新年の東博。今年の干支ルームは「祝いの鳥」。鳥とりトリ。
去年東博で展示されていた「赤坂離宮花鳥図屏風」の続編(去年の日記はこちらとこちら)があった。
1909年建設の迎賓館の大食堂の七宝焼きの下絵。
今回も渡辺省亭の透明感ある色と、よどみない自由自在な美しい線に見惚れることしきり。
そして構成の妙。鳥だけ、または鳥と草、ひとつか二つの少ない要素に、最大限に効果的な仕事をさせている、というか。
七宝は湊川惣介が製作。
渡辺省亭「千鳥」
楕円のむこうに広がる広い空。斜め上へのベクトル。省亭の構成は、明晰でおしゃれ。
渡辺省亭「麦に雀」
こちらは動きが四方八方へ。世界が画面の外にも広がっていた。
今回も、この赤坂離宮のコンペには選ばれなかった荒木寛畝も展示されていた。
省亭は外へ広がる感じだけれど、寛畝の絵は、中にぎゅっと納まっている感じ。鳥の風格ゆえかな。寛畝の鳥への入れ込み方は半端ない。
そして省亭は鳥も草も主従なくみんな大事でみんなで作り上げているのだけど、寛畝は鳥が主役。存在感が凄い。
荒木寛畝「鶏」
二羽の視線は画面の中央で交差していた。主役じゃないけど、後ろの草もきれいに描かれていた。
荒木寛畝「鴫」 かわいい形だけれど、まなざし強く、自立した人格?を放っている鳥たち。
荒木寛畝「鴨」
妖しいほどの細密ぶり。青緑の首元は、宇宙的なほど。
寛畝の鳥の凄さには、省亭とはまた別の感嘆。
省亭も寛畝も、迎賓館だからきれいな絵なら間違いないだろみたいなところがない。外国人をお迎えする空間。日本の美意識にプライド持ってる感じ。
干支ルームの他の鳥たち。おおむね祝いのモチーフとして描かれていた。
岡本 秋暉「孔雀図」
シャープに高雅。高く跳ね上がる尾は弧を描いて登っていく。これを掛けたら、戦意高揚しそう。
気付くと、二羽いる。羽根も牡丹も妖しい域。
「打掛 紅綸子松竹梅鶴亀模様」 紅江戸~明治
豪華さに圧倒。縫い絞め絞り、鹿の子絞りで白く染め抜いてから、紅に染めていると。武家の婚礼衣装の様式だけれど、江戸末期には豪商も許されたとか。
金糸の刺繍の細やかさ。蓑ガメの顔がツボ。
海北友雪「花鳥図屏風」
昨年は禅画展で、父海北友松のダイナミックな屏風に驚いたけれど、子は雅び。春日局の推薦で家光に取り立てられた。花鳥図は珍しいのだそう。
最強の聖鳥、ガルーダと鳳凰も羽ばたいていた。
鳳凰は長い尾のところにうっとり。
狩衣の鳳凰は、紫地に金。雄雌(たぶん)の鳳凰がかわいいなあ。
「桐鳳凰漆絵硯箱」奥村文次郎 明治時代 漆が美しい。
桐の木の上空に鳳凰。鳳凰は桐の木に住み、竹の実を食べるのだとか。
ガルーダも登場していたのは面白い。スマトラ東南部のジャンビのバティック。
マハーバーラタに出てくる、ヴィシュヌ神が乗っている鳥。蛇神ナーガを退治するところから、毒蛇を食らう聖鳥であるという。
去年のお正月はこのお部屋は猿尽くしだったので、祈りの対象とか吉兆とかいう感じではなかったけれど、鳥には人間は古来から様々な思いをこめた。猿は、猿コミュニティーとか親子とか、「関わり」的な作品が多かったと記憶している。対して、鳥は個体の美しさ、神聖さに思いをのせる。
表現方法も傾向が違う。猿はもふもふだったり牧谿ざるだったり、水墨に向くのかな。鳥は水墨にも、極彩色にも、画にも衣にも、多彩。
来年はイヌ。アレが出るかな、なにが出るかな、と楽しみ。