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コラム(200):TPPの未来
1月23日、トランプ大統領は環太平洋経済連携協定(TPP【※1】)から「永久に離脱する」とした大統領令に署名しました。
【※1】TPPは、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナムの8カ国で交渉開始。マレーシア、カナダ、メキシコ、日本の計 12 カ国が交渉参加国。
TPPに関する偏向報道
これに対し、経済問題の第一人者を自負する日本経済新聞は「TPPは米の参加が前提で発行の見通しがたたなくなった」とその意味を失ったことを強調しています。さらには、朝日新聞や毎日新聞などのマスコミが「安倍政権の失策」と位置づけようとしています。
しかし、こうした報道には疑問が残ります。安倍政権を否定したいあまり、世界のトレンドを見誤り、情勢を真逆に判断する傾向があるように感ずるのは筆者一人ではないと思います。
安倍総理の年明け外交の意味
トランプ氏の大統領就任が決まって世界で一番早くトランプ氏と会談したのは安倍総理でした。民進党の蓮舫氏が会談内容の開示を求めましたが、当然安倍総理は何も語りませんでした。しかしその後の、安倍総理とトランプ氏の発言と行動で読み解くことができます。
TPPについては、安倍総理が1月12日から17日までの間、フィリピン、オーストラリア、インドネシア、ベトナムの各国訪問がすべてを物語っています。
つまり、安倍・トランプ会談で、「アメリカはTPPを離脱し国内経済の建て直しをする。TPPは日本主導でやる。」との合意があったと推測する方が合理的だと思います。でなければ、年明け早々に安倍総理が4カ国を訪問する理由が見当たらないからです。
新しい太平洋の経済秩序
TPPは経済同盟であると同時に、軍事同盟の要素があります。覇権主義の中国に対して、経済的側面から中国を封じ込める意図があります。
つまり、中国抜きの自由経済貿易圏をつくるのがTPPの本質です。トランプ大統領はTPP離脱と同時に、北米自由貿易協定(NAFTA)についても再交渉、関税障壁を求めるとして、カナダとメキシコを窮地に立たせています。そのため、両国は、必然的にアジア・太平洋地域に自由貿易の活路を見出さざるをえず、TPPに重点を移すことは必然です。つまり、アメリカがTPPから離脱しても、TPPの重要性は益々高まるものと言わざるを得ません。
アメリカはTPPを離脱しましたが、アメリカの国益に影響しません。また、窓口は開かれているのでいつでも再加入は可能です。
1月19日のダボス会議でイギリスのメイ首相は「オーストラリアやNZ、そしてインドと通商協定について協議を始めた」と述べていますが、TPP参加交渉国のオーストラリアやニュージーランドを通し、TPPに重大な関心を抱いていると推定されます。イギリスのTPP加盟が現実化すると、仏・独・伊などのEU諸国が加盟してくる可能性もあります。
望ましい形の国際機関
TPP(環太平洋経済連携協定)は当初想定した枠組みを大きく超え、一気に世界に広がる可能性があります。
TPPの基本概念をベースにグローバル規模の自由貿易経済圏が新たにできることになります。無用の長物と化した国連に替わり、機能する国際機関の役割を担うことも考えられます。
これらの動きは、安倍総理の力に負うところが大きく、同時に日本の果たす力も大きくなると考えられます。TPPを単なる小さな経済圏の貿易単位程度と矮小化した認識で考えていると、新しい時代の流れは理解できないのではないでしょうか。
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