180131 コスタリカの悲哀 <NHKBS トカゲ王国コスタリカ>を見てふと思う
昨日は終日、風邪のせいか朦朧とした状態で、寝床で冴えた?頭の働きだけが残っているという錯覚の中にいました。ようやく今朝は回復して青空を気持ちよく迎えることができました。
毎日朝刊をみると、厚労省発表の<受動喫煙対策案 屋内禁煙「骨抜き」>、それに加えて小池都知事も政府の後退に整合性を合わすような後ろ向き姿勢となっていて、識者が指摘している原則喫煙の状態を維持するシニカルな批判もごもっともと言いたくなります。
こういう自民党政権の対応は、アメリカで90年代に全米各地で起こった、喫煙や受動喫煙による医療費増加の負担分を州政府がタバコ業者に請求する訴訟しか、有効な方法がないかもしれないと思ってしまいます。わが国の法制上、地方自治体にそのような請求が可能か疑問ですが、保険料システムの改訂を求める訴訟、あるいは受動喫煙被害者には追求できませんので、喫煙者に対する治療費負担の増大など、改めて検討し見てもいいのではと考えたくなります。
ま、こういう対処は一つの手法ですが、喫煙者も受動喫煙で被害を受ける人も、だれもが一定の線で納得できる、道筋を公開の場その他多様な機会を通じて、実践的に協議する機会を増やすことが大事かなとは思います。
農家や林業者は、自然豊かなところで、一服に極上の憩いを感じてきたのは、長い歴史もあり、尊重されてしかるべきことに、あまり異論はないでしょうね。私がとりあげる大畑才蔵も、農作業の極めてきつい作業を続ける一つの考え方として、この畝を最後までやったら、一服できることを考えてやれば能率も上がるといったことまで書いています。
主題と関係のない今朝の記事からつい脱線してしまいました。本題に入りたいと思います。
一昨日のNHKBSプレミアムで<ワイルドライフ▽中米コスタリカ イグアナVSバシリスク トカゲ王国を生き残れ!>を見ました。
内容は次の通りです。
<中米・コスタリカはトカゲ王国。70種以上のトカゲがすむ。この地に君臨するのが、全長80センチに達する肉食のトカゲ、バシリスク。性質はどう猛で、鳥や他のトカゲまで襲って食べる。しかし、この王国で最も成功しているのは「草食」という独特の食生活を選んだグリーンイグアナだ。無尽蔵の食料と2メートルの巨体を武器に、中南米の広範囲に分布を広げた。バシリスクとイグアナ。対照的な2種のトカゲの息づまる攻防を追う。>
私も日弁連調査の生態系管理制度を学ぶ目的で2000年のはじめ頃に、コスタリカを訪問し、イグアナも、バシリスクも、さまざまな生物とともに見る機会がありました。
コスタリカは、軍隊の持たない平和国家とか、教育熱心な国家とか、そして生態系管理の先端的な国家とか、さまざまな指摘がなされてきたことで、当時私も訪問したい国でした。
主目的は、生態系のそれぞれのゾーンに応じた管理手法を整備していて、その内容を各地の管理事務所を訪問して現地調査をかねて管理方法を聞き取るものでした。そして環境大臣とのヒアリングで全体としての法整備も調査したのです。
もう一昔前の話で、その調査結果はすっかり忘れてしまいましたが、この放映を見ながら、いくつかの出来事を思い出しました。
たしかにイグアナはどこにでもいて、身近に感じることができました。また、バシリスクもたしか一匹だけでしたか見ることができ、近づくとあの忍者走り?番組では「水面走り」とかいってましたか、これをやってのけてくれました。その走りから愛嬌さを感じさせてくれました。
そこは観光客目的の船上ツアーで保護地区内の河畔林が生い茂った川を上ったり下ったり(といってもあまり勾配がなく緩やかな流れ)するものでした。これは調査目的と言うより観光的ものでした。日弁連調査は、メンバーは全員自己負担で参加しますので、ま、観光目的でといった批判は当たらないと思います。だいたい、調査内容は朝から晩まで次々と会議が目白押しで、そのヒアリング結果は報告担当者が報告書にあげますので、よくあるコンサルが企画して報告書をまとめるような、問題になった議員の調査旅行とはまったく異質物です。とはいえ、息抜きに、こういうツアーも用意されているのです。
さて、私がここで取りあげた目的の一つは、こういった観光では、生態系の実態をほとんど把握できないことがよくわかりました。ある意味では生態系の実態は、専門家による地道な長期間にわたる観察、それは何ヶ月単位というより、何年、何十年単位の調査が必要ですね。
それは番組で紹介されたバシリスクの水面走りは、ハンターであるワニなどのから攻撃を巧みにかわす生きる知恵というか能力なのだということがよくわかります。また、小さなバシリスクは肉食で、大きなイグアナは草食ということで、あまり接点がないのかと、当時は思っていました(もしかしたらツアー解説があったのかもしれませんが見ることに熱中していたので聞き漏らしただけ?)。しかし、NHK取材班の見事な撮影は、バシリスクがその得意な走りで、イグアナの赤子を襲う様子をとらえていましたが、ハンターでもあることがわかりました。その素早い動きと飲み込んだ表情は、私たちが川の中に水没している枯れ木の枝でひなたぼっこでもしているかのような茫洋とした、のんきな表情とはまったく異なる物でした。それが弱肉強食の世界を生きる姿の実態かと改めて思いました。
