が最初に保有した空母「遼寧」は、ウクライナから購入したものです。もともと旧ソ連時代にソ連がクリミア半島の造船所でつくっていた「ワリャーグ」を、ウクライナから1998年に購入したのです。
ソ連が崩壊し、ロシアは未完成の艦艇など必要なくなったので、クリミア半島を持つウクライナがそのまま保有していたところ、マカオの会社が「海上カジノとして使いたい」と購入を申し出たのです。
ウクライナが空母としての装備をすべて取り外して売却すると、船体はマカオに入らずそのまま中国の海軍基地へ。購入した会社はペーパーカンパニーでした。中国政府のダミー企業が、ウソをついて購入したのです。
その後、中国は失業したウクライナ人技術者を大量に高給で雇い、2011年、中国海軍初の空母として完成させました。これがいま、東シナ海を航行しています。
さらに、豚肉を大量に消費する中国では、飼料になるトウモロコシの8割をウクライナから輸入しているといわれます。
中国としてはウクライナとの関係上、ロシア寄りの姿勢をとることもできず、どうふるまうべきか苦慮しているのではないでしょうか。
台湾への軍事侵攻で与那国島も巻き込まれる?
一方、今回のロシアのウクライナ侵攻で、中国が台湾に軍事侵攻するのではないかという懸念も強まりました。
習近平国家主席にとって「台湾統一」は悲願です。2021年10月9日、習近平は辛亥革命から110年を記念する式典で演説し、「必ず実現できる」と述べました。
中国は、2035年までに北京と台湾をつなぐ高速鉄道や高速道路を整備する計画を進めています。
すでに「2035年に(高速鉄道に乗って)台湾に行こう」という歌がヒットし、若者が曲に合わせて踊っているような状況です。
「今日のウクライナは明日の台湾」「台湾有事は日本有事」などといわれていますが、もし中国が台湾に侵攻などしたら、台湾から約110kmしか離れていない与那国島が戦域に入る可能性があります。
しかも、ロシアとウクライナは別々の国ですが、中国と台湾は「1つの中国」。中国はしきりに「台湾は国内問題だ。よその国が口を出すことではない」という言い方をしています。
習近平の戦略は「孫子の兵法」
ただ、個人的には中国は直接、台湾に攻め込むことは難しいと思っています。習近平国家主席の頭にあるのは、「孫子の兵法」ではないか。つまり、「戦わずして勝つ」です。
いまも中国軍の戦闘機や爆撃機が、毎日のように台湾の防空識別圏に侵入したり、領空侵犯を繰り返したりしています。台湾空軍はそのたびごとにスクランブル(緊急発進) をしていたのですが、あまりに多いのでいちいち対応できず、ついに空軍機の緊急発進を縮小する措置をとりました。
中国としては、アメリカとの全面戦争は避けたいのです。
アメリカは中国と正式に国交正常化した1979年、「台湾関係法」というものを成立させています。いわゆる台湾との軍事同盟です。アメリカは台湾を国家として承認しておらず、同盟関係にもありません。しかし、仮に台湾に軍事侵攻すれば、アメリカが出てくるかもしれないという危機感が中国にはあります。
習近平は今回、アメリカがロシアにどれだけ強硬な態度をとるか、アメリカの出方を注視し、台湾戦略の参考にしたいと考えています。
現段階では、アメリカ軍の空母を1発で沈められるような「空母キラー」などと呼ばれる弾道ミサイルを大量に配備しながら、台湾に対してさまざまな嫌がらせを続けています。台湾に対し「アメリカが助けてくれると思っているだろう。いやいや、中国はアメリカ軍が東シナ海、あるいは南シナ海に近付けないようにしたぞ。アメリカは自由に行動できない。だから独立なんて言うなよ」と、圧力をかけているのです。
台湾には、「中国本土と仲良くしよう」という国民党の勢力があります。いまは「中国と距離を置きたい」という民進党政権ですが、嫌がらせを続けながら、戦意を喪失させる。
いずれ国民党が政権を取り、中国との関係を深めることで“平和的に台湾を飲み込む” というのが、中国の戦略ではないでしょうか。
「台湾有事は日本有事でもある」という状況
世界がロシアによるウクライナ侵攻に気を取られている2022年5月、中国は日本近海で空母からの艦載機の発着訓練を繰り返していました。ヨーロッパではロシアが脅威ですが、アジアでは中国が脅威なのです。
同じ5月、アメリカのジョー・バイデン大統領が訪日し、中国包囲網である「クアッド」(アメリカ・日本・オーストラリア・インド)の首脳会議に臨みました。ウクライナ対応で忙しいはずのアメリカ大統領が、寸暇を惜しんでも対中国の体制作りに尽力していることがわかります。
その中国は、まもなく空母が3隻に増えます。これだけあれば、つねに東シナ海や南シナ海に中国海軍がにらみをきかせることができるようになります。
