理想国家日本の条件 さんより転載です。
幸福実現党
2020/12/26
(2020年12月23日収録) 菅政権肝煎りの「グリーン成長戦略」が25日の記者会見で発表されました。
2050年の温室効果ガス排出量の実質ゼロに向けて、14の重点分野で数値目標や政府の支援策が
盛り込まれていますが、注目すべきポイントは何といっても「自動車の電動(EV)化」です。
これは「2035年代半ばまでに、国内で販売する新車を全て電動車に切り替える」というもので、
一見「世界の潮流に乗った正しい決断」と見られがちですが、本当はどうなのでしょうか?
多角的な視点から述べております。
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日本の自動車産業を潰す、炭素税導入、ガソリン車廃止。中国EV車が世界を席巻。(釈量子)【言論チャンネル】
.日本の自動車産業を潰す、炭素税導入【前編】[HRPニュースファイル2222]
https://youtu.be/JXqnJ-1vZ_A
(12月23日収録)
幸福実現党党首 釈量子
日本の自動車産業を潰す、炭素税導入
2021.01.23
◆「カーボンプライシング」とは
昨年末、菅総理大臣は、「カーボンプライシング」の導入の検討を、小泉進次郎環境大臣と、梶山経済産業大臣に指示しました。
「カーボンプライシング」とは、二酸化炭素(CO2)に価格を付けて、排出量に応じて、企業や消費者に経済的な負担を求める制度のことで、いよいよ「炭素税」が始まります。
(※菅首相は、1月19日の施政方針演説で、「グリーン社会の実現」に向けて「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、世界に先駆けて、「脱炭素社会」を実現していくと発表。)
また、菅政権は、ヨーロッパ諸国に追随して、「2030年代半ばまでにガソリン車の新車販売を禁止」すると発表しています。しかも、軽自動車も含まれるということです。
この動きは、「世界の潮流に乗った決断」どころか、日本の基幹産業である自動車産業を弱め、日本経済崩壊につながる可能性があります。
◆国内の炭素税制の流れ
日本では1978年から石油税が導入され、2003年に、石炭に課税対象を拡大した「石油石炭税」が存在しています。
さらに2012年から、石油石炭税に上乗せする形で、3段階で「地球温暖化対策のための税」が導入され、燃料の種類に限らずCO2・1トン当たり289円の税をかけられています。
しかし、今回の「カーボンプライシング」では、CO2、1トン当たり数千円から1万円程度の、ヨーロッパ並みの高税率の炭素税を検討していると言われます。北欧並みなら35リットル満タンで1200円です。
政府は、「CO2を排出する燃料に課税していけば、化石燃料の使用量が減り、太陽光発電や風直発電といった再生エネルギーによる発電が増えるだろう」と考えているわけです。
しかし、製造コスト、輸送コスト、電気代などありとあらゆるものにかかってくるので、コロナ禍の中、かなりの負担増になります。
さらに政府は、「2030年代半ばまでにガソリン車の販売を禁止する」方針を固めています。
あと15年で、全ての自動車を「EV(電気自動車)、HV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)」にするということです。
日本でいま走っている車の内、EVは0.7%なので相当な無理を強いることになります。
◆カーボンニュートラルに対する各国の施策
これはヨーロッパを中心にした世界的な潮流でもあり、ドイツは、EV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車に対する補助金を最大9000ユーロ(約113万円)出しています。
イギリスは、2030年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止し、2035年までにハイブリッド車の販売をも禁止、他にも、フランスとカナダが2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止すると発表しています。
アメリカでは、カリフォルニア州が、2035年までにプラグインハイブリッド車も含めたガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止すると発表しました。
インドも、2030年には全ての新車販売をEV化すると発表しています。
◆EV先進国「中国」の施策
