情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

シャノンの功罪

2021-12-19 19:18:21 | 情報と物質の科学哲学
シャノンの画期的論文『通信の数学的理論』は、科学の世界に革命をもたらしました。
この成果により、情報は物質およびエネルギーと共に現代科学の三大基礎概念になったのです。

その成果があまりにも絶大だったためにシャノンの情報概念が普及しすぎるという負の効果をもたらしたのです。
周知のように、シャノンの情報には意味がありません。

しかし、この世界には意味のある情報が至る所にあります。
これらは、シャノン流の意味のない情報とは本質的に違うものです。

シャノン流の情報に慣れ親しんだ研究者は、敢えて情報とは何かを問うことを忘れています。
これがシャノンが意図せずにもたらした負の遺産なのです。

「環境から情報が入る」は間違い!

2021-12-19 16:24:12 | 情報と物質の科学哲学
環境から情報が入るという言い方は日常的に使われます。
しかし、これは事実に反するのです。

外界から感覚受容器に入るのは、物理的刺激に過ぎません。
その刺激が受容器のしきい値より大きいと、受容器はパルス列を出力します。
このパルス列は、刺激物質に関する情報を感覚野に伝えます。

つまり、外界からの刺激は受容器によって初めて情報化されるのです。
従って、外界から情報が入るというのは間違いです。
この言い方は便利ですが、情報概念の本質を見逃す大きな原因になっています。

情景などの情報が外界にあるとするのは錯覚です。
情景などはすべて脳内部で情報化されて意識化されるのです。



チャーマーズの矛盾 シャノンの情報と測定器の情報の本質的違い

2021-12-19 11:34:34 | 人工知能・意識
シャノンが定義した情報はビットで表現されるものです。
その情報に意味はありません。

一方、測定器が創発する測定値という情報には意味があります。
測定値情報は、入力量と基準量の比を意味するからです。

著名な哲学者チャーマーズは大著『意識する心ー脳と精神の根本理論を求めて』の中で一貫してシャノン流の情報を扱っています。
チャーマーズは、無意味な情報から意識が生じると考えています。

彼は、ミミズにも意識があると考えてもおかしくないとまで言います。
しかし、同著の27頁では意識しているとはクオリアを持つと同義であるとしています。
クオリアは感覚野が関係しているので、感覚野のないミミズに意識があってもおかしくないというのは矛盾しています。

シャノン流の意味のないビット情報がすべてであると考えるのは、情報概念に対してあまりにも狭い考え方に囚われることになります。

動物などの生命現象においては、意味のある情報が本質的な役割を果たしています。

サーモスタットに意識がある!?

2021-12-19 10:21:33 | 哲学
哲学者は、サーモスタットに意識があるかないかということについて真剣に議論しています。
例えば、チャーマーズの大著『意識する心ー脳と精神の根本理論を求めて』にも数ページにわたってこの議論を行っています。

その中で、”サーモスタットと脳には何の違いもない”と主張しています。
これは事実に反する暴論です。
何故なら、サーモスタットは機械であるのに対して脳は生命体だからです。
機械と生命体を同一視することは出来ません。

サーモスタットに関する現象は物理法則で完全に説明できますが、脳に関する現象は物理法則だけでは説明できません。

脳も物質なので物理法則だけで説明できるとする物理主義は、根本的に間違っています。
何故なら、物理主義はニューロンが情報を運んでいるという事実を説明できないからです。
情報概念は、物理学の対象ではありません。

哲学者たちは、よく前述のような暴論を吐きます。
彼らは、もともと議論好きな集団なので好き勝手な主張をし合って議論を楽しんでいます。

あらゆるものに心があると主張する汎心論もその類です。

哲学者が好き勝手な主張を科学の分野(例えば脳、人工知能、ロボット)で行うと、一般の人に混乱を与えます。