ネタバレあるよ~。
まずね、ストーリーは良くできてます。面白い。
1979年に放送されたテレビアニメ『機動戦士ガンダム』いわゆる「ファースト・ガンダム」の第15話、「ククルス・ドアンの島」を翻案し映画化したこの作品。
ガンダムの数あるエピソードの中でも、取り立てて名作と謂われていたわけでもなく、むしろ「作画崩壊が酷い」とか言われていて、たんなる「話数調整」の回に過ぎないみないなとらえられ方をしていた回なのですが
「いやいや、これはとても重要な回なのですよ」
と、岡田斗司夫氏は「ククルス・ドアンの島」を改めて映画化した意味を語っておりましたが、
それは岡田氏のYou Tubeを見ていただくとして
ともかくね、ストーリーは良くできてます。面白いです。
ジオン軍の脱走兵、ククルス・ドアンは、戦災孤児たちとともにある島に隠れて自給自足の生活を送っていました。
ドアンはその島にやってくるジオンや連邦のモビル・スーツを、自身のザクで「排除」していたのですが、その島にはジオン軍の作戦執行に関わる重要な軍事施設があって、ジオン軍は作戦を滞りなく執行するため、「漆黒のサザンクロス」との異名を持つモビル・スーツ部隊を派遣。
一方、連邦軍は、その島にジオンの兵が隠れている可能性があるとして、主人公アムロ・レイを派遣。アムロはガンダムに乗って、ククルス・ドアンの島を偵察に行くと…。
てな感じの話。
最初に感じたのは違和感なんですよね。
キャラクターの掘り下げ方が、なんというか、「浅い」んです。
あの、皮肉屋であまのじゃくで、でも根はいいやつなカイ・シデンにしても、富野監督の演出ではもっと複雑で深いキャラクターとして造形されていたと思うのですが、安彦演出だとなにか類型的というか、表面的というのか、カイという人間の深さがまるで感じられない。
それはセイラさんにしてもそうだし、ブライトさんなどはオリジナルよりももっと「幼い」というか「軽い」描かれ方をされていて
いや、これは違うだろ!
と、思ってしまった。
まあ、声優さんがオリジナルとは違うから、というのもあるかもしれませんし、映画用の脚本ということで、わかりやすく書かれたということもあるかもしれませんが、
しかしいかに脚本が甘いものだったとしても
でもカイの声はオリジナル版と同じ古川登志夫さんなわけで、そこはもうちょっと、オリジナル版のカイをやらせようと思えばできたはず。やはりこれは、演出力の差、というか
そもそも安彦監督の、ファースト・ガンダムに対する認識、解釈の「甘さ」なんじゃないかなと、思わざるを得ません。
とはいえ、
今挙げたような気になる点はそれとして、一つの物語として、「戦いモノアニメ」としては非常に良くできてます。
わかりやすい、類型的ではあるけど、一つの物語としてしっかりと構築されていて、物語世界には入って行き易い。
テンポも良く、戦闘シーンの迫力は、良質の時代劇やアクション映画を観ているかのような感覚で、ガンダムの登場シーンは一々ケレンを利かせているし、時代劇でいう「見得」、間の取り方、一気呵成の攻め込みなどなど、
ハラハラドキドキさせるアクションはお見事という他なしです。
ラスト・シーンはオリジナル版と基本的には同じ。
戦いから離れることができたドアンと子供たち。でもアムロたちはこれからも戦争を続けなければならない。
しかし、あれで本当に、ドアンたちの平和は保たれることになったのだろうか?
またしてもジオン軍がやってきたら?
物語上は、一応の平和を得たかのように見えるドアンと子供たち。
でも「本当」の平和は
いつ
やってくるのだろう?