しかし、そのEVの先進国は、「中国」です。中国は、世界最大の自動車市場で、2019年で約2500万台の自動車を販売しています。
アメリカが約1700万台、日本が約520万台なので、いかに中国市場が大きいかが分かります。
そして中国は電気自動車でも世界最大の販売国で、2019年には97万2000台のEVを販売しています。
EVは、ガソリンエンジンに比べて、構造が簡単なので、中国政府は、EVを製造する国内メーカーに補助金をつけ、メーカーの生産規模に応じて一定比率の新エネ車の生産を義務付けるなどして、自動車産業を育てました。
この背景には、きわめて深刻な大気汚染もあります。
北京・上海・広州などの大都市では、自動車のナンバープレートの取得自体が制限されていたり、北京市内においては、車のナンバー別で、曜日ごとに走行規制が行われています。
しかしEVの場合は、そうした規制はありません。
このように中国では、政府の保護政策で、たくさんの電気自動車メーカーが生まれることになりました。
◆日本の自動車メーカー存亡の危機
前編で述べた炭素税や早急なガソリン車の廃止の流れは、日本の自動車産業にとっては非常に大きな危機です。もともと、トヨタやホンダが得意とする「HV(ハイブリッド)」車は、最も現実的な環境にやさしい車でした。
しかし、他のメーカーが追随できず、そのため、欧州での規制では、HVを「ガソリン車の一種」と位置づけ、締め出されることが決まっています。
トヨタは、このEV化の流れについて、EVのみに拘らず、HV(ハイブリッド)、PEHV(プラグインハイブリッド)、FCV(燃料電池車)などにも投資を行っていく「全方位戦略」をとっています。
「王者の戦略」ではありますが、その分、開発コストがかかり、日系メーカーにとって、EV化は強みを失うことになります。
もっとも3万点と言われるエンジン等の部品の多くを、数多くの下請け企業との緊密な連携によって生産する技術システムが日本の強みでした。ところがEVは、構造が簡単で、部品の数がエンジン車の3分の2で済みます。
日本の自動車関連産業の就業人口は546万人、全就業人口6,664万人のうちの、8.2%を占めます。自動車産業を失うことは、日本の雇用の面で大きな衝撃となることは間違いありません。
◆中国やEUの政策は、「日本潰し」
中国やEUはメーカーにとって巨大なマーケットですが、異常な補助金と規制で市場を著しく歪めています。
主要メーカーのEVの開発が追い付いていないにもかかわらず、大きな規制を設定することは、市場を歪め、企業に大きな負担を掛けることになります。
中国やEUの政策は、明らかに「日本潰し」であり、この方向に追随することは、中国車が日本中を走りまわるような状況になります。
政治がなすべきは、拙速なEV化ではなく、少なくとも、HV(ハイブリッド)車を世界標準にするための外交努力をすることでした。
単に「世界の潮流だから」というだけで判断し、ましてや小池都知事のように、単に「政府より先を走る」というPRのために、「東京都では2030年にガソリン車廃止」などと言い出すのは、きわめてナンセンスです。
さらに日本は、欧州並みにEVの普及を進めるために、補助金を現在の40万円の2倍である80万円とする案が浮上していると報道されています。
無理にEV化を進めるために、さらに財政赤字が増え、それが炭素税となって庶民に戻ってくるだけで、本当に不毛です。
◆EVの動力のリチウムイオン電池の弱点
更に、EV化には多くの懸念があります。
昨年の12月16日以降、日本列島を大雪が襲い、関越自動車道で2日以上にもわたって多数の車が閉じ込められました。
EVの動力であるリチウムイオン電池は、極端な寒さや暑さに弱く、雪の中で充電がなくなった場合には充電器がない限りどうしようもありません。内燃エンジンが命を守ったと言えるかもしれません。
さらに、電気代です。日本の経済の足を引っ張っている問題の一つは、高すぎる電気料金です。EV化が進んだとしても電気料金が高いままなら、家計の負担が大きくなります。
安く、大量の電力を供給することがまず大事であり、そのためには、原子力発電所の再稼働や、燃料を繰り返し使える高速増殖炉の実用化が必要です。
最後に、地球温暖化は、人為的な温室効果ガスによるものではないとする気象学者がたくさんいます。
「地球温暖化対策」の名のもとに、科学的に確定していない「CO2犯人説」をもとに経済を縛れば、日本の産業の競争力を失わせ、多くの人を路頭に迷わせることになります。
このままでは、「炭素全体主義」によって、日本経済崩壊の引き金を引くことになってしまうのではないでしょうか。
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