先に述べたように、中国の「国産空母」というものは、ウクライナからの購入に始まっています。中国は、ウクライナから空母の建造技術がある技術者多数を高給で呼び、空母を完成させましたが、この過程で空母の建造方法を学んだ中国の技術者たちが、2隻目、3隻目を建造しているのです。
つまり中国にとってウクライナは、軍事的に大事な国。そこを同盟関係にあるロシアが攻撃したことで、中国政府は板挟みとなっているのです。
空母は、いわば「移動できる飛行場」です。戦闘機や爆撃機を多数搭載して、どこにでも行くことができます。今後は、台湾を包囲する形で台湾に圧力をかけることになるでしょう。もし台湾が独立を宣言した場合、中国は軍事力を行使してでも独立を阻止するでしょう。
しかし、台湾に武力行使することがあれば、アメリカは国内法の「台湾関係法」にもとづいて、台湾の支援に乗り出します。これが軍事支援ということになれば、アメリカ軍は沖縄の基地から発進します。
中国は、アメリカ軍の行動を実力で阻止しようとするでしょうから、東シナ海で軍事衝突が発生します。そのとき、日本の自衛隊は、どのような行動を取ることになるのでしょうか。
あるいは、中国は沖縄のアメリカ軍基地へのミサイル攻撃をするかもしれません。それはすなわち、日本領土への武力攻撃を意味します。自衛隊は、反撃することになるでしょう。それは、中国から見たら、日米が共同して中国を攻撃しているように見えます。さて、中国はどのような対応を取ることになるのか。「台湾有事は日本有事でもある」とは、こういう状況を示すのです。
いま中国は、ロシアによるウクライナ侵攻を、固唾をのんで見守っているでしょう。ロシアによる開戦当初のキーウ電撃攻撃は無残に失敗し、戦闘は長引いています。中国も、もし台湾を攻撃する場合、台北に電撃攻撃を仕掛けるシナリオがあるはずです。それがうまくいかないかもしれない。中国軍の首脳は、作戦計画の見直しを迫られているはずです。
と同時に、中国は世界各国が、どれだけ真剣にロシアに対する経済制裁を科しているかも注視しているはずです。台湾を攻撃した場合、中国にとってどれだけ経済的な打撃を受けることになるか、それでも攻撃をするのか。そんな得失も計算していることでしょう。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』日本版は2022年5月19日、「中国共産党の中央組織部が、中国政府の閣僚レベルの幹部の配偶者や子どもに対し、海外の企業の株式や外国不動産の保有を禁じた」と報道しています。「ウクライナ侵攻をめぐってロシアが西側諸国から制裁を科されていることを踏まえ、幹部がそうした制裁の対象となることを避けたいと考えているためという」。
中国がさまざまな対策を取り始めていることがうかがえます。こんな報道を見ると、中国が将来のリスクに備えていることがわかります。ということは、中国は本当に台湾を攻撃する準備をしているのでしょうか。
離れられない隣人との付き合い方
繰り返しになりますが、中国では「戦わずして勝つ」という「孫子の兵法」の言葉があります。中国は、台湾包囲網を形成し、台湾にさまざまな嫌がらせをすることで、台湾の中で「中国とは仲良くなったほうがいい」と主張する国民党が支持を伸ばして政権を掌握することを狙っています。
そう考えると、台湾への武力行使の可能性は低くなりますが、本当のところはわかりません。習近平国家主席が実績作りのために武力に手を出す可能性は残されています。独裁者が暴走すると、誰も止められない。私たちは今回、ロシアの行動で、これが事実であることを知りました。
戦争の脅威を払拭するには、相手の国が民主化されることが一番です。しかし、はたして、中国に民主化の日は来るのか。
もちろん、いつかは来るかもしれません。でも、それまでの間でも、私たちは隣人としてつきあっていかなければなりません。そのためには、どうすればいいのか。
「彼を知り、己を知れば、百戦殆(あやう)からず」
これも「孫子の兵法」です。まずは、中国を知ることから始めましょう。
以上、東洋経済
日本としては、自国は自国の手で守るという日本人が思うようにならないと日本を守れない。
ただ、軍事力を増額しても戦う人間の魂が弱っていたら勝つことはないと思う。
台湾の方が、自国を守る意思を持っている。
日本人はマスコミに影響され、白旗をあげようと放送されると従う人間の方が多いと思う。チャイナの思うつぼです。
そこで、大和魂降臨が必須です。
★「今だけ、金だけ、自分だけ」の政治家、官僚は去れ!!
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