たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

原子力事業を考える その1 海外投資2つの例から

2017-01-17 | 原子力・エネルギー・地球環境

170117 原子力事業を考える その1 海外投資2つの例から

 

今朝も凍てつく寒さかと思いきや、意外と穏やかな?寒さかな。それは澄み切って晴れ渡っています。こんなときは関東だと、突然、富士山が見えるというのに嬉しさを感じたりします。今朝の毎日だと、308km離れた福島県川俣町と飯舘村の花塚山から富士山をとらえたそうです。富士山への視認の北限ですって。すごいですね。関西方面だとあまりそういう話題を聞かない印象を受けますが、遮断壁があるんでしょうかね。

 

西行法師の富士山を歌ったあの著名な和歌は、そんな軽い富士山への思いを超えて、孤高の人として生き抜く気高さを感じさせてくれます。

 

風になびく富士の煙の空に消えて

ゆくへもしらぬわが思ひかな

 

さて今日は、原子力事業について、今朝の毎日記事を見ながら、少し荷が重いと思いつつ、少しずつ書き始めていこうかと思っています。とりあえず2つのテーマ、一つはフランス・ニューアレバ社への三菱重工等による投資に係わる問題と、もう一つは東芝子会社・ウェスチングハウス社(WHC社)によるS&W社買収をめぐる問題です。前者は原子力事業における使用済み核燃料の再処理、さらにいえば処分を含めた処理の行方、後者は原発の開発・設計・施工における問題ということで、原子力事業の出発点と終着点それぞれが行き詰まっているようにもみえる状況を感じています。また、日本企業の統御力に疑問を投げかける問題と思っています。

 

さて、毎日の今朝の記事は、<もんじゅ廃炉 高速炉の行方 サイクル、幕引く好機>とのタイトルで、世界最大の原子力複合企業としてビジネス展開してきたアレバ社の苦悩する現状を現地取材したものです。

 

同社は、福島第1原発事故による原発市場の停滞や、新型原子炉の建設遅れにより、巨額の負債を抱え、仏政府が救済策として、「核燃料部門(ニューアレバ)」と「原子炉部門(アレバNP)」に分割し、NPを仏電力公社(EDF)に売却することを一昨年6月に方針決定したとのことです。

 

「ニューアレバには負債が残り、今後30億ユーロ(約3700億円)の増資が必要だという。同社と関係の深い三菱重工業と日本原燃が出資する方向で検討している」ということで、巨額の負債を抱え見通しが見えない、核燃料部門を引き受けたニューアレバ社を、わが国企業がその支援のために莫大な額の出資をすることになりそうな状況は、不可思議としか思えません。

 

昨年末、高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉を正式に決定した日本ですが、同時に、政府は今なお「核燃料サイクル」の夢を国策として描き、その手段として「フランスとの高速炉共同開発」を進めようとしています。日本企業によるニューアレバ社救済出資がその布石だとすると、ますます採算性や安全性に疑問を感じてしまいます。

 

しかし、仏政府は、核燃料サイクルに必要な高速炉の廃炉を98年に決定し、高速炉実証炉の計画があるのみで、その予算も十分でなく、その「共同開発費として約50億ユーロ(約6100億円)の半額負担要請を検討している」との話もあるとのこと。

 

各国の核燃料再処理を担ってきたニューアルバは、いま弱り目に祟り目の状態にあり、将来的な見通しもみえません。このような企業に巨額の出資をしないと、核燃料の処理が行うことができないのが現在の原発事業の実態ではないのかと思わざるを得ません。そのような投資については、株主だけでなく日本国民にきちんとした説明が必要ではないでしょうか。

 

もう一つ、東芝の問題です。東芝の不正会計処理では、157月、第三者委員会が会計不正の内容を明らかにしており、指摘した利益のかさ上げは1562億円でした。内容は会計不正というレベルではなく、粉飾と評価されてしかるべきではないかと思います。すでに株主から訴訟提起が相当数なされていることが東芝のホームページに掲載されていますが、当然のことだと思います。

 

しかし、より重大な問題は、「WH爆弾」といった日刊ゲンダイ特有の物騒な指摘でした。同記事によると、<06年に東芝陣営は54億ドル(約6000億円)でWH社を買収。東芝は42億ドル(約4800億円)を負担したが、買収額は相場の3倍ともいわれ、市場は「高い買い物では?」と危惧した。「当時のWH社の企業価値(純資産)が2000億円だとすると、買収金額のうち4000億円が“のれん代”になります。WH社が絶好調であれば、会計処理も難しくはなかったでしょうが、東日本大震災で原発ビジネスは大きく落ち込んだ。会計上、減損(損失を決算書に反映させる)する必要があったのに、東芝は処理していないといわれています」(株式評論家の倉多慎之助氏)>とのこと。

 

実際、東芝は、1117日になって、<東芝(6502)は17日、子会社の米ウエスチングハウス(WH)が原子力関連などで計上した減損損失の総額が1156億円だったと発表>しています(日経記事)。

 

東芝がWH社を買収する際、062月、<今後、当社とウェスチングハウス社は、世界トップクラスのグローバル原子力グループを形成することにより、最先端の技術、信頼性と経済性を兼ね備えた原子力発電設備とサービスを提供してまいります。>と誇らしげに発表しています。しかし、上記の事実は、実際は、どこも引き受け手がなかった身売り状態のWH社を高い値段でババ抜きしたのではないかと疑わざるを得ません。このことは、原子力事業を行ってきたリーディングカンパニーの一つである東芝といえども、海外企業の評価、とりわけ原子力事業については適切かつ合理的に評価することが困難とみることもできます。

 

そして、昨年1227日の東芝が子会社WH社による買収で「数千億円の損失の可能性」がでるとの発表は、そのことをより裏付ける内容でした。

 

WH社は一昨年の15年年12月、S&W社を約275億円で買収しています。それまで両社は共同で電力会社から4基、合計約2兆円の原発プロジェクトを受注し、WH社は設計と主要機器の供給、S&W社が施工を分担していました。ところが、規制強化と完成遅れで建設コストは膨らみ、電力会社、両社それぞれが三つどもえ的に訴訟合戦をして争っていたのです。それらを一挙解決する手法として、買収が選択されたようです。

 

WH社自体、原子力事業を合理的な見通しとコスト計算の基で運営する能力をもっているのか疑問視される状況を示しており、その会社が訴訟の偶発債務の評価といった難しい評価を、より難しい買収という形で精算するようなやり方は、到底東芝が統御できているとは思えないのです。この問題はまだまだ尾を引きそうで、今後も注視していきたいと思います。

 

複雑で難解な問題を、私の理解力不足と時間不足もあり、かなり省略して書いてしまったので、わかりやすい説明にはほど遠い内容になりました。今日は読む資料が相当あり、それだけで時間を使いすぎました。時間のある方は引用した記事を参考にしていただければと思います。


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