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TPP交渉の真相と本質 安保法制成立後の情勢変化(1)
日本の外交力に著しい変化
安保法制の成立で日米間の同盟関係が一層強化され、国際社会に安定と安心感を生み出しましたが、この視点で国際社会を改めて見直すと、日本の外交の力が着実に上昇している事実に驚かされます。日本の発言が国際社会に大きな影響を与え始めているのです。
交渉が難航していたTPP=環太平洋パートナーシップ協定【※1】での甘利経済再生担当大臣の発言がその好例であると思います。甘利氏は自国の利益ばかりを主張するアメリカのフロマン代表に対して「ゲームを終わりにして誠実な対応をすべき」と発言して流れを変えました。一国の国益よりも国際社会全体の利益を考える日本の外交姿勢を示す画期的な瞬間であったと思います。
【※1】シンガポール,ニュージーランド,チリ及びブルネイ、米国,豪州,ペルー,ベトナム、マレーシア,メキシコ,カナダ及び日本の12カ国による環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定 (EPA) 交渉。
TPPの本質
TPPの本質は当事国以外の反対する国から見るとその本質がわかります。
2013年に日本が参加表明した際、中国は「日中韓のFTA=自由貿易協定などさまざまな枠組みの交渉が同時進行しているという現実を尊重すべきだ」との牽制発言をしました。日本の参加表明によってアメリカが主導するTPPが中国にとっては不利益になると認識していたからです。
中国の貿易に対する考え方は軍事的覇権と表裏一体なものです。自国の利益のために経済力だけでなく軍事力を駆使して他国を支配しようとするものです。AIIBはその覇権主義の同一線上にあります。
一方、TPPは、環太平洋諸国の共存共栄が主目的で、相互の利益となる合意点を探り、貿易から生じる利益を高めるものです。中国とは根本的に発想が違うのです。この本質を理解するとTPPが環太平洋諸国にとり重要な貿易協定であることがわかります。
アメリカのエゴイズムを一喝
今回のTPPの閣僚会合での最大の焦点は、バイオ医薬品の開発データの保護期間や、乳製品の関税の取り扱いなどを巡っての問題でした。とりわけ、アメリカのフロマン代表は自国の利益のために、オーストラリアやニュージーランドと激しく対立し、溝がなかなか埋まりませんでした。
たとえば、フロマン氏はバイオ薬品の特許の期間の交渉では、製薬会社の利益を中心に交渉し、アメリカのエゴを丸出しにしていました。本来、薬は薬を必要としている人を助けるためのもののはずが、製薬会社の利益のためのものになっていたことは残念です。
アメリカは、今なお続く国内産業の保護主義的な政策を踏襲しようとしていたのです。その意味で甘利大臣の一喝は非常に大きな意味を持ったと思います。
TPPは農業分野に希望をもたらす
日本ではTPP締結に対して依然として冷ややかな見方をしている向きがあります。
コメや酪農製品の輸入が日本の農業に壊滅的な打撃を与えると主張してTPPに反対を続けているJA全農(全国農業協同組合連合会)です。しかし、農業生産額に占めるコメのシェアは二割を切り、コメの国際価格は上昇し、国内価格との差は小さくなって来ています。しかも、日本のコメはブランド品で、輸出している農家もあり、悲観する状況ではありません。
専門家は「米価を高くしている減反を廃止して価格を下げ【※2】、価格競争力をつければ、鬼に金棒だ。影響を受ける主業農家には直接支払いを交付すればよい」と指摘しているほどで、JAの主張はその根拠を失いつつあります。
【※2】米価は減反政策によって維持されている。現在、年約4000億円の補助金が税金から支払われている。国民は納税者として補助金を負担したうえで、消費者として高い米価を負担している。
また、乳製品の関税の交渉では、日本のマスコミは盛んに、酪農従事者が大変なことになると報じています。従来から酪農分野にも多額の国の補助金が使われていますが、あまり報道されていません。酪農家はもっと経営努力をして工夫をする余地があるように思います。
日本のほとんどの消費者は安い乳製品を手に入れることができることを喜んでいます。ニュージーランド産のおいしいチーズを安く輸入して、豊かな食卓を囲みたいものです。
TPPは日本に農業革命を起す
かつて日本の農業を支えてきたJAはその使命を終えるときが来ました。今やJAは農家を搾取するだけの組織でしかなく、国に対する圧力団体になっています。
JAは、農業の構造改革に反対し、米価引上げの政治運動を展開しただけです。JAが守ろうとしていたのは、実は農家や農業の利益ではなくJA自身の利益だったのです。これが今日の日本の農業衰退の根本原因です。
日本の農業を本当に守るという観点に立つなら、JAの解体が先決です。その意味でTPP合意は、日本の農業再生への道を開いたものとして歓迎したいと思います。
最後に、TPP合意の重大性について、情報筋から以下のお話が寄せられましたのでお伝えします。
TPP交渉が合意され、巨大な経済流通圏が整備されました。
アメリカのフロマン代表の力不足を、日本の甘利経産再生担当大臣が精力的にカバーし、
参加各国の交渉のイニシアティブを取り合意にこぎつけました。
この合意により、TPP参加各国の流通が円滑になり、より緊密な関係が築かれることになりました。また、参加国以外の国との輸出入についても、ここで決定した基準がスタンダードな形で適用されるようになります。
TPPの関係は経済的な関係のみならず、安全保障面での重要な結びつきでもあります。
中国主導のインフラ銀行の主目的が実際には軍事的覇権であることを考えると、
TPPの合意は中国の暴走を抑止する上でも大きな存在になります。
TPP合意によって、中国のインフラ銀行による覇権構想が後退し始めたことは言うまでもありません。
米中首脳会談や国連演説で評判を落としている中国の習主席にとっては、大きな打撃となりそうです。
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