ジョー・R・ランズデール短編集「ババ・ホ・テップ」
ランズデールの作品はけっこう翻訳されていますが、読むのはじつはこれが2冊目。
「ティム・バートン版バットマン」がヒットしたときに、便乗本として出ていたバットマン/サンダーバードの恐怖」(竹書房文庫)が最初の邂逅。ちょっと自慢。だけど話をすっかり忘れているのが情けない。
で、この「ババ・ホ・テップ」(プレスリー対ミイラ男)という短編は、プレスリ . . . 本文を読む
某作家のブログで「好き嫌いの話だが、横田順彌の明治ネタ小説がつまらない」と書いてあって、
ああ、そうなんだよ、おれもなんだよ、と思ってしまったわけです。
たしかに好き嫌い、というレベルの話なのですが、なぜ好きじゃないのか、と胸に手をあてて考えてみたところ、
きっと「悪人が出てこない」からではないか、と思いあたったのです。
押川春浪たちの天狗倶楽部に肩入れしすぎて、
善人たちが大義名分で動き回るた . . . 本文を読む
ロジャー・スカーレットの描く人物たちは、アメリカにおけるロスト・ジェネレーションのカリカチュア、と思えることがあります。強父権的な一族の長が殺され、経済的、精神的にもかれに依存している家族たちが右往左往する姿は、「親世代が持つヴィクトリア期のモラルに対して冷笑的になったとされる。また、第一次大戦に遭遇したが故に、社会と既成の価値観に絶望し、その中で生きる羅針盤を失い、社会の中で迷った世代」という説 . . . 本文を読む
江戸川乱歩に「探偵小説四十年」があり、
横溝正史には「探偵小説五十年」。
「探偵小説四十年」は、乱歩が幼少からの思い出を書いているとはいえ、
日本の探偵小説界のありさまも描かれていて、当時のようすが興味深いですねえ。
それは、乱歩が自分を記録することにかけては尋常でないくらいの意欲を持っていたからでしょう。
たいして正史の「五十年」は、思い出話に終始しているかわりに、
小説を書く作家とい . . . 本文を読む
いちおうホームズファンなので、ちくま文庫から「詳註版シャーロック・ホームズ全集」
(ベアリング・グールド/解説と注・小池滋/監訳)が出たときは、楽しみながら読みました。
ちくま文庫だけでなく、各社(早川、創元、新潮)の文庫でも出ているのはご存知のとおり。わたしはなんと言っても、新潮文庫の延原謙でないとホームズを読んだ気がしないくらい、新潮文庫の延原謙の訳が好きです。ほかの訳を読んでいないですし、小 . . . 本文を読む
ウィリアム・アイリッシュ(コーネル・ウールリッチ)の「黒いアリバイ」は、
「幻の女」や「黒衣の花嫁」ほどメジャーな作品ではないし、はっきり言って出来も良くないです。
けれど、1977年の時点で新刊として出たという1点で気に入っています。
ウールリッチの作品を新刊で読んだ、という記憶が、
作品の出来とは関係なく好きになっているんですね
良い作品は戦後すぐから30年代ぐらいまでに翻訳されていて、
昭 . . . 本文を読む
フレドリック・ブラウンの「73光年の妖怪」について、アマゾンのコメントに「「敵」=「宇宙人」と飛躍した発想についていけない云々」とあって、なるほどと。
確かにそのとおりだなと、本棚から同書を探してきました。
旧版は真鍋博のイラストが懐かしい。
たしかに主人公の博士が「敵は宇宙生命体だ」と気づくのは論理の飛躍ですが、
それに納得できなければ、エンタメ小説読まずに数学の論文でも読むことをおすすめし . . . 本文を読む
正式な名前は、
クリストファー・セント・ジョン・スプリッグです。
長いので省略しました。
意外や意外、面白いですね。
横溝正史の「三つ首塔」が好きな人にはおすすめかも。
ヒロインがどんどん悲惨な目にあうし、
おじさんが重要な役で出てくるし、
探偵(警部)はいますが、探偵の役目はあまり果たしていないですし。
他の作品も翻訳して欲しいなあ。 . . . 本文を読む
この世にはSFミステリという、わりと狭いジャンルが存在していて、
翻訳ものならば「鋼鉄都市」「裸の太陽」という本格ものから、
ブーダイーンものといったハードボイルドSFまで、
今では狭いわりにはいろいろな作品がひしめきあっているようです。
SFミステリ好きとしてはひじょうに魅力的なタイトルですが、
あまり話をおぼえていない。
ということはあまり面白くなかった、ということになります。
ごめんなさい . . . 本文を読む
ロジャー・スカーレットの処女作ですが、
もうひとひねり、欲しかったところ。
でも、それなりに端正な本格派でよかったですよ。
「エンジェル家の殺人」が一番とは思いますが、
「猫の手」を手にいれないといけないなあ。
論創社には「白魔」をぜひ出して欲しいですね。 . . . 本文を読む
コードウェイナー・スミスはSF史の中でもっとも重要な作家の一人にもかかわらず、「カルト」という言葉がかならずかぶせられています。それはSF作品そのものが少ないことと、作中で描写される事物のイメージが曖昧というか、よくわからないから、かもしれません。
スミスは詩人の側からSFを書いていたと勝手に推測すれば、散文的な描写とは縁がないということも言えます。スミスの文章から具体的な形を導き出しても、あまり . . . 本文を読む
ついでに東京創元社のイラストレイテッドSF
「魔性の子」ロジャー・ゼラズニイ を。
現代と魔法が支配する世界と、赤児が入れ替わって、
魔法世界で科学と魔法が激突するジュブナイルファンタジイです。
ジュブナイルなのでゼラズニイの筆も軽やかです。
龍の名前が「秋の日の黄昏の空を彩る名残りの紫雲に立昇る一条の煙」ですから。
原著もこうなんですかねえ。
台詞回しが「どうにも、こいつはくわれねえ」 . . . 本文を読む
サンリオSF文庫に「エンパイア・スター」があれば、
ハヤカワには「プリズマティカ」があります。
創元が当時イラストレイテッドSFと銘打って、
ゼラズニイの作品を出していたので、
ハヤカワの海外SFノヴェルズでは
ディレーニイのイラストノヴェルを対抗して出した、のでしょうか?
「プリズマティカ」
「コロナ」
「エンパイア・スター」
「時は準宝石の螺旋のように」
「オメガヘルム」
「廃墟」
「われ . . . 本文を読む
意外といってはマクロイと訳者に失礼ですが、面白かったですね。
こういうアベレージヒットのような作品は、読んでいて楽しい。
適度な人物描写にタイトなストーリー展開、巧みな伏線と自然なプロット。
「そろそろ来るぞ」と思うところにスパッとはまるストーリー展開。
定石と言えばそうなんですが、安心できる展開は楽しいですね。
毒殺トリックはどうでもよくて、
幽霊の2/3の本当の意味と、最後のツイストがきれいに . . . 本文を読む
「悪魔の百唇譜」を作品としてはどうか、なんて書いてしまいましたが、
「悪魔の百唇譜」は昭和37年に「推理ストーリー」という雑誌に連載された、
「百唇譜」という中篇を長編にしたものです。
参照:横溝正史エンサイクロペディア
http://homepage3.nifty.com/kakeya/ys_pedia/ys_pedia_index.html
『悪魔の手毬唄』が昭和34年に完結しますが、
そ . . . 本文を読む