長島 潤 Sing a mindscape

jun nagashima singer-songwriter

佐藤春夫「佐藤春夫詩集」

2021-10-04 10:19:00 | 

再読のための覚え書き


佐藤春夫詩集

佐藤春夫(1892-1964

堀口大学編


佐藤春夫の小説を二作読んだので、次に詩集を手に取った。


谷崎潤一郎の妻に恋をして、その気持ちをうたった詩の数々は、せつなくて美しい。


口語体の詩が流行る時代の中で、敢えて、文語体で形式的な詩を書いた。


《水辺月夜の歌》

せつなき恋をするゆゑに 

月かげさむく身にぞ沁む。

もののあわれを知るゆえに 

水のひかりぞなげかるる。

身をうたかたを思ふとも 

うたかたならじ我が思ひ。

げにいやしかるわれながら 

うれいは清し君ゆえに。


《願ひ》(一部分)

大ざつぱで無意味で

その場かぎりで

しかも本當の

飛びきりに本當の唄をひとつ

いつか書きたい。

神さまが雲をおつくりなされた氣持ちが

今わかる。



2021.10.3読了


佐藤春夫詩集

角川文庫

昭和33610日初版発行

昭和3951010

旧仮名遣い


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佐藤春夫「都会の憂鬱」

2021-10-03 08:43:00 | 

再読のための覚え書き


都会の憂鬱

佐藤春夫(1892-1964


前作「田園の憂鬱」が、神経の衰弱を帯びた抒情的な散文の色が強かったが、本作では話の展開を伴って小説らしくなる。


田舎での生活を引き上げ、都会に舞い戻ってはきたものの、日の当たらない平家での暮らしは、男の心境や境遇そのものだった。


「才能ある人に対してはその才能のためにその生涯を奪敬すべきであるし、さうして才能のない人に向つては、才能なしに生涯を送つて来たといふ理由で同じやうに奪敬すべきではないだらうか。」



2021.10.2読了


都会の憂鬱

岩波文庫

195535日初版発行

1987482

旧仮名遣い


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佐藤春夫「田園の憂鬱」

2021-10-02 10:24:00 | 

再読のための覚え書き


田園の憂鬱

佐藤春夫(1892-1964


作家としての生活に行き詰まった男が、妻と犬と猫を連れ、心の平安を求めて田舎に転居する。


しかし、彼を待っていたのは、閉塞的な田園風景や、近隣住民との軋轢だった。


武蔵野の自然の姿を官能的に捉え、彼の感覚は鋭さを増し、やがて追い詰められるように病んでゆく。


次作「都会の憂鬱」に続く。



2021.10.1読了


田園の憂鬱

岩波文庫

昭和26725日初版発行

昭和4091017

旧仮名遣い


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林芙美子「稲妻」

2021-10-01 09:40:00 | 

再読のための覚え書き


稲妻

林芙美子(1903-1951


おせいには、縫子、嘉助、光子、清子の四人の子どもがいるが、彼らの父親が三人いるという特殊な家庭事情がある。


光子の夫が亡くなると、その保険金をめぐって、兄弟姉妹含め周囲の人々がそれぞれエゴを剥き出しにする。


末娘の清子はそんな環境に嫌気がさして、家を飛び出し、ひとり暮らしを始めるが……


・・・・・・・・・・・・


全体的に、どんよりと曇った空や、汗ばむ湿った空気に覆われている、林芙美子らしい作品。



2021.9.30読了


稲妻

新潮文庫

昭和28331日初版発行

昭和3392511

旧仮名遣い


#読書 #文学 #文庫 #林芙美子 #稲妻