はなな

二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

●「火焔型土器のデザインと機能 」 國學院大學博物館

2017-01-25 | Art

國學院大學博物館「火焔型土器のデザインと機能 Jomonesque Japan 2016」

平成28年12月10日(土)~平成29年2月5日(日)

平成28年度 特別展「火焔型土器のデザインと機能 Jomonesque Japan 2016」

 

 

5000年前の縄文遺跡から出土した火焔式土器。信濃川流域とその周辺、新潟、山形、富山、長野、群馬、福島あたりまでに分布する。

先着順でいただけるという図録はもう品切れだったけれど、写真可なのがありがたい。

火焔式土器が造られていたのは、300年ほどの期間だという。長いのだろうか、歴史の流れの中ではほんの短い間なんだろうか。

それでも何人も何世代も、様式を踏襲して、せっせとこの器を作り続けていたひとたち。

火焔式土器が並ぶ会場は落とした照明のせいもあって、幻想的なほど。

国宝の火焔式土器(新潟県十日町町 笹山遺跡 縄文時代中期5000年前) 器ひとつの放つ力が強い。

 

国宝以外の火焔式土器も陳列されている。国宝に劣らない迫真の造形。

新潟県長岡市 馬高遺跡出土 縄文時代中期5000年前


彼らが火焔を意図して造ったのかわからないけれど、形が沸き立っている。うずまくエネルギー。すごい。

用途はまだ判明していないようなので、素人考えで妄想してしまう。

自然や気象のなかから抽出した形なんだろうか。またはそこから感じ取ったパワーを形に落としたか。

これが火なら、烈火。水なら、激流が渦まき、水しぶきが跳ね立ち。鶏なら、雄たけびを上げ。風なら猛風がたけり、上昇気流がとぐろを巻き上げ。

それとも、形態変化への畏怖の念かも。水を火にかけたら、沸き立ち踊る。火も踊る。そこに神をみた、とか。


実際に焦げ跡がついていて、食べものを煮炊きしていたらしい。 普段使いかもしれないし、祭礼用のとくべつなお供えものを煮ていたのかもしれない。捕った動物に神が宿ると考えてお祀りしてからいただく文化もあるし、丁重に扱ったのかも。
これで煮たものは、ものすごいパワーを炊き込めたお料理になったでしょう。信濃川を遡上してきた鮭なら、ものすごい鮭汁になりそう。

 

火焔式土器と対をなす「王冠型土器」も、各遺跡で出土している。それぞれ用途があるらしい。

火焔型も王冠型も4つせりあがった部分がある。いろいろやってみて、4つが一番おさまりがよかったのかな。

王冠型が上をならしているのはなぜかはわからないけれど、その分、側面に貼られた線の力の美しく、強いこと。

 

優美な感じのもあるのが印象的。新潟県津南町 堂尻手遺跡出土

ドレスのドレープのように美しい。少し山梨長野の水煙文土器のような丸みだけれど、関連はあるのかな?波と舟のようにも。

 

同じく堂尻手遺跡出土の火焔型土器

いやもう繊細に美しい。

王冠型も火焔型も、堂尻手の作り手さんは、洗練された感性と細やかな仕事ぶり。

 

一定のパターンを守りつつも、作り手の個性か時代の流れか、すこしずつ違いがあるのがおもしろい。土器の初期のものはさほど突起が強調されていなかったけれど、年代が進むにつれて際立ってゆく。洗練していくのだろうか。

 

形のもつパワー。作るものにも神秘なものを取り込もうとしたり、人力を増すような力を生む形をつくったり。それがものをつくる意義だったのかな。文字も科学の解釈もない時代、世界は不思議で人力のおよばない大きなことにとりまかれていたでしょう。

 

4つの独特な突起でなく、三角板がついているものも。 

三角型土版付土器 十日市町笹山遺跡

突起がなくとも、のこぎり歯形と、うねうねくるっとしたラインは欠かせないらしい。大事な文様であり、好きな文様であり。

三角板は、お守りではと考えられているとのこと。三角はなにか神秘の力をもつのかな。

 

ハート形の顔がいくつかある。土器にもハート形を張り付けた部分があるので、ハートのかたちっていうのも、なにか意味があるのでしょうか。

母や子やだれかの顔に似せたのかも?

 

びっくりぽん

 

小顔で首が長く都会的なかんじ。縄文人のイメージと違って、あごが細い。逆三角形が美人の条件だったのか、尊い存在だったのかな?

顔の線はなにか意味のあるボディペインティングなのかな。かつて北方民族が大事な意味のあるものとして入れ墨を施していたのを思い出した。

土偶の幾何学的な線も、人体にも施した入れ墨なのかな?。そういえば明治の沖縄の女性の入れ墨を施した手の写真をどこかで見たな。

 

人間の造形への原点というか欲求を、見た気がした。なにかから感じとったパワーやイメージや心象を、自分の手で形を持つものに作り出す行為。表現することに愉悦感や充福感に満たされていたのかもしれない人々。

なにを大事にして、どんな精神世界で生きていたのか、聞いてみたいもの。先日のワンロード展でアボリジニの世界観に打たれたように、驚くべき世界観が日本海周辺の土地に展開していたのかもしれない。

 

そして常設、また会えたね。

挙手人面土器 長野市片山遺跡出土 4世紀

今回はちょっと邪悪そうなヤツに写ってしまった。前に来たときは癒し系の顔に写ったのだけど。


オペラ歌手ふうに写る時もある~