180618 学校の塀と安全 <3.5mの塀倒れ、9歳女児犠牲>を読みながら
朝、ぐらっと家が揺れました。これは少し大きなと思いつつも、すぐに揺れが収まり、TVの情報を確認すると、大阪北部でマグニチュード6弱で、他は5以下でした。和歌山は3強でしたか、体感と同じくらいでした。
それから事務所に向かったものの、裁判所はこの地震で期日が流れ、別の仕事をしていたら、PCのネット接続が突然、停止して、そのため復旧作業というか、事業者に連絡して相談しながら悪戦苦闘1時間くらいですか、なんとか復旧できました。窓口担当の女性が丁寧に対応してくれるのはいいのですが、不慣れなお年寄り(私もそう感じられたか)には親切でよろしいと思われます。しかし、少し対応が間延びした感じで、結局、なんどか誰かに相談したものの解決策が見つからず、結局、メーカーに連絡して事なきを得たのです。ま、私が早く気づけば良かったのですが。
さて、ネットを再開したら、地震による犠牲者速報が流れていました。地震の規模というより、地盤やその上の構造物に問題があると危険が現実化しやすいのではと思い、その記事の写真を見ながら、よくこんなブロック塀が通学路で、小学校のプールの横に築造されたものだと、驚きでした。
朝日新聞配信記事<3.5mの塀倒れ、9歳女児犠牲…情報に大阪府庁舎緊迫>には、動画もあり、25m屋外プール施設があり、プールと道路を仕切るように、築造されていたブロック塀が見事に道路側に倒れていました。その長さが40mくらいとのこと。犠牲者がひとりだったのが不思議なくらいです。もちろん小⑷の女子生徒さんにとっては通学途中で避けられない気の毒な災難でした。ご両親やご家族もとてもつらいでしょう。
記事では< 大阪府北部を震源とする地震で、大阪府高槻市栄町3丁目の市立寿栄小学校では、同小4年の三宅璃奈さん(9)=高槻市川添1丁目=が亡くなった。午前9時4分に死亡が確認された。府警によると、小学校のプールサイドの塀が倒れて下敷きになったという。>とあり、その塀については<高槻市によると、倒れたのはプールサイドの塀(高さ3・5メートル)のブロック塀の部分(高さ1・6メートル)で、延長約40メートルにわたって倒壊した。>とあります。
ところで、この写真を見て、通学路の真上、真横に、コンクリート擁壁の上に、高いブロック塀を築造したばかりか、なぜ長い間放置されてきたのかと思うのです。
記事では、プールサイドの塀の高さが3.5mで、おそらくコンクリート擁壁部分が高さ1.9mで、その上にブロック塀部分の高さが1.6mということだと思われます。
写真を見ると、ブロック塀は7段積みで、縦筋の鉄筋が間欠的に入っているようですが、横筋については入っていないように見えます。しかし、長さ40m、しかも高さが1.6もあるブロック塀をコンクリート擁壁の上に設置すること自体、とても危険ではないかと思うのですが、これまで危険視する保護者などもいたと思われます。学校自体、どのように安全性を検討してきたのでしょうか。
むろん今回の地震は相当な規模であったことは確かで、その大きな揺れに耐えられなかったことはコンクリート擁壁に入っている亀裂の跡からもうかがえます。しかし、当該地域がM6弱の揺れがあったとしても、通常は想定範囲内だと思います。
では法令はどうなっているのでしょう。少し調べてみました。
こういったブロック塀は、建築基準法施行令では「補強コンクリートブロック造」と呼ばれていて、同施行令で、高さ1.2mを超えるものについては、次の要件を満たす必要があります。
<1.高さは2.2m以下とすること。
2.塀の厚さは、15cm(高さ2m以下の塀にあっては、10cm)以上とする。
3.壁頂及び基礎には横に、塀の端部及び隅角部には縦に、それぞれ径9mm以上の鉄筋を配置すること。
4.壁内には、径9mm以上に鉄筋を縦横に80cm以下の間隔で配置すること。
5.長さ3.4m以下ごとに、径9mm以上の鉄筋を配置した控壁で基礎の部分において壁面から高さの1/5以上突出したものを設けること。
6.第三号及び第四号の規定により配置する鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、縦筋にあっては壁頂及び基礎の横筋に横筋に あってはこれらの縦筋に、それぞれかぎ掛けして定着すること。
ただし、縦筋をその径の40倍以上基礎に定着させる場合にあっては縦筋の末端は、基礎の 横筋にかぎ掛けしないことができる。
7. 基礎の丈は35cm以上とし、根入れの深さは30cm以上とすること。>
2号の塀の厚さ15cmについては、記事では触れられていないので、判断できません。ただ、3号の壁頂や、⑷号の壁内への縦、横への鉄筋配置については、写真を見る限り、横筋にはないようにみえるのです。
5号の控壁は写真からは見当たりません。
その他の要件も少し調査すれば、ちゃんと具備しているかどうかわかるはずです。
この法令とは別に、<ブロック・エクステリアに関わる基準(日本建築学会基準)>は、学校のような公共建築物ではとくに適合することが必要ではないかと思うのです。
その中で、注目すべき事項は、<擁壁上のブロック塀>で、本件事故の場合に該当すると考えますが、その場合の基準は<高さ1m以上の擁壁上ブロック塀は1.2m以下とする。高さ1m以下の擁壁上ブロック塀は擁壁下部地盤よりの高さ2.2m以下とする。>となっています。
記事で指摘されているブロック塀の高さは1.6mで、これを大幅にオーバーしています。私がこのブロック塀を事故前に見ていれば、とても危険だと思いますし、その真下を通学路にしていることもとても不安になっていたと思います。
1978年の宮城県沖地震では、ブロック塀の倒壊で大勢の死者が出た悲惨な歴史があります。そのため、ブロック塀の規制強化や、その設置にある程度歯止めがかかったのではないかと思っていましたが、学校プールの塀に使われるとは残念な思いです。
たしかに、道路からの視線を遮る効果や、高さ1.9mもある擁壁からの転落防止措置として、塀を設置すること自体、必要性は理解します。しかし、ブロック塀以外の方法があったのではないかと思うのです。
高さ1.9mのコンクリート擁壁は、プール施設の外壁としての役割もあったのかもしれません。その構造計算はしっかりされ、施工も安全性を担保したものだったと思われます。しかし、その上のブロック塀は、道路上に設置する場合でも危険なのに、擁壁上に設置するのですから、どのように安全性を検討したのか伺いたいものです。擁壁と同様に構造計算をしたのでしょうか疑問です。
78年以前に設置されていたとしても、耐震対策の必要が叫ばれ、校舎については多くが耐震工事が行われてきたと思うのです。しかし、通学路に面するこのブロック塀に注意が払われなかったとしたら、いったいどのように学校の安全性に注意を払ってきたのか問われるのではないでしょうか。
今回のような悲しい事故が起こらないよう、原因究明をしっかり行うと同時に、各地の学校を含む公共建築物では改めて注意を払ってもらいたいものです。
今日はこれにておしまい。また明日。
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