糖尿病は認知症の発症リスク因子であることが、近年の疫学研究から示されています。
高齢化社会において認知症の患者さんに遭遇する頻度はぐっと増えてきたように思いますが、できれば発症したくないですし、進行は予防したいものです。
今までのところ血糖コントロールによって認知症リスクが異なるのか、あるいは認知症のタイプによって影響の程度に差があるかどうかという点は十分明らかにされていませんでした。
しかし、9月の欧州糖尿病学会での報告でHbA1cで層別化して追跡した結果、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、非血管性認知症のいずれにおいてもHbA1c低値群は低リスクであったことが示されています。
具体的にはHbA1ⅽ52mmol/mol(7%)未満の群に対して、87mmol/mol(10.2%)以上の患者さんではアルツハイマー病は1.34倍、血管性認知症は1.93倍、非血管性認知症は1.67倍リスクが高く、血糖管理状態が悪い場合にリスクが高いという関係が示されています。
また、認知症の中でも糖尿病の動脈硬化との関連が関与したと思いますが、血管性認知症との間に最も強い相関が認められ、2型糖尿病の人は対象群に比較して1.36倍リスクが高いことが分析されています。
認知症の薬は一般的に使用されておりますが、やはり、効果は限定的であり、進行抑制をできるかどうかという程度のものです。
認知症を治す!というとよほど特殊な病態(慢性硬膜下血腫に伴うものなど)でなければ難しいと思います。
けれど、血糖コントロールを良好に保つことがいかに長期的な目で見たうえで大事かということがまたしても示された結果だと思いました。
認知症になってしまえば、薬の管理やインスリン管理などの問題が出てきて、血糖管理困難になりがちです。家族の負担も大きくなります。
予測どおりといえばそれまでですが、日常臨床に生かしていきたいです。