赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(29)
日本外交の真価を発揮したG7 エルマウ・サミット
今回のG7の意味
主要国首脳会議(サミット、G7【※1】)が6月7日、ドイツ南部エルマウ城で開催されました。
【※1】G7は、"Group of Seven"の略で、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7つの先進国を指す。
討議の冒頭に発言を求められた安倍総理は「G7は自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値に立脚し、国際社会の秩序を支えてきた」と指摘。その上で「グローバルな視点から対応できるのはG7だけだ」と世界経済におけるG7の連携の重要性を強調しました。
さて、G7での最大のテーマは「中国問題」につきます。AIIB(アジアインフラ投資銀行)をテコとしてアジア諸国への経済支配の拡大をはかり、また、南シナ海の南沙諸島では周辺諸国と激しい摩擦を起こしている中国の現状に、G7がどのように対処しようとするのかが注目されていました。
サミット出発前に安倍総理は、中国に対する欧州の“ダブルスタンダード”を突いて、「欧州首脳に『南シナ海と経済で、中国への対応が違うのではないか』と指摘するつもりだ」と述べていましたが、まさにその通りの展開となりました。これはG7に先立ち、日仏首脳会談、日独首脳会談でも議題に上げられ、ここで独仏両国の首脳も安倍総理の真意を理解したものと見られます。
日仏首脳会談
6月7日、オランド・フラン大統領との首脳会談が行われ、安倍総理は「現在、国会で審議中の『平和安全法制』が成立すれば、フランスとの協力余地が拡大する。日本の取り組みへの支持を得たい」「南シナ海では中国による埋め立てが急速に進展しており、この点について懸念を共有したい」と述べています。
これを受けオランド大統領は、「日本は大切なパートナーかつ同志であり、その取組に対して連帯を表明する」、「南シナ海の状況について懸念を共有する」、「安全、平和の確保のためには、力ではなく対話による解決が重要である」と述べています。
日独首脳会談
同じく6月7日の夕方からは、メルケル・ドイツ連邦共和国首相と約20分間の首脳会談が行われました。安倍総理は日本の総理大臣として初めてウクライナを訪問したことにつき,「G7次期議長国として,ウクライナ問題の解決に向けた日本の積極的な取組や意志を示すためのものである」と説明しました。メルケル首相からは「安倍総理がウクライナを訪問されたことは大変ありがたい,また,ウクライナに対する日本の多大なる支援に感謝申し上げる」と述べています。
また、平和安全法制に関して安倍総理は「平和安全法制の閣議決定に対するドイツの理解に感謝する」と述べました。これに対しメルケル首相は「日本が国際社会の平和に積極的に貢献していこうとする姿勢を100%支持する」と述べています。
G7での「中国問題」
G7会合の事前にフランスとドイツの首脳と中国問題に対しての認識を共有できた意味は極めて大きいと思います。すでに日米間では、中国問題に対する認識が共有されているだけに、EUに大きな影響力を与える仏独と認識の共有ができたことは、ヨーロッパ全体の意見をまとめたに等しいからです。
さて、G7の首脳宣言では「中国による南シナ海の岩礁埋め立てに関し『現状の変更を試みるいかなる一方的行動にも強く反対する』と明記され、中国の野心的な海洋進出を牽制するものとなりました。
なかでも、首脳宣言前文に、自由や民主主義、法の支配、人権の尊重といった原則を確認した上で、「主権および領土の一体性の堅持に一致団結する」とした文言は、G7が中国の不法行為を容認しないという意思が明確に示しています。
さらに、G7では、中国の経済成長への対応についても議論となり、安倍総理は「持続可能でないことに金をかけるべきではない」、「(AIIBに関して)汚職があれば途上国のインフラは健全な形で育たない」と述べ、「腐敗対策に取り組み、G7が一致して透明で公正な運営を求めるべきだ」との考えを述べています。
中国に変化の兆し
当ブログにも、信頼する情報筋から、G7に対する中国の人びとの反応が速報として寄せられました。
「世界各国が中国に警戒感を持つのは当然ですが、実は、この圧力が中国内部の不満の起爆剤になるようです。卵から雛が誕生するように殻の外と中から突っつく感じです」「中国高官や富裕層の海外脱出などが発生する可能性が高まっています」「一部の人は巧妙な方法で財産を移していますので、国外脱出を考える人もいます」。
このままでいきますと中国の国家としての機能がますます弱まるのではないかと推測されます。
G7での成果が国内に及ぼす影響
ところで、日本国内では、最も重要な論議とならなければならない「安全保障法制の論議」がどうしたわけか低調のようにも見えます【※2】。国民の生命と財産を守る論議であるにもかかわらず、意図的に話を枝葉末節に振り向ける人たちがいるためです。
【※2】『WiLL』編集長の花田紀凱氏も「初めからわかろうとしない→わからない」「わかろうとはするのだが→複雑すぎる議論でわからない」、「わからないものなら賛成するより反対した方が無難」、「というわけで『安保法案成立』について世論調査をすると反対が賛成を上回ることになる」と発言している。
しかし、安倍総理はG7の出発前に、来年のG7会場を伊勢志摩で開催することを発表しました。これで、国民にG7の意味を知らせることに成功しました。
さらに、G7では、安倍総理が主導権を握って中国問題を積極的に取り上げ、これが実は、日本における安全保障法制の中心部分だと印象づけたのです。中国の脅威が改めて国民に認識された意義は実に大きいと思います。
日本はG7でも主導的な立場に立った
G7首脳宣言の「国際法の順守という共通の価値観」「中国の横暴はもはや看過できる状態ではない」、さらには「AIIBに対してG7は連携して対応することで一致した」という表明がなされたので、G7首脳の結束が確かなものになったことは間違いありません。
これは安倍首相の外交力のたまものと言えます。これにより中国の横暴に苦悩するアジア諸国を勇気づけることになっただけではなく、「ロシアとの対話を継続する」という発言を通し、ヨーロッパの安定と平和に寄与することを宣言し、EUでの信頼も確かなものにしたと考えられます。
今回のG7会合は、戦後70年たって、はじめて、日本が世界の調和と発展に貢献できる時代の到来を告げる極めて意義あるものだと感じています。
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