はなな

二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

●「屏風と掛け軸ー大画面の魅力・多幅対の愉しみ 」1 松岡美術館

2018-01-04 | Art

「屏風と掛け軸ー大画面の魅力・多幅対の愉しみー 」 松岡美術館

後期:2017年11月28日(水)~2018年1月21日(日)

前期展もたいへんよかった(日記)ので、後期展も楽しみにしていました。

応挙や雅邦など有名な絵師のものはもちろん、作者未詳のものまでもすばらしいのは、前期と同じ。人も少ない平日だったので堪能してきました。

以下、備忘録です。

入ってすぐの、作者未詳の二組の屏風。ここでもう足止めされてしまう。

「洛中洛外図」17世紀 作者未詳  

たいへん親切な解説ボードが数人分ソファに置かれており、手元にもって見比べられる。京都の地理に疎いものには本当にありがたいです。隅から隅まで、見どころ満載。

解説には、同様の洛中洛外図はほかに3点存在し、粉本を基にして制作したものとある。(Wikipediaでは、「司馬家本」(田辺市美術館)の系統の5作のひとつ。「歴博D本」(国立歴史民俗博物館)に近似しており、他にも「坂本家本」、大分市美術館所蔵のものがあるようだ。)

内容的には、祭礼が両隻に渡って描かれているのが特徴的。右隻、左隻それぞれに、豊臣と徳川を象徴させている。そして庶民の暮らしと町のにぎわいがたいへん細やかに描かれているのが好きなところ。

右隻は、豊臣家を象徴ずる方広寺大仏殿と、祇園祭の山鉾など。

あの国家安康の鐘。寺の外ではなんだか喧嘩している。

月鉾。侍女に日傘をささせた奥様が見物している。美白の為かな?。奥様の象徴かな?この屏風にはこのような日傘の奥様がたくさんいて、お買い物などしている。

菊水鉾

他にも、函谷鉾、鶏鉾、長刀鉾など。

左隻には、徳川家を象徴する二条城と祇園祭武者行列、神輿渡御。

 

この屏風がお気に入りなのは、見世がたっぷり描かれているところ。鍵屋、反物屋、蕎麦屋、床屋、筆屋、花屋、足袋屋、人形屋、酒屋、数珠屋、櫛屋、蝋燭屋、風呂屋。今じゃあまりみない業種では、槌屋、箍屋(たがや)、糀屋、箔屋、鼓屋、唐物屋、槍屋。

さらに、傘売り、魚売り、炭売り、猿回しなどの路上ベンダーも。シャッターばかりの商店街が危機的な現代からしたらうらやましい限り。路上で売り歩かずともネットで買っちゃう世の中。江戸時代は路上にいろいろな人がいて、楽しそうだ。

花屋って江戸初期にはあるのね。江戸時代には椿や朝顔の品種改良がさかんだったそうだけど、こういう見世先で、仏花だけでなく庶民も気に入った花を買い求めたんだろうか。

こちらの花屋の見世先では、犬も元気いっぱい

笠売り。昔話「かさじぞう」のおじいさんは、寒村でおばあさんと作った笠をこうやって都で売り歩いていたのかな。この屏風は洛中洛外のようすだけれど、村とみやこはお互いに流通している。

魚屋は解体中。チョウザメ??。鼓を打つお坊さんたちはストリートパフォーマンス的な??。

右上には人形浄瑠璃。右下の楽しそうな若者たちはなにを??。左下の番台みたいな人がお代金を取って天然のプール??。

蕎麦屋の店先の大きな彼はなぜそのかっこう??

わからないことが多い。夫婦げんかも描かれていたりする。洛中洛外図のカオスは底がない。

作者未詳のもう一作は「南蛮人渡来図」6曲一隻 17世紀半ば

南蛮寺と南蛮船が描かれているのは南蛮屏風の定番だけれど、これは各シーンが大きく描かれ、印象的。だから人物の表情まで読み取れる。

印象的なことのひとつが、南蛮寺で祈る人々の顔がたいへん清らかに感じること。真摯に祈っている。解説には「禁教令で京都の南蛮寺も破壊されて久しいころの作にもかかわらず、キリスト教色が強く打ち出されている」と、気になる文末。信仰のある絵師がまだいたのだろうか?。

 

そしてもう一つの印象的なことは、遠景の山。洋画のごとき迫力。後ろからさす光も神々しいほど。これまで見たこまごま描きこんだ南蛮屏風には、こんな写実的な山はあまり見たことがなかったような。少ししか見たことないけど。

船越しの海や山の壮大さ。日本の絵にあまり見ないような。

もう少し時代が進んで18世紀の司馬江漢が描く微妙な西洋画みたいな??。ダイナミックな船には陰影もついている。この山は長崎だろうか?。この絵師は長崎で西洋画を見にする機会を得た、隠れキリシタンだろうか??。誰か詳しい方に教えてほしい。

 

それから、ダイナミックな屏風だけれど、細部も細やかなのだ。衣には金彩が施され、屋根もカラフル。

細部にもこだわりのある絵師らしい

南蛮屏風が大流行したのは、やまと絵風なきらびやかさでもって、”こんな大きな南蛮船が着いて、こんな珍しい南蛮人カピタンやインド系の船員たちや、たくさんの舶来品やエキゾチックな象や犬や動物なんかが行列をなして上陸しましたよ”的なことではと思うのだけれど、この絵師はやまと絵風を超えてしまっている。アートであったり、表現者として極めようとしているような。

いったいどこで暮らすどのような絵師なのだろう。惹かれるけれども、謎。

美術館や博物館まわりをしているうちにいつか、17世紀半ばのこの絵師かも!?と思う作に出会えるだろうか。前期展の日記でもそんなことを言っていたような

 

二作で長くなってしまったので、続きは次回に。

お正月なのでこの南蛮屏風の犬。

これはちょっと足が短いけれど、南蛮屏風ではだいたいこういう洋犬のグレイハウンドが多い。

徳川家康が鹿狩りの時に、舶来の70匹の狩猟犬を披露してから、グレイハウンドを飼うのが、武家のステータスになったそうな。

今年は南蛮屏風をみる時は、犬に注目しよう。