鼻水が出ると思っていた。
風邪、引いたかも、と言った。
そしたらだんだん、ひどくなって、咳が出るようになった。
咳が出る。脳みそが揺れる。・・・・頭痛。
三男に冷たくあたってしまった。
風邪のせいにした。
心配してくれる長男。気持ちだけ軽くなっても、風邪はひどくなった。
熱が出るわけでもなく、節々も痛くはなってこない。
次男の部屋を片付けるようにと言った。手伝うから。
っていうほど・・・の。
かえってきた答えは、引っ越す。って。
以前からそう言っていたけど。
結婚という門出ではなく、家を出る。
成人した人間が今までどおりのままでは、手狭になっていく。
部屋を大きくするほど親に力が無い場合・・・
家を出たいと思うのは至極単純な理由。
自立。
寂しい。悲しい。心配。
でも、誰でもが通る道。
仕事の関係で親元から遠く離れていく人。
大人になったら、結婚ではなくとも、自立を促す親もいる。
ちゃんとやってる。やっていける。やっていく。
いつまでも、仲良しこよしで一生を過ごせるわけではない。
いつか、この家から誰もいなくなっていく。
残されるのは、年老いて、話もままならない2人・・・
長男が残るとしても、どんな未来が待っているのだろう。
出て行った者は、もう2度と、戻る気持ちはないだろう。
残った者は、戻ってはこないだろうと思う。
いつでも、戻っておいでと、口から出てしまいそう。
変わっていく空間。
家族というくくりが増える日もあるだろう。
今の、この5人が、家族ではなくなる・・日。
実家という場所になっていく。
帰る家ではなく、帰郷するってなる・・
今、手を繋いで、輪になっているのに。
ひとつ・・またひとつ、手が離れて、輪でなくなっていく。
違う手が入ったり、つながれなくなったり・・
振りほどいたり、放さないと思ったり。離さなくてはいけなくなったり。
泣いていた・笑っていた・怒っていた・・
あの子を抱いて、歌って、歩いていたあの頃にはもう戻れない。
私は母親。
子供の成長を望んでいたはず。
自立できるように育てられたかどうかは、これから採点される。
職を失って、路頭に迷って、人を信じられなくなって・・・・
いやいや、そんな未来はいらない。けっして、そうはならない。
強く・強く、生き延びてほしい。
親は、貴方たちより何十年も早く、この地球から逝ってしまうのだから。
出て行く日。笑って見送れるように・・・・・・・