ピエール・カスー=ノゲス(新谷昌宏訳)
『ゲーデルの悪霊たちー論理学と狂気』、みすず書房 (2020.7)
という大著が発売されました。
ゲーデルは、不完全性定理を証明したことで有名です。
アリストテレス以来の偉大な論理学者と言われています。
1906年 チェコ生まれ
1930年 不完全性定理を証明
1940年 ヒトラーのユダヤ人排斥運動から逃れるためアメリカに移住
プリンストン高等研究所に招かれる
1978年 死去(享年73歳)
著者ピエール・カスー=ノゲスは、パリ第8大学哲学教授です。
20個の書類箱に収められたゲーデル文書(ホテルの請求書など実にこまごまとしたメモも含む)を丹念に読み込み、探偵のようにゲーデルの心境を推理しています。
ところどころフィクションを挿入して面白い構成になっています。
以下、ゲーデルの狂気に関する部分を紹介します。
・毒を盛られることへの恐怖:
研究所に来てから哲学の研究に専念。そのため研究所が彼の仕事に満足していなくて、彼を排除しようとしていると思い込んでいた。ほとんど栄養を取らなくなり、死亡時の体重は31㎏。
・無限に小さな物体とそれらの自律的な生命への怖れ:
ライプニッツのモナドを信仰。一つの電子、1個の石にも諸所の体験を持っている。
・世界に偶然は存在しない:
神がすべてを決定している。政治的な出来事の持つ意味(因果関係)の解釈に専念。あらゆるものに一つの理由がある。
・脳は一種のチューリングマシンである:
人間の思考は、チューリングマシンによるものだ。
・幽霊の存在を実際に信じていた。
(読後感)
宇宙のあらゆるものが論理学に従っていると信じたためゲーデルは狂気の人のようになったのでしょうか。
アインシュタインがゲーデルと仲良しだったのは何故でしょうか。
ゲーデルが時間のない世界の可能性を一般相対性理論の枠組みで証明したからでしょうか。
宇宙のあらゆるものが体験を持っているとするゲーデルのモナドロジーは、一見すると汎心論と似ています。
しかし、両者は全く異質のものです。
ゲーデルのモナドロジーは、宇宙のすべてを決定する神への怖れから来たものです。
一方の汎心論は、単に心身問題を解決するために哲学者が苦し紛れに導入したものです。
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