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帯とけの枕草子〔二百四十二〕ことに人にしられぬ物
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔二百四十二〕ことに人にしられぬ物
文の清げな姿
とくに人に意識されないもの、万事に凶の日。他人の女親が老いている。
原文
ことに人にしられぬ物、くゑ日、人のめおやのおいにたる
心におかしきところ
とくに男に気付かれないもの、女の苦穢の日。女のめとかが、感極まっている。
言の戯れと言の心
「しられぬ…知られない…意識されない…気付かれない」「くゑ日…凶会日…万事が大凶の日…凶合日…合うのは苦で穢れた日」「人…人々…他人…男…女」「めおや…女親…めをや…め、とか」「め…女」「や…疑問の意を表す」「おい…老い…年齢の極み…追い…もの事の極み…感の極み」。
おひ(おい)の孕んでいた意味には、「極まる、感極まる」などという意味もあった情況証拠を、歌での用いられ方で示しましょう。
古今和歌集 巻第十七 雑歌上 在原棟梁
しら雪のやへふりしけるかへる山 かへるかへるもおいにける哉
(白雪の八重に降り敷いた、かえる山、返す返すも老いたことよ……白ゆきの八重に降り敷いた、返る山ば、繰り返し感極まったことよ)。
「白雪…白髪…おとこ白ゆき…おとこの情念」「山…山ば」「おい…老い…極まり…感の極まり」。
古今和歌集 巻第十七 雑歌上 敏行朝臣
おいぬとてなどかわが身をせめぎけむ おいずはけふにあはましものか
(老いたといって、どうして我が身を恨み嘆いたのだろう、老いなければ、今日の日に逢えるだろうか……極まってしまったのねといって、どうして、貴女は・我が身を恨み嘆いたのだろう、感極まらなければ、京で合えるだろうか)。
「おい…老い…極まり」「けふ…今日…京…山ばの頂上」「あふ…逢う…合う…和合する」
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)
原文は、岩波書店 新日本古典文学大系 枕草子による。