Frany's Yard

Frany's Yardはトリュフのスタッフたちが、アンティークの話、日常の中の嬉しい、可愛い、心地いいことを綴ったミニコラムです。

きょうのいっぴん( 南仏便り 3)

2011-07-21 19:09:13 | 買い付け日記

郷土色というのでしょうか、この独特の気候のせいか、南仏では、その風土を感じさせるような品に心が動かされるものですが、なぜか手にした銀器には、底にTIFFANY&Co.の刻印。

さすがに、銀器に南仏の風土を求めるのは、すこし無理があるかもしれないですが、パリや他の地方都市ならともかく(なんと大雑把なくくり!)南仏での出会いに、妙に納得がいかないのは、僕の南仏への過剰なロマンチシズムのせいでしょうか。
そんな事を、その瞬間に考えたのだかどうだか、シュガーポットは手から離さず、気のない素振りも見せながら、状態を確かめつつ、交渉に挑む。

おそらく1900年代前後まで遡るのではないだろうか、愛らしくもあり力強さも見せる、文句なく魅力的な逸品。ティファニーでなくても買い、というのは愚見かもしれない。何故ならそれは、ティファニーだからこそのセンスと技術で、世に出された物なのだから。
銀のシュガーポットは、無事京都へ届いたようです。


※こちらの品は既に南仏より発送済みで、間もなく店頭に並びます。

マルツ


きょうのいっぴん( 南仏便り 2) 

2011-07-19 19:11:28 | 買い付け日記

写真を携えるブローチ。

7月のアルルは、村を挙げての国際写真展に大勢の人が訪れ、盛り上がります。そんなムードの中、朝の蚤の市でも写真関係のものが、やはり気になって手にした、フレーム状になった小さなブローチ。
大切な人の姿を携えるのは、手帳の中でなくても、携帯の待ち受け画面でなくても、こんなふうに肌身離さず、恥ずかしがらずに。


※こちらの品は既に南仏より発送済みで、間もなく店頭に並びます。

マルツ


きょうのいっぴん( 南仏便り )

2011-07-15 09:22:05 | 買い付け日記



南仏の夏は陽が長く、そんな太陽の恵みに、不謹慎にもついつい労働時間
を伸ばしてしまいます。結果、ご報告がこんな遅くなってしまいました
が、7月の始まりとともに、買い付けのひとり旅を続けています。
今回も、旅の途中で出会った気になるものたちを、ほんの少しご紹介しま
しょう。

リキュールもしくは調味料の小瓶。

花の開いたような口許に熟れた果実のような膨みが魅惑的な吹きガラスの
小瓶を並べてみる。
足の有るもの、ないもの、曇り具合いの違うそれぞれのガラス。
吹きガラスのゆるい風合いに角を付けるカットで図られた質感の均衡が心地良い。

譲ってくれた初老のマダムは、彼のゴッホも憑かれたリキュールの瓶だ
と、フランス語がからきしの僕に、身振り手振りも混じえて一生懸命説明
してくれるのだが、ゴッホが中毒だったと言われる昔のアブサン (昔のアブサンには中毒性があったっとか)のカラフェなのだろうか?
ビネガーやオイルの容器にも見えるが。
そんなことで、真偽は確かではないが、どことなく食虫植物を思わせる佇まいに、毒の余韻が微かに残るようでもある。
1888年にゴッホが生きた村、アルルより。

※こちらの品は既に南仏より発送済みで、間もなく店頭に並びます。

マルツ


今日のいっぴん その6

2010-10-28 19:22:47 | 買い付け日記
昨日は、買い付けのファイナルだったが、午前中から雨に降られて、
屋外のアンティークマーケットは、売る方も買う方もなんだか、
やる気も失せた感じ。
雨の降り出す前の、早朝に買った物たちの、送り出す準備に集中することに。
それでも雨の中マーケットの誰もが帰ってしまって、
ゲートが閉まる知らせを受けるまでかかってしまった。
時間切れでコンテナにいれられなかった小さなアンティークたちは、
今朝スーツケースに詰めて、内心そのパンパンに詰まったスーツケースの
重量に怯えながらも、平静を装い、チェックインはパス。
(ここで重量制限に引っかかると、オーバーチャージを払うか、
公衆の面前で、スーツケースを開けて機内持込に分配するなど、
とんでもない仕打ちが待っている)

そう、全ての作業がなんとか片付いて、今空港なんです。
今回は延べ20日間に及ぶ、フランス、ベルギー、イギリスの3ヶ国を訪れ、
車で異動した距離は3200km(迷子走行もおおいに含まれる)に及んだ。
まぁ、その手の職業の方には、日割りにすればなんと言う事のない数字だろうが。
出発を待つ間、パブで一杯。とにかく、ちょっとホッとする瞬間です。
コンテナの到着は12月。
果して、今回の買付は合格だったか、出ない答を探しながら、
機内で反省会の予定です。(目が開いていればのお話)

ガラスに焼付けられたモノクロームの、誰かが撮った写真。
今回の買い付け日記の締めにご紹介しようと、ずっと一緒に旅してきた、
印象に残るアンティークです。
イタリアで撮影されたもののようです。
モノクロームの映画のワンシーンのようでもある、
ダンディーで、乾いた質感が、瑞々しく伝わってくる1枚。
ベルギーの蚤で、これ1枚だけ買い付けました。
値段を尋ねると、写真を太陽にかざし、吟味するおじさんは
まるでアーティストのようでした。
(そして優れた画商でもあったのでした、苦笑。)

マルツ