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別府との縁が切れると、入れ替わるように森本六爾(ろくじ)が登場する
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森本六爾 1903(明治36)-1936(昭和11) 考古学者
森本(以下M,芙美子の真似)は 芙美子(F)より半年早くパリへ来た考古学徒
箔をつけようとパリへ来た Fと同い年 妻あり子供2人いて単身留学中
Mの友人が田島隆純(T) Tは真言宗の学僧でこの時はパリ留学中
Mは同宿の留学生たちと頻繁にF宅に来てカフェやレストランに繰り出す
パリ初めての正月1日は M、T達と東洋びいきのオーダン氏宅に遊ぶ
出るとパリは雪 F・M・T3人でオデオン座のロイド喜劇を観る。
2日 Fのところに 突然G(外山五郎)が訪れた
出かけて「リラ」(島崎藤村が通ったカフェ)で茶を飲む
夕食に安い仏料理を食べ 南アフリカのシネマを観る すべてワリ勘だった
何だよ これは! ヤカンでお湯かけられた怒りはどうした?
いずれにしてもGは最早過去の男なんだろ?
それよりMだ 毎日F宅へ日参している MはマメのMかマジメのMか?
4日 M来訪 ジヤン・コクトオの電話とテレフオンと云ふ本持つて来てくれる
6日 M、Tを食事に招待 手料理を振るまう 食後は3人で望郷の歌を歌う
7日 M早朝来訪 私が好きで仕方がないそうだ へえ こんな破れた女がね
学者肌の人だが困ったことだ そう思うFだが人間関係をこわしたくない
このあとも出かけてチャップリンの映画を観に行く
8日 朝 この日も一緒に外出してカフェでひと時を過ごす
8日夜 M来訪 これってストーカーなんじゃないの?(Fに代わって)
さすがのFも日記に書く
「不快だ 女のくさったみたいだ 此男とは絶交する必要がある」
10日 M来る Fは「来たら水かけるからネ」と追い返している
11日 家に戻ると Mから鉢植えのリラの花三本・名刺・手紙が届いていた
「此花が御部屋を訪問いたします。どうか水をぶっかけて下さい。出来たら根の方が結構です」
17日 Mは知人を伴って来訪 3人でクリニャンクールの蚤の市を見物
絶交したわけでも無さそうだ
パリの友達の紹介 街の案内などの親切さ リラの手紙のユーモア
Fにとっても厭わしいだけの存在ではなかったのだろうから・・・
因みにMは「考古学の鬼」といわれたという
結核で妻に先立たれ 彼自身も翌年同じ結核で32歳の若さで亡くなった
パリのイラストを彼に捧げて今日は終わりにする。
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それでは明日またお会いしましょう
[Roasy]