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帯とけの枕草子〔二百四十九〕おとここそ
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔二百四十九〕おとここそ
おとこゝそ、猶いとありがたく、あやしき心ちしたる物はあれ(男こそ、やはり、希有で、不思議で不可解な心情をしているものはほかにあろうか……おとここそ、なお、女には・あり難くふしぎで不可解な心地のする、生き物はまたとあろうか)。
男は・とっても綺麗で清げな女を捨てて、みにくげな女を、妻に・もっているのも、ふしぎなことよ。
役所に出入りする男、各家の子息などは、女房女官など・あるが中に良いだろうと思うかぎりを選んで、思いをお寄せになるでしょう。及びもつかないだろうと思われるお方でさえ、愛でたしと思うなら、死ぬまでも思いをかけるのよ。人の娘、未だ見ていない女でも良しと聞けば何とかしてと思うものである。一方で、女の目にも良くないと思う女を思うのは、どうした事でしょうか。
容姿とっても良く、心も優れた女が、文字も上手に書いて、歌も感動的に詠んで、恨んで見せてよこしたりするのを、男は・返事を賢くするけれども、寄り付かない。可愛らしく嘆いているのを見捨てて他の女のもとへ行ったりすると、あきれかえる、他人事ながら腹が立って、第三者の思いでは心憂く見えるでしょうけれど、男は我が・身の上のこととなっては、少しも女の心ぐるしさを感知しないのよ。
言の戯れと言の心
「おとこ…男子…おとこ」「ありがたく…在り難く…めったになく…希有で貴重で」「あやし…奇怪である…不思議である…不可解である」「物…もの…対象を漠然と指す…物体…生物」。
男性について、女性の立場で思うことが書いてある。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。