170412 決算発表のあり方 <東芝決算、監査意見なし 上場廃止基準該当も>を読んで
今朝も少し冷え込んだのか、昨日の疲れが残ったのか、目覚めが悪く6時近くに起きました。でもスギ・ヒノキや華やいだ木々の間を野鳥が歌声を高らかに鳴り響かせて飛び回っているのを見ると、すぐに気分がよくなります。ちっちっと甲高くなく声を聞いて、またシジュウカラかしらと思いつつ、ちょっと違うなと思いながら、わが家の小さな木の方に目をやると、黒い帽子にえび茶の服を来たようなヤマガラでした。さっと勢いよく飛んで言ってしまいましたが、うれしいお客さんです。
ちょっとしてウォールデンの森の主にでもなった気分にさせてくれます。ヘンリー・ソローは仕事らしい仕事をせず、まるで方丈記の鴨長明のような生活ですが、私にはまだまだその域に達する見込みがありません。でも気持ち次第かもしれません。ソローがウォールデンの森に住んだのはたしか30代初めくらいではなかったかとの記憶です。
それはともかく、今日も、先ほど来客が帰り、ようやくブログに取りかかろうと思うともう7時近くになっています。これから1時間でなにを書くか、はじめは7歳児の交通事故リスクをNHKの朝番組で取り上げていたので、これにしようかと思いつつ、見出しの東芝決算発表は、これまで東芝問題をなんどか取り上げてきていることもあり、節目的な意味合いもあるので、こちらに変更します。
毎日記事では、東芝の決算発表が2回も延期になった後、上場廃止になる直前に、<監査法人から「決算内容は適正」との意見を得られないまま異例の発表に踏み切った。>ことを報じています。
そして興味深いのは、淡々とした報道の中に、<社長「調査継続 意味ない」 一問一答>を丁寧に記事にしています。この一問一答こそ、東芝の、社長のみならず経営体自体が、アカウンタビリティーを欠落していることを明白に示している、それを毎日記事は証明してくれています。
なぜ決算発表が遅れたのか、監査法人との意見の違いとそれに対する具体的な説明を一切していません。これが巨額赤字を長い間放置してきた大企業の責任者がとる姿勢として信頼を得るものといえるのでしょうか。従業員数が一年前の段階で連結で19万人弱という大勢を雇用してきた、いや関連会社や取引先を入れれば膨大な数になるでしょう。そのトップのとる態度でしょうか。
ウェスチングハウス(WH)の問題は何度も取り上げているので、ここではその企業の体質や能力について指摘しません。ただ、異なる観点で、アメリカ企業というか金融・経済・会計と大統領選といったものについて少し言及してみたいと思います。
昨年の大統領選では、多くの若者が民主党の中でクリントン氏に反旗を翻し、ラストベルト地帯などの白人労働者層がトランプ氏を熱烈に支持していました。その両者ともにウォール街への強い敵意があったように思えます。2000年代の住宅バブルでは、あのサブプライムローンなどを中心に信用のない債務が膨大に膨らみ、そしてバブルがはじけ、多くの失業者、破綻者がでる一方で、リーマンブラザーズのように企業倒産したのはウォール街では一部に過ぎず、ほとんどは救済され、再びトランプ人気にあやかって株式バブルが今のところ続いています。
なにが問題かです。アメリカの会計基準は厳格で監査法人の審査も厳しいと言われ、証券市場もSECが厳しい摘発を繰り返しいるとされています。しかしながら、サブプライムローンといった返すあてもない借り手にどんどん貸し出し、焦げ付くのが予想できるのに、そういったくず債権を膨大に保有する企業や投資銀行に、AAAといった評価をしてきたのは著名格付け会社です。ウォール街を構成するメンバーがバブルを生み出し、バブルがはじけてもそれを予想してデリバティブの保険をかけ、生き抜いている、それがウォール街の主要なメンバーではないでしょうか。そして共和党政権であろうが、民主党政権であろうが、常にゴールドマン・サックスなどのCEOが閣僚など政府の主要なメンバーになり、政財軍官のチームとして好き放題やってきた一面をぬぐい去ることが出来ないように思うのです。これは一面的な見方かもしれません。でも昨年の大統領選で示された民主的な意見の根底にあるのは、現行制度の偽善的な実態ではないかと思うのです。
私のこの意見の基礎は、チャールズ・ファーガソン著『強欲の帝国 ウォール街に乗っ取られたアメリカ』によるものです(といいたいところですが、なかなか読み切れずいつも途中で寝てしまっている状態です、中身はとてもおもしろいのですが、疲れに勝てない状況です)。
換言すれば、いかに制度がしっかりできていても、それを使うのは人間です。人が勝手気ままにして、それが通ってしまう世界、それがアメリカの一面でしょう。トランプ氏のあの無軌道な発言もありなんでしょう。まだ表に出ているだけ、ましかもしれません。平気でルールを破る偽善者、それ以上に確信犯的な悪の履行者かもしれません。その点、松井知事が小学校設立認可にあたって申請者の申請内容を語るのに性善説で見るという、型にはまった行政マンのような言い訳ですむ世界とはまったく異次元の世界だと思います。
それがアメリカの実業界、政治の世界ではないでしょうか。そうだとすると、WHのいい加減な会計処理、とりわけ原発工事の遅れをめぐる損害を相争う相手企業を0円で買収するといった手法は、よほどの会計処理にたけている人(チームとしての会計法人)であっても、とりわけ過去30年以上も経験のない原発工事の会計処理ですから困難きわまりないはずですので、要は不審きわまりないわけで、それを解明しないまま、放置する東芝の対応はとても信頼に値しないです。
なお、<東芝の監査委員会委員長を務める佐藤良二取締役も「東芝とWHは海外原子力事業の買収に伴う損失の調査を真摯に実施した。60万通のメールの確認、役員や従業員へのヒアリングを実施した。調査の過程で一部経営者から不適切なプレッシャーとみなされた言動はあったが、財務諸表への影響はなかった。我々とWHの内部統制は有効に機能している」>とのことですが、この説明は外形的な内容につきており、内容はないといっていいものです。それが責任ある監査委員でしょうか。監査委員の責任も問われることになるように思われます。
いかに厳格なアメリカの会計基準であっても、それを無視する企業経営者がいて、その企業実体を高く評価する格付け会社があり、それを信頼して世界各地の金融機関や年金基金が買いまくったのはつい最近の事です。そして会計基準をまったく無視した事業が名門企業、大企業として存立できていたわけです。
そうだとすると、東芝の不正会計処理の事件の際に、第三者委員会が調査した内容もまた、ある意味で外形的なものにすぎず、むろん原発事業をあえて対象外にしつつ、それ以外の事業もきちんと精査したか、疑念が残ります。
このように東芝の再生を願う一人としては(そういえば最近、東芝の家電を買いました)、綱川社長の説明は、はなはだ将来への見通しを暗くするものです。大いに猛省していただきたい。
そろそろ一時間です。今日はこれでおしまいです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます