再読のための覚え書き
蒲団・一兵卒
田山花袋(1872-1930)
《蒲団》
「弟子にしてほしい」と請う芳子の再三の手紙に、著名な作家、竹中時雄は師弟関係を結ぶ約束をした。妻子ある身の時雄だが、若く美しい芳子に惹かれてゆく。しかし、芳子に恋人ができたことを知る。
《一兵卒》
満州。男は、脚気の症状で苦しみつつも、不潔と叫喚に包まれた野戦病院を逃げ出した。
「胸が間断なしに込み上げてくる。涙は小児でもあるように頬を流れる。自分の体がこの世の中になくなるということが痛切に悲しいのだ」
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赤裸々な懺悔録《蒲団》は、日本の私小説の初まりとして知られているが、実際のところは、まったくのフィクションなのだそうだ。
それはともかく、延々と描かれるのは、若い恋人たちに対する、中年男の劣情と嫉妬。再読はないなぁ。
《一兵卒》は短い戦争小説。熱に浮かされるようにして荒漠とした野を彷徨う男の、喘ぐ息づかいが聞こえるような単独行の道のり。
2021.7.8読了
蒲団・一兵卒
岩波文庫
昭和5年7月15日初版発行
昭和29年11月5日27刷
旧仮名遣い
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