観光で楽しめるのは、かれら生命体のほんの一瞬の姿であり、そんなものだとわかっていても、NHKの放送を見ると、そのために相当な費用をかけて楽しむ意味がどこにあるのか、ふと考えてしまいます。むろん灼熱の大地、さまざまな生き物の声や臭い、ワニが身近に生息している多少の恐怖感などは実体験しないとわかりません。観光と生態系の実態を意識しつつ楽しむのでしょうか。
なかなか本論に入れず、前置きが長くなりました。
では、コスタリカは様々な理想的な価値を実現する先端的な国家として理想的な国づくりをしているといえるか、それが主題です。
日弁連の調査目的は、そういった国家のあり方についてまで対象としていませんので、これから先は私が見聞したコスタリカの一つの側面からの感慨です。
最初に驚いたのは、飛行機から首都、サンホセ(San José)に近づいたとき、見事に豊かな森が広がる中、目前に見えてきたものはまったく異質の物でした。トタン葺きの簡易な建物が延々と続くのです。首都の少し郊外に当たりますが、それは多くの人がこういった難民キャンプ並の生活環境で生活をしていることを感じさせるに十分でした。
首都サンホセは、人口30万余ですから、和歌山市くらいでしょうか。古くから発展した街ですので、スペイン時代の建物が相当残っていて、近代的な建物はさほど多くない印象でした。
最高裁判所など官邸のある一帯はよく整備されていますが、ちょっと町中に入ると混雑した雑多な印象のまちなみです。とりわけ多くの人の足は、バスですが、たぶん郊外から通っているのでしょう、首都圏並みの混雑と交通計画がうまく機能していない印象を感じました。広大な面積でわずか30万人の人口にしては、観光客の数を考えても、その交通渋滞は交通コントロールができているとはいえませんでした。
で、驚いたもう一つは、たしかにコスタリカは観光立国です。生態系や遺伝子研究など先端的な研究も評判です。しかし、いずれも主体として担っている、あるいは利用しているのはアメリカ人ではないかと思うのです。コスタリカ人の住居の多くは古い様式です。ガイドが日本人で、私と気さくになり、私一人彼の家に案内されましたが、コスタリカ様式の住宅で、ちょっと記憶があいまいですが(写真がでてくればもう少し思い出すかも?)、質素な印象でした。それが普通のコスタリカ人の生活環境ではないかと思うのです。
ところが、私たちが宿泊したホテルはいずれも高級リゾート施設のように(私レベルの基準ですが)、とてもデラックスで、食事もサービスも、すべてアメリカ方式です。朝食のときにレストランに行くと、私たち以外はほとんどがアメリカ人という印象を受けました。
コスタリカ人がそういったホテルを利用することもあるのかもしれませんが、彼ら彼女たちの日常風景を見ていたり、住居をみていると、とてもそういう高級施設を利用する状態にはないような印象を感じました。
わが国では、さまざまな宿泊施設があり、昔から民宿もさらにはビジネスホテルもありますし、最近では民泊施設もありますから、それぞれの経済状態に応じて宿泊施設を利用するでしょうけど、ときには奮発して高級ホテルに泊まることもあるでしょう。そういう状況は、一瞥したコスタリカの世界では感じられませんでした。
イグアナを含むトカゲ王国として、いや私たちが見聞した盛りだくさんの生態(名前は多すぎて写真でも見ないと思い出さない・・・と弁解しておきます)はたしかにすばらしいものですが、その価値を享受しているのは、アメリカ人など外国観光客ではないかと思います。
そこには格差を是正する施策が、アメリカ資本の影響でうまくいっていないのではないかと感じていますが、その裏付けもありません。それが2000年代初頭に感じたものですが、いまもそれほど大きな変化がないのではと思っています。
で、最後に余分な一言、同じように生態系が多様で観光立国に加えて工場立国にも転換してめざましい経済発展を遂げたマレーシアに新しい動きが出ていますね。その立役者であったマハティール元首相が92歳の高齢にもかかわらず、現政権に対抗して首相に返り咲きを目指しているというのです。これは国のあり方の問題ですが、同時に、高齢者も日々の精進?で90代になっても新たな意欲を発揮できる、健康維持の見本かなと思って取りあげてみました。記事は<マレーシア政界復帰のマハティール氏 92歳、愛弟子を糾弾 ナジブ首相に疑惑>
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