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帯とけの枕草子〔二百五十三〕こだいの人のさしぬききゝたるこそ
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔二百五十三〕こだいの人のさしぬきゝたるこそ
文の清げな姿
古体の人が、指貫(袴類)を着ているところこそ、とっても怠怠しいことよ。前にひき当てて、先ず、足と衣の・裾を皆、込め入れて、腰紐はうち捨てて、衣の前を整え果てて、指貫の・腰紐をおよび腰で取る時に、後ろへ手をさしやって、猿が手結わえられているように、ばたばたし始めるのは、急なことで出発できそうにも、思えないよ。
原文、
こだいの人のさしぬきゝたるこそ、いとたいたいしけれ。まへにひきあてて、まづすそをみなこめいれて、腰はうちすてゝきぬのまへをとゝのへはてて、こしをおよびてとるほどに、うしろざまに手をさしやりて、さるのてゆはれたるやうに、ほどきたてるは、とみのことにいでたつべくもみえざめり。
心におかしきところ
誇大の男が、さし抜き来たのこそ、とっても、怠怠しいことよ。前に・間辺に、ひき当てて、先、裾、皆込め入れて、腰は、そっちのけで、衣の前を整え果てて、腰紐を指で取るときに、後ろむきに手を差し出して、猿が手を結わえられたように、解き始めるのは、急には、井で立つだろうとも、見えないようすだよ。
言の戯れと言の心
「こだい…古代…古体…古風…誇大…言うほど大きく無いもの」「さしぬき…指貫…袴の一種…差し抜き」「きたる…着ている…来ている」「たいたいし…怠怠し…怠惰しい…大大しい」「まへ…前…間辺…おんな」「こし…腰…腰紐」「ほどく…解く…ほとく…はたはたとする…ばたばたする」「いでたつ…出発する…井で立つ」「井…女」「みえざめり…見えないようすだ」「見…目で見ること…覯…媾…まぐあい」。
世の中にはいろいろな人が居る。こんな男もいたということ。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。