舞台設定は19世紀始めなので、日本で言えば江戸時代後期から末期、
捕物帳の雰囲気濃厚ですが、あなどるなかれ、クイーンばりの切れ味のいい短編そろいです。
歴史ミステリに分類されますが、本格謎解きミステリの醍醐味が楽しめます。
探偵のアブナー伯父は、20世紀以降の鼻持ちならない尊台な名探偵とは正反対の、
質実剛健冷静沈着酸いも甘いもかみわけたかっこいい伯父さんです。
今なら伯父萌え? ややプロテス . . . 本文を読む
クイーンファンのあいだでは、
フレデリック・ダネイの梗概をもとに
シオドア・スタージョンが「盤面の敵」を書いた、ということになっています。
スタージョンといえば「人間以上」ほか数々の短編を書いたSF作家です。
なぜクイーン(ダネイ)は、ミステリ作家ではなく、SF作家のスタージョンを選んだのか。
これが、エイブラム・デヴィッドスンならば、同じユダヤ教徒というつながりも考えられます
だからデヴィッ . . . 本文を読む
ポケミスのクイーン(後期作品)にはけっこう特別な思い入れがあって、
いまではめったに手をとらないけれど、たまに開くと高校生になった気分です。
ところで、後期クイーンの作品群の中でも傑作の部類に入ると思うのですが、
「盤面の敵」(『The Player On the Other Side』1963)という作品があります。
ある一族をめぐる連続殺人ものですが、「ヨーク一族」という名前から
同じクイー . . . 本文を読む
E・クイーンのことをちょっと思い出したので。
ハヤカワミステリ文庫が出るまでは、
クイーンの後期の作品はポケミスで探すしかありませんでした。
「ダブル・ダブル」「十日間の不思議」「悪の起源」「最後の一撃」「盤面の敵」
「最後の女」「緋文字」「三角形の第四辺」「心地良く秘密めいた場所」などなど。
中には、こんな話もクイーンが書いたの?と思うような作品もありました。
「孤独の島」「二百万ドルの死 . . . 本文を読む
以前に中公文庫で「四季屏風殺人事件」という題で出ていたものの改訳版。
うーむ、読んでいたはずなのに、ほとんど忘れてます。
最後の謎解きでは、
その隠された意図を暴くディー判事の慧眼は神のごとく。
クイーンのライツヴィルものの「ある作品」を連想させます。
. . . 本文を読む
オビに「論理的な謎解き」とあるのは嘘っぱちで、いわゆるサスペンスです。
物語の始まりこそクリスティの
「なぜエヴァンズに頼まなかった」「茶色の服の男」
といった作品を連想させるものの、いまいちパッとしません。
探偵役のゲスリンが推理ではなく、ロンドンの町を駆け回って事件を追います。
そういう意味では、ミステリとして中途半端な作品ともいえますが、
最初から本格ミステリと思わなければ、意外な佳作か . . . 本文を読む
ロバート・ダウニー.jr主演のホームズ映画が意外に好評です。
アクションにホラー、アイリーネ・アドラーが美貌の女賊って、
もう原作から遠く8マイルは離れてんじゃないですか。
共通点はヤク中毒だけ、って感じです。
それでも、観にいきますよ。ホームズですから。
光文社文庫から、日本人によるホームズパスティーシュ集
「シャーロック・ホームズに愛をこめて」が出ましたが、
大きな声ではいえませんが、あま . . . 本文を読む
面白くなかったわけじゃないのですが、
リアルで重い設定と展開に、
「ミステリ」というジャンルの持つ幅を実感したわけです。
「コンテンポラリーな本格もの」の標準作、
というのが個人的な感想です。
「コンテンポラリーな本格もの」の中には、
ハードボイルド、警察小説、心理小説、アクション小説、
もちろん謎解き小説などのエッセンスと、
メインストリームの小説技法などがうまく取り込まれていて、
小説の完成 . . . 本文を読む
江口寿史が少年ジャンプに連載されていた「ストップ!!ひばりくん!」が
小学館クリエイティブから、未収録話を収録して刊行。
いい仕事してますね、小学館クリエイティブ。
当時の絵はマンガ業界最先端のおしゃれ感覚でしたが、
3巻収録の中断直前話の加筆部分は、ファッションこそ今のものですが、
タッチがちょっと枯れた感じになってます。
28年の時の流れはこれだったんですね。
昔は大笑いして読んだものです . . . 本文を読む
大昔に講談社文庫から中国迷路殺人事件として出ていたものを改訳、改題したもの。
じつは10代のころに読んでいたのですが、そのころはまったく面白さが分かりませんでした。
ところが、この歳になるとこれがむやみに面白い。
3つの事件がたがいに●●とか、
仙人が出てくるとか、
アクション場面が派手だとか、
本格ミステリからずいぶん逸脱しているのですが、そこが大衆小説らしくて楽しいんです。
■沙蘭の迷路 . . . 本文を読む
幻の本格パズラー、とありますが、ラストの謎解きは茫然自失というか、超脱力です。
でもどこかの国の新本格とは違い、著者なりに本格ミステリのパターンを推し進めた結果、
すべての出来事が謎解きの手がかりになるとは限らない、というしごく当たり前の手法に行き着いた、
と好意的に解釈したいです。
というか、そうでも思わないと、最後まで読んできた苦労が報われません(笑)
■ケンブリッジ大学の殺人 グリン・ダ . . . 本文を読む
「チャーリー・チャンの活躍」とは反対に、
こちらは犯人も仕掛けも凝ってます。
現代ではとても通用しないトリックですけれど、
楽しい一編に仕上がっています。
■検死審問ふたたび パーシヴァル・ワイルド著 創元推理文庫
. . . 本文を読む
ずっと品切れだったですが、復刊されるときいて即買い。
版組みは、昔のままの小さい活字で、行間もせまい。
そのほうがクラシックミステリぽくていいですね。
ストーリーは、世界一周旅行団の中で連続殺人がおきて、云々。
ミステリの趣向は初歩的ですが、大衆小説的なノリはすばらしい。
チャンが「この犯人は必ず見つけます」みたいなことを言う場面では、
思わず握りこぶしでチャンに感情移入してしまいましたよ . . . 本文を読む
「日本SF精神史」の明治時代パートは横田順彌の「日本SFこてん古典」のほぼ焼き直し、と言ってもいい。著者と横田順彌は師弟関係らしいので、ひき写しというよりリライトと言ったほうがいいかもしれない。個人的には大正以降から現代までの流れ、とくに戦後のいきさつが興味深い。
いっぽう福島正実の「未踏の時代」は、文字通りに「SFを開拓していった」初代SFマガジン編集長の苦闘の記録。SFマガジン連載中に著 . . . 本文を読む