情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

茂木健一郎『クオリアと人工意識』

2021-12-08 17:10:33 | 人工知能・意識
茂木健一郎『クオリアと人工意識』、講談社現代新書2576(2020.7)
クオリアの伝道師が久しぶりに書いた本です。

人工知能に関連する話題を極めて広い範囲で紹介しており、著者の博識ぶりに驚かされます。

私は、茂木が人工意識についてどのような分析をしているのかを知りたいためにこの本を購入しましたが、人工意識に関する説明は殆どありません。
その点は期待外れでした。

哲学的議論が大半を占めています。
本のタイトル『クオリアと人工意識』は、内容を反映していません。
「人工意識」が入っている以上、これに関する研究の紹介もすべきでした。
看板に偽りありのタイトルです。

人工意識の研究でよく参照されるトノーニの統合情報理論についても一切触れていません。
茂木は、この理論を評価していないのでしょう。

茂木は、意識の定義について議論するのは無駄であると断言しています。
それにも拘わらず本書の至る所で意識について触れていることに釈然としないものがあります。

ロボットは対戦型ゲームが出来るか?

2021-12-08 14:27:02 | 人工知能・意識
深層学習の進化には驚かされます。
将棋、囲碁、チェスなどの知的ゲームでは人間の能力を超えています。

ところで、深層学習を搭載したロボットに対戦型ゲームは出来るでしょうか。
言うまでもなく対戦型ゲームと将棋などの対戦ゲームとは本質的に違います。
将棋などのゲームには固有の規則がありますが、対戦型ゲームにはその種の規則はありません。

対戦型ゲームが出来るためにはロボットに「主体性」が不可欠です。
ロボット自身が対戦型ゲームのどのキャラクターになるのかを決める必要があるからです。
この主体性とはロボット自身で「意思」決定することを意味します。
そもそも、このキャラクターという概念がロボットには無いのです。

主体性とは動物に固有のものなのでロボットのような機械には存在しません。
従って、ロボットは対戦型ゲームをすることは出来ないことが分かります。

人工知能にはシンギュラリティ問題というのがあり、何十年後かには人間の知能を超えるとされています。
その時代になると対戦型ゲームをして人間に勝てるようになるのでしょうか?

最近、「人工意識」に関心が寄せられていますが、これは人間の意志とはカテゴリーが違います。
人工意識は、あくまでも情報処理の産物であり非生命的なものです。