たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

町の本屋さんは? <アマゾン 「買い切り」方式、出版業界に波紋>などを読みながら

2019-03-18 | 企業活動 コンプライアンス 公正取引

190318 町の本屋さんは? <アマゾン 「買い切り」方式、出版業界に波紋>などを読みながら

 

私の趣味と聞かれて、読書といったことは一度もありません。ただ、毎日何かを読んでいるので、まあ嫌いでないことは確かです。といって関東圏で居住・仕事をしていたころ、そうですね30年以上まででしょうか、割合本屋さんを覗くことも多かったと思います。神田で言えば三省堂とか、日本橋では丸善とか、たいてい大きな書店です。結構長時間あちこち見たり、興味のある書籍を立ち読みしたりしていました。当時はよく本も買っていました。やはりタイトルと著者だけでは判断がつかず、手にとって中身をざっと見て、分かったような気がして選んでいたように思います。

 

そうでなくとも、いろんなテーマで並んでいる本棚は、好奇心を高めてくれます。とりわけ大きな書店だと、似たようなテーマでも本の数も多いので、それもいいです。他方で、図書館も好きでして、弁護士会図書館(当時は東京は図書館も3つあり、東弁がダントツに豊富でした)、法務図書館、最高裁図書館、さらには国会図書館など、あちこち言っていた記憶です。

 

当地にやってきたころからは、それまでもっていた書籍をずいぶん処分したこともあり、新たに買うと言うことは滅多にありません。他方で、地元や県立の図書館には借りるために訪れるようになりました。そんなわけで地元の本屋さんを覗くことも年に一度あるかないかといった具合です。

 

たまに本を買う場合も、アマゾンを利用して、だいたい一日か二日くらいで届けてもらっています。そういえば友人が日経の日経小説大賞を受賞したということで購入した書籍もアマゾンを利用しました。便利ですね。本屋さんも車で行けば数分で近いのですが、わざわざ出かける気にならなくなっています。こういう無精ものにはアマゾンはほんと便利です。

 

長い饒舌な私事を述べてしまいました。これからアマゾンが流通革命をさらに推し進めようとしているとき、それがどういう意味を持つのか、私のアマゾン利用状況を指摘して、できるだけバイアスがないようにして、考えてみようかと思います。少なくとも私はアマゾンが出版流通システム特有の制度にどのような影響を与えているかを考えることもなく、これまで利用してきました。ここでは、ここ数日のいくつかの記事を踏まえて、問題定期的に考えてみたいと思います。

 

今朝の毎日記事<アマゾン「買い切り」方式、出版業界に波紋 年内にも導入>は、アマゾンが<出版社から本や雑誌を直接購入し、売れ残っても返品しない「買い切り」方式を年内にも試験導入すると発表した。>と報じています。

 

そしてこの動きが<アマゾンは値下げ販売も検討するとしており、本の価格を維持してきた再販売価格維持制度(再販制度)の形骸化を懸念する声も上がっている。【山口敦雄】>

 

私が独禁法を少し勉強していた45年以上前、著作物の再販価格維持制度は、他の化粧品や医薬品など多くの商品が指定され、法の適用除外となっていました。それぞれそれなりの目的がありましたね。著作物は文化を守るといったことでしょうか。でも今回の記事を読んでいるとある種郵便制度に似たところがありますね。

 

さて記事では<再販制度は、出版社が本の価格決定権を持ち、本の価格を決めて取次会社や書店は、それを守るという契約(再販契約)だ。(1)出版社と取次会社(2)取次会社と書店--の2段階の再販契約を結んでいる。出版文化を守るため、全国どの書店でも同じ価格で本を買えるなど、独占禁止法の適用外として認められている。書店は一定期間が経過した場合、本を返品することができる。>としています。

 

アマゾンのこれまでのネット通販は、この出版社、取次会社、書店の流れを維持しつつ、あくまで一書店(あっという間に日本最大となりましたが)としてやってきました。ですので形の上では再販制度を守ってきたのでしょう。ところがこの買い切り方式では、取次店を外して出版社と直接取引となり、再販制度の前提を崩すことになります。それも超巨大書店ですので、出版社に対して価格交渉を優位に進め値引きも可能ということは目に見えています。

