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巴里の空はあかね雲 (新潮文庫) 価格:¥ 460(税込) 発売日:1987-03 |
“へぇ~、バラエティーにも出るんだ”と思いましたが、映画の宣伝だったのですね。
岸恵子さんは憧れの女性の一人ですが、美しさ、生き方以外に、すごく羨ましいな、と思ったことがあります。
それが、この『巴里の空はあかね雲』に出てくる、岸さんの言った言葉なのです。
この本は岸恵子さんの自伝的エッセイなのですが、彼女がイブ・シャンピ氏と結婚してフランスに住んでいた頃のある夜、別の男性から軽く口説かれるんですね。
月を眺めながら、若いシナリオライターだったかな、その青年が“月が美しい。そして、あなたも”みたいな、いかにもフランス男らしい(注:私の偏見)台詞を言います。
すると、岸さんは鋭く切り返すんですね。
“あんたに言われなくったって、自分が美しいことは知ってるわ”
読んだときは、“格好いい!ほんとの美人しか言えないセリフだ。私の人生には残念ながら縁がないな”と思いました。
もちろん、人妻の自分を口説く図々しい男に対する切り返しですから、岸さんがどこまで本気で言ったかは分かりませんが、でもやっぱり美女でなければ格好のつかない言葉。
今までもそしてこれからも、それどころか前世でもたぶん私は言ったことのないセリフなので、なんだか羨ましかった。
しかしこのあと、岸恵子さんにはほろ苦く辛い、人生の一大事が起こります。
それでも、凛と輝くひとつ星みたいな彼女に、やはり憧れてしまいます。
この本の中のエピソードの、大半は少し、ほろ苦い。裏切りも別れも、切ない時の流れもあります。
けれど、美しいひとの勇気ある生き方は、ほんのりと胸に響いてくるのです。