帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔二百六十〕尊きこと

2011-12-23 00:03:39 | 古典

  



                    帯とけの枕草子〔二百六十〕尊きこと


 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。


 
 清少納言枕草子〔二百六十〕たうときこと


 文の清げな姿

 尊き言、九条の錫杖経、念仏の回向文。


 原文

 たうときこと、九でうのさく杖、念仏のゑかう。


 心におかしきところ

 多太きこと、九情の咲く杖、接取不捨。

 (男の尊き事、多太きこと、九情の咲く枝、接して見捨て給わぬ)。

 
 言の戯れと言の心。

 「たうとき…たふとき…尊き…優れて価値ある…多太き」「こと…言…事」「九でうのさく杖…九条の錫杖…錫杖鳴らして唱える九条からなる経文…九情の咲く情…九情の咲く杖」「九…八(多い)余り一…十分ではないが多い数」「さく…咲く…おとこ花さく」「杖…じゃう…情…つえ…頼る…頼む…身の枝…おとこ」「念仏のゑかう…観無量寿経の回向文、その末は『摂取不捨』…聞き耳異なると、接して見捨てない」「摂…仏が衆生を救いおさめ給う…接…まじわる…交接…接合」。


 第三章の「同じ言なれども、聞き耳異なるもの、法師の言葉、男の言葉、女の言葉」とは、それぞれ一つの言葉に多様な意味があるということ。

 枕草子は、それを心得るている、おとなの女の読物。
 

 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)


 原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。