 

それで読者は安く、早く、全国一律の料金で手元に届くということになり、ありがたいと喜ぶばかりでしょうか。

 

出版社は危機感を感じて、アマゾンへの出荷停止をして対抗手段をとっているところもでているようです。

 

他方で、今日付のハーバービジネスオンライン記事<地方に「本が来ない!!」――物流危機で書店業界全体が「危機的状況」に>では、地方、とくに四国・九州の本屋さんは大変な事態になっていることを伝えています。

 

<書店に本が来ない。とにかく届かない。もう発売日から5日が経過したのに一向に来ない――最近そういった声がよく聞かれるようになった。 実は現在、地方において書籍や雑誌が発売されてから書店に届くまでの期間が大幅に伸びており、九州では休日を挟むと「5日前後の遅れ」「ネットで買うより到着が遅い」ということが当たり前となっている。>

 

そもそも<「書籍・雑誌の発売日」>が、出版社が集中する東京を中心に考えられていて、そこで発売する日から地方の書店に届く日を想定して別に決めているそうです。

 

当然輸送コストと日数がかかるわけですが、それは再販制度で全国同一価格が維持されています。<書籍・雑誌の物流は「速さ」よりも全国隅々に確実に安定した商品配送を行うことが優先されている。さらに「全国同一価格」での販売を維持するためには比較的安価な物流手段を採ることも必須だ。>そういったことも再販制度の目的としてあったわけです。

 

そのため四国だと1日遅れ、九州で2日遅れということだったようですが、昨年の西日本豪雨以降、災害による緒交通遮断、さらには運送業などの逼迫で、35日遅れになりつつあるというのです。

 

地方の書店の場合、再販制度で守られてきた一面がありますが、アマゾンなどのネット販売に比べ、配達の遅れが顕著になりつつあります。

 

それだけではありません。

313日付け毎日記事<特集ワイドヘイト本「慣例」が後押し 注文していないのに中小書店に 多く売れば報奨金も/自浄作用働く仕組みを>では、配達の遅れがない大阪で、街の本屋さんに異変が突如、発生したというのです。

 

<民族差別をあおる「ヘイト本」や「日本礼賛本」などを集めた物々しい書棚の存在が、店内の雰囲気を変えてしまったようだ。なぜこんなことに? 【鈴木美穂】>

 

理由は、再販制度の下、取次会社から一方的に送られてきたようです。

<見計らいというのは、こちらが注文もしていないのに配本されることです」>

 

売れる本なら書店に並べようと、書店主の意向も聞かずに行われるようです。

<「この見計らいを通して、ヘイト本やニーズが見込めない何年も前の本が来ることもあるのです。一方、中小の書店には欲しいベストセラー本がなかなか届きません。書店規模などにより、書店のランクが自動的に決まる『ランク配本』という仕組みのためです。>

 

まちの本屋さんが、主体的に自分流の書籍を選ぶことが、当然求められるでしょう。

<基本的に、ヘイト本や日本礼賛本は書店に置かない。客注があれば対応する。書棚に「ヘイトスピーチ」を問うコーナーを作ったり、隣国への理解を深める本をそろえたりして、書店としての意思を示す。置きたくない本は、出版社を明示して取次店にあらかじめ伝える>

 

アマゾンの買い切り方式は、その優位に立った地位を乱用するおそれをしっかり注視する必要があるでしょう。その意味では、<巨大IT企業強要に禁止規定 政府「デジタル下請け法」検討>といったアプローチとはまた異なる視点が必要ではないでしょうか。

 

著作物と再販制度によって成立してきた従来の慣行の問題点を洗い出すとともに、アマゾンのこれまでの手法やこれからの取り組みは、公取委の個別聞き取りから公聴会といったさまざまな手法でオープンで公正におこなってもらいたいと思うのです

 

これから会議があり、中途半端ですが、これにておしまい。また明日。