170909 子の監護養育と司法強化 <法制審議会離婚した夫婦間、子の引き渡し「間接強制」>を読んで
山の成り立ちを藤岡換太郎著「山はどうしてできるのか」などを読みながら学んでいたら、海溝、海山に少々惹かれることになりました。そしてグーグル・アースを見ていると、最近は解像度がだいぶよくなったので海底も少しずつその形状が見えてきました。地上の山岳風景以上とも思える海底の様子はダイナミズムですね。
とくにグーグル・アースで、日本列島に4枚のプレートが衝突し合って、海溝やトラフに沈み込むという理論が、形状として理解できますね。わくわくするような、でもこのさきどうなるのだろうというのは誰もわからない、ま、人間の歴史程度の期間の範疇を超えているのでしょうから、それはそれでよいのでしょうか。
興味深いのはハワイから連なっている<天皇海山群>です。だれが命名したのでしょう。選ばれた天皇名も統一性があるとは思えないですね。神武とかないのに、皇后の神功があったり、ほとんど知られていない?孝光天皇があったり、大覚寺なんて(嵯峨天皇をイメージ?)天皇と関係ない名称があったり、また海山成立期の順序と天皇の即位順ともまったく関係ない、不思議な名付けです。ま、これはご愛敬なんでしょうか。
それにしても日本列島、離れたり、くっついたり、いろいろあって、ようやく現在の形になったようですが、それもプレートとプルームという地球の持続的な活動で、今後は離れる可能性もあるのでしょうか。
私たちがよって立つ、足下ですら、いつかはどうなるかわからないのが地球という自然の力なのでしょうか。人間の世界で、男女が夫婦となったり、別れたり、生まれた子どもをめぐって争うのも、自然が人間に精神という高度な能力を与えてくれたからなのでしょうか。
子どもをめぐるこういった紛争も噴火のように爆発的な事態になっても、いずれは沈静化し、安定し、それなりの状態で暮らしていくことが多くの親子ではないかと思うのです。
それでも、紛争が激化し、家族だけで解決できないとき、司法が解決策を提供することを求めるのが近代国家の基本ですね。そして戦後日本は西欧化が進み、離婚も、子をめぐる紛争もどんどん増えて、その裁判も増加傾向ではないかと思います。
ところがこれまで、司法は裁判で一定の解決策を提示できても、その審判なり、調停結果なりを実効する制度が十分ではなかったため、裁判と現実の乖離が残り、不正義状態が結構指摘されてきました。
子と同居している親と異なる親が親権を認められても、その子の引渡を求める執行手続きが適切に整備されていなかったため、同居親が拒んだとき、子の引渡を実現させることは容易でなかったと思います。
また、養育費や慰謝料などが審判等で認められても、支払い義務のある親が財産を隠したり、勤務先を変えてわからなくして、結局、審判等が絵に描いた餅になってしまい、泣き寝入りをしている親子もかなりの割合を占めてきたと思います。
見出しの毎日朝刊記事は、法制審議会でその解決策を中間試案として発表したというのです。これは民事執行法部会のもので、民事執行法の改正を提案するものです。
まず子の引渡については、従前規定がなく、動産の執行規定を類推していたのを、ハーグ条約の規定を受け子の心身への影響を配慮する制度化を提案しています。
<親権者に子を引き渡すまで同居の親に毎日一定の制裁金を科す「間接強制」が確定した日から2週間が経過し、原則として同居の親と子が自宅に一緒にいる場合に限って、裁判所の執行官による直接的な強制執行が可能になるとした。>
間接強制は引き渡さない場合の制裁金ですからわかりやすいですね。でも実際の引渡となると、私も不動産の引渡の経験はなんどもありますが、お子さんはありません。ではどうするか。法務省の<民事執行法の改正に関する中間試案のたたき台>という発表前のものですが(発表自体まだアップされていないようです)、あまり変わらないと思われますので、これを参考にします。
その執行の仕方については次のように規定しています。少し長いですが引用します。
(1)執行官は,債務者による子の監護を解くために必要な行為として,債務者に対し説得を行うほか,債務者の住居その他債務者の占有する場所において,次に掲げる行為をすることができるものとする。
ア 債務者の住居その他債務者の占有する場所に立ち入り,その場所において子を捜索すること。この場合において,必要があるときは,閉鎖した戸を開くため必要な処分をすること。
(省略)
⑵ 執行官は,債務者の住居その他債務者の占有する場所以外の場所において,省略)⑴アからウまでに掲げる行為をすることができるものとする。
⑶ 執行官は,⑴又は⑵の規定による子の監護を解くために必要な行為をするに際し抵抗を受けるときは,その抵抗を排除するために,威力を用い,又は警察上の援助を求めることができるものとする。
⑷ 執行官は,⑶の規定にかかわらず,子に対して威力を用いることはできないものとする。子以外の者に対して威力を用いることが子の心身に有害な影響を及ぼすおそれがある場合においては,当該子以外の者についても,同様とするものとする。
(省略)
結構、執行官には権限が与えられていますが、基本は、不動産や動産執行の場合と同じでしょうか。ただ、子どもの心身への影響に配慮している点が異なるのですが、具体的な方法は今後さらに検討される必要があるでしょう。
養育費などの請求権の実効性確保手段が充実しています。これは養育費に限らずすべての債権に適用されますが、とりわけ養育費の支払いを受けられないで困っている、とくに母親には改正されれば大きな前進になり期待できると思います。
まず、財産開示制度をより実効性が高まるように、陳述期日の欠席や虚偽陳述などに罰則を強化するものです。
次の金融機関や税務署などに対する開示義務は相当効果があると思います。
<裁判所が、金融機関には預貯金口座の有無や残高を、税務署や自治体には債務者の勤務先の名前や所在地を照会できるようにする内容だ。>
たたき台ではこの点、つぎのように規定しています。
ア 金融機関から,債務者の預貯金債権に関する情報を取得する制度を設けるものとする。この場合に取得すべき情報の範囲については,債務者が当該金融機関に対して有する預貯金債権の有無のほか,その預貯金債権に対する差押命令の申立てをするのに必要となる事項(取扱店舗,預貯金債権の種類及び額等)とするものとする。
イ 一定の公的機関から,債務者の給与債権に関する情報(勤務先の名称及び所在地)を取得する制度を設けるものとする。
これらはいままでになかった新制度で、裁判を絵に描いた餅ではなく、黄門さんの印籠より?合理的かつ実践的な機能を果たすことになり得ると思います。
ただ、こういった第三者情報を取得するための要件が用意されていて、この内容をどう詰めるかによっては使いにくいものになるかもしれません。この部分は引用しませんが、関心のある方は上記の「たたき台」を見てください。
一時間が過ぎましたので、今日はこの辺で終わりとします。
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