しゃべり方の癖

もうずっと彼に逢っていない。
それどころか連絡もとっていない。

また逢うと言う約束をしたから、ずっと待っている。

そのやり方が正しいのか、私にはわからない。
催促したり、誘ってみた方がいいのかもしれない。
かもしれない、じゃなく、絶対いいのだろう。

わかっているのに、できないことがある。


毎日、彼のことを考える。
彼の笑顔。
彼の仕草。
私を見つめた時の顔。
そしてしゃべり方の癖。

先日、新しいPCを売り場で眺めていた時のこと。
店員さんが近づいてきて、軽く説明を始めた。
私は今現在、購入予定がないことを伝える。
その時のしゃべり方が…。
彼そっくりだった。

途中で、気付いた。
店員さんはわかりましたと言って去って行った。
残されて、いつからこんなしゃべり方をするようになったんだろうと考える。

そうか。
いつも頭の中で彼の言葉を反芻してるから、こうなったんだ。

逢わないのに、どんどん彼に侵食されていく。
DNAが書き換えられていく。

彼に二度と逢えなかったら、私はどうなってしまうんだろう。

妄想を弄ぶ夜

少し前に彼が話していた。
貯まったマイルを消化するため、ＧＷ前に休暇を取ると。
世界中を旅している彼のマイルは、世界のどこにでも行けるほど貯まっている。
だけど彼が選んだのは…。

理由はきちんとある。
納得できる理由だ。
それなのに、私の胸の中には嫌なしこりが残った。

そこは彼の元カノの国。
仕事で知り合い、毎日国際電話をかけるほど夢中だった人。
彼女が覚えろと言ったから、英語でも通じるのに彼女の母国語を習い始めた。
２年前に終わったはずなのに、彼はまだその言葉を勉強している。

本当に終わっているのだろうか。

終わっているとしても、彼の心の中ではどうなんだろう。
もしかしたらそれを確かめるために…。
もしかしたら逢いに行ったのかもしれない…。

たとえそうだとしても、私に言えることは何もない。
何をしても彼の自由だ。

私の妄想の中で、元カノはスゴイ美人になっている。
一度彼の心を捕らえた人は、簡単にそれを取り戻すことが出来るはず。
そして彼は幸せになる。

・・・・・・・・・・。

もうこんな時間だ。
いい加減、この妄想、消えて欲しい。
終わった恋など、彼は追いかけたりしないはずだ。
たぶん。

お花見

初めは開花状況の心配をしていた。
次はお天気の心配をしていた。

開花は予想よりかなり遅れた。
お天気はずっと曇り時々雨だったのに晴れた。
神様、ありがとう。


彼はすぐ隣、桜満開の公園で準備。
私は近くのスーパーに買い出し。
ケータイで彼と相談しながらお買い物をする。
とっても楽しい。

思った以上に参加者が増えていたが、お酒もおつまみも万端。
桜の木の下で、彼の隣りに座って…それぞれ違う人とおしゃべり。
だって…。

１８時間ぶっ通しでお仕事していた彼は徹夜の参加。
この後も英語の企画書を２本も書かなければならないのでまた徹夜らしい。
だからいつもよりお酒を控えてる。
疲れた顔が可哀想だ。

少しずつ日が陰って来て、お花見は盛会のうちにお開き。
２次会のカラオケ？
もちろん行きますとも。


同僚から職業を間違えたんじゃないかと言われていた彼。
今日はQueenの"Too Much Love Will Kill You"にやられた。
なんだか彼の声が切なくて泣いてしまいそうになる。

カラオケ終りの３次会。
もう無理なんじゃないかなと思っていたら、やっぱり途中で眠ってしまった。
向かいの席の無邪気な寝顔に、また切なさがこみ上げる。
ホントに働き過ぎだよ。


同じ場所に住んでいると、帰る時も一緒。
空席のないバスの中で、立ったまま半分眠っている彼が軽く私にもたれかかる。
面倒見がよくて、気配りばかりして、人前では絶対気を抜かない彼。
少しだけ心を許してくれた気がして幸せに浸る。

ずっとこのままでいたい。
席が空いたけど、動きたくなかった。
降りるバス停が近づいてくる。
このまま行き過ぎてしまおうか。

バスが停まり、他の人が降りていく。
私はため息をつきながら彼に声をかける。
笑顔がいつもの彼に戻っている。


何でも出来てしまうから、決して自分にミスを許さない。
世界中と喧嘩してでも、頑なにプライドを守ろうとする。
それでも、僕はいい加減な男だからと笑って言う。


幼い恋は時を経て成長し、いつしか愛に変わろうとしている。

気になる言葉

晩秋に彼と歩いた公園を、春、ひとりで歩く。

先日、近くのお店に中華料理を食べに行った帰り道、彼は気になる言葉を口にした。


結婚したい人が見つかると言うのが、幸せなこととは思えなくなってるんです。


何も言えない。
意味もわからない。

彼は一度、幸せとは言えない結婚をした。
そして本当に不幸な結末を経験した。
結婚に臆病になっているのはわかる。

だから　結婚は考えていない　とか　結婚したいとは思わない　とか言うのならわかる。
でも、結婚したいと思える人に出逢えたら、それはそれでいいんじゃないの？


ずっとこの言葉の意味を考えていた。

結婚したいと思うほど好きな人に出会う。
↓
また失敗するのが怖くて結婚に踏み切れない。
↓
相手も自分も辛い思いをする。

こういうこと？


彼が私に対して抱いている感情が何か知らない。
だけどゆっくりと、十分に時間をかけよう。
そう言う気持ちになった。

彼の心の外套を脱がせるのは、暖かな日差しを注ぐ太陽だけなのかもしれない。

去年（こぞ）の桜-6-

傷つけたことは悪いとは思いません
そう思ってしまったら
逆に終わってしまうんじゃないでしょうか
僕は寧ろ
一歩進めたと思ってます

去年（こぞ）の桜-5-

僕にとってのテーマは
残りの人生を一緒に過ごしたい人なのか
「見極める」と言うことなんです

去年（こぞ）の桜-4-

電車に乗り遅れたら
それは自分が乗るべき電車ではなかったと
次の電車を待てばいいやと
最近はそう思うようになりました

去年（こぞ）の桜-3-

だから「告白」と言うのも
最近は「コクる」と言うんだそうですが
まったく意味のないものなんです

去年（こぞ）の桜-2-

月が地球の周りを回るように
そう言う運命なら自然と結ばれると思います
火星に無理やり自分の周りを回わらせてみても
やっぱり太陽の方がいいと言うと思うんですよね

去年（こぞ）の桜-1-

「付き合う」というのは
僕にとって何の意味もない言葉なんです