161114 小池知事について(その1) 豊洲問題のある見方
最近は、日本各地で、また世界各国で、トップの言動が話題となっています。その中で、博多駅前で起こった道路陥没の早期復旧工事について、福岡市長による既成秩序を打ち破るような大胆な施策と意気込みが、関係者の賛同を得て実現したかの報道もありました。
トップの采配で、これまでの行政実務が大きく変わることはこれまでもありました。で、小池都知事誕生以来、「小池劇場」と称されて、その施策の是非については賛否両論があるようですが、民意はどちらかというと賛意を表しているように思えます。
私自身は、豊洲移転問題、五輪施設や費用問題、広尾病院移設問題など、多少報道で知る限りで、報告書その他資料を読んでいないので、表面的な意見しか持ち得ていませんが、少し議論の鉾先を変えてみたい思いで、今日は書いてみようかと思っています。
ちょうど朝から雨で、枝打ちは滑るので危ないから、こういう貯まっている頭の整理もいいのかなと思ったりしています。
豊洲問題というか、臨海副都心構想は、80年代に港湾局が中心になって、共同溝など未来的なインフラ整備をして、500ha弱くらいの広大な面積を、巨大副都心とする計画で、私も都市構造のあり方を研究する意味で、まだ有楽町にあった港湾局を訪ねたり、現場を訪れたりしていたことがあります。それはバブル経済が終わり、世界博構想が青島知事で撤回される頃には、ほとんど閑古鳥が鳴く状態になっていたのではないでしょうか。
とはいえ、私は、当時カヤックで荒川を下り、東京湾に出て、台場やベイブレッジの建設予定地のある東京港をゆらりゆられて周遊していました。70年代に比べ、海や川の水質が格段によくなり、中村郁夫氏が東京湾の水中に生きる生物の豊かさを写真で紹介し、次第に脚光を浴びるのはそんなに遠い時代ではないという思いもありました。
しかしながら、他方で、土壌汚染の問題は有効な解決策を見いだしていなかった時代でした。東京都内、河川周辺や東京港周辺は、工場が林立し、その移転後には、土壌汚染が深刻な状態でした。アメリでは、78年にナイアガラ滝の少し上流で、有害化学物質が大量放棄され周辺に大量の健康被害が発生し、カーター大統領が戒厳令を発し、そしてあの有名なスーパーファンド法が成立し、以降、数々の土壌汚染対策法が強化されていきました。
わが国でも類似の事件が、70年代に発生しました。その一つは東京都が73年に日本化学工業から購入した工場跡地、地下鉄・市街地再開発事業として購入した大量の土地にクロム鉱滓が発覚し、損害賠償訴訟となり、一定の浄化対策を前提とする和解解決をしたのです。それは当時、わが国には土壌汚染対策法がなく、緊急措置として成立したのが廃棄物処理法の共同命令という形で、処分場について一定の構造規制をしたに止まっていたからです。
そのため浄化対策も、まるで豊洲問題のように、各種専門家が入って多くの会議を開いて協議しましたが、結局、費用のかからない、現地処理になりました。実際の浄化方法は極めて杜撰で、後に公園等を造成しましたが、子どもの遊んでいるそばで、有毒な六価クロムの排出水が検出されるようになり、新たな住民訴訟となって長い紛争となりました。
東京都は、トップクラスの専門家に依頼して土壌汚染対策を検討することはできます。しかし、本来は汚染土壌を移設して浄化して別の安全なところで封じ込めが必要ですが、費用的な面や受入る場所がないことから、現実には現地処理が選択されるのが通常でしょう。具体的な浄化手法については、適切な監視とモニタリングが不可欠です。
汚染土壌の浄化については法的規制が整備(あるいは強化)されていない段階でなされたものと思われます。完成前に法施行されて、新に対応しないといけなくなった部分は想定外だったかもしれません。
ここで私が指摘しておきたいとおもっていることは、法的な側面です。盛土は、一般の土地利用からすると、都市計画法の開発行為に形式的には該当するので、開発許可を得る必要があります。また、築地市場施設の建築は建築基準法の建築確認が必要です。これらは特区なり、特別措置が講じられている可能性があるので、それは別途検討が必要です。
仮に上記の2つの法規制が必要な場合、多くの巨大建築物・工作物で問題となる、上物と地盤の規制の空白があり得るということです。どういうことかというと、地盤の盛土を完成し、検査の上、開発許可基準に該当するといった机上の論理が通用しないのです。上物である施設は、軟弱地盤ですから、地下何十mに達する杭基礎でしょう。つまり施設自体の建築を基礎からする場合、盛土を完成した後にやることは現実的ではないのです。そのため開発許可と建築確認の各担当者は、盛土工事の途中で、建築工事に入ることを認めたり、あるいは基礎部分は開発行為の対象から除外する取扱をしています。
これらは縦割り式のそれぞれが適切な情報交換の場を設けて検討していれば、たとえば盛土をするのか、しないのかといった問題は、議論の場で検討され、記録として残されるはずです。
さらにいえば、環境アセスメントです。東京都の環境アセスは、計画段階のアセスや代替案を入れるなど、いわゆる戦略的環境アセスに類するものに近い、最先端の条例の一つといってよいかもしれません。しかしながら、わが国の環境アセスの基本的な問題点を残しているため、それは市民のための制度とはほど遠い内容となっています。
たしかに環境アセスが実施され、問題なしとされて、土壌浄化や施設建設が行われたのだと思いますが、いったいどれほどの都民がこの情報にアクセスできたでしょうか。また、工事が長期化する場合や大きな変化があれば、新たなアセスが必要というべきですが、そのような措置は法的に担保されていません。
これから出かけるので、中途ですが、とりあえず終えます。
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