181024 電力管理 <大規模停電、水力も影響 第三者委中間報告>を読みながら
最近は朝6時になろうとしていても、薄暗い感じです。急に晩秋になったかと勘違いするほどです。それでも小庭の花たちはいろいろな色彩で賑やかに咲き誇っています。
今年はすでに10月も残り少ない日を数えるばかりとなりました。まだなにが起こるかわかりませんが、今年の自然災害は各地で大きな被災を発生させました。このブログではあまり触れてなかったように記憶していますが、北海道地震に伴う大規模停電を今日は取り上げようかと思います。
毎日朝刊<クローズアップ2018大規模停電、水力も影響 第三者委中間報告>では、<北海道地震に伴う大規模停電(ブラックアウト)を検証する第三者委員会(委員長=横山明彦東京大学大学院教授)は23日、発生原因や再発防止策をまとめた中間報告案を了承した。>として、その内容について掲載しています。
第三者委の事故原因に関する説明は<ブラックアウトは主力の苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所(全3基、出力計165万キロワット)の停止だけでなく、水力発電所の停止など複合的な要因で発生したと分析。>となっています。
他方で、<「北電のミスない」>と結論しています。
そして<再発防止策として、強制的に停電させる上限量の積み増しなどを提言したものの、中長期的な課題は残ったままだ。【袴田貴行、和田憲二】>
この第三者委の位置づけが変わっていますね。
<第三者委は経済産業省の認可団体「電力広域的運営推進機関」に設置された。>この認可団体が委員を選任し、その報告を受けることになっているのでしょうか。北電でなく認可団体が設置主体となっているところが興味深いです。
地震発生からブラックアウトに至る経過は次の通りです。
① 午前3時7分 地震発生 同時に、苫東厚真の2、4号機が運転停止
② 8分30秒ころ 本州からの電力融通拡大、強制停電(1回目)124万㎾
③ 同 送電線の損傷で水力発電が送電不能、運転停止 43万㎾
④ 21分過ぎ 苫東厚真の1号機の出力が低下
⑤ 22分過ぎ 強制停電(2回目)16万㎾
⑥ 25分ころ 苫東厚真の1号機が運転停止
⑦ 25分過ぎ 強制停電(3回目)6万㎾ ブラックアウト
といった経過を辿ったようです。ブラックアウトの要因について、<横山委員長は「水力発電の停止がなければ、ブラックアウトには至らなかった可能性が高い」と指摘した。>というのですが、なぜ水力発電だけ取り上げるのか、素人にはよくわかりません。北電の電源構成によれば(17年度ですので原発が含まれていません)、水力は4%にすぎないですし、京極水力は43でなく40㎾となっています。委員長の趣旨は、他の電源がアウトになっても、水力発電がきちんと働いていたら、大丈夫だったという趣旨でしょうか。石炭火力と石油火力を合わせると75%を占めていたのですが、地震当時どうなっていたのでしょう。
苫東厚真の火力発電は3基合計で165㎾ですが、他の再エネ(19%)とかには触れていません。なんとなく釈然としないものが残ります。
人為的ミスはないとの結論につき委員長はこれを比定し、<電力供給で苫東厚真に過度に依存していたとの指摘もあったが、中間報告は北電の電力供給体制や設備の運用で不適切な点はなく、ブラックアウト前後の対応で人為的ミスなどもなかったとした。>
報告書の中では私の疑問程度はしっかり抑えてすべての電源への考察の上、そのような結論に至ったのかと思うのです。<ブラックアウト前後の対応で人為的ミス>がなかったという点も、まず想定されていたかどうか、操作マニュアルがあったかどうかをふまえ、当時の操作内容をつぶさに検討してこのような結論に至ったのだと思うのですが、より丁寧な口頭説明を求めたいと思うのです。紙面の関係で省略しているのであれば仕方ありませんが。
やはり気になるのは、負荷遮断の方法ですね。
<委員会では、負荷遮断を巡り、きめ細かい対応を求める意見が出た。岩船由美子東大生産技術研究所特任教授は「非常時に完全に停電するのではなく、(対象外とする施設などを決めて)一部の通電を残すなど、停電によるダメージを抑制する取り組みも重要だ」と対応を求めた。>
今回、苫東厚真の出力合計165万㎾のうち、最初124万㎾、次に16万㎾、最後に6万㎾と合計146万㎾を強制停電させる「負荷遮断」をしていますが、それが委員会で討議されたようです。私にはこれだけの議論ではなんとも判断がつきません。
私がこの問題を取り上げたのは<地域間融通、高コスト>という指摘が気になったからです。
ここでは再発防止策として、地域間融通の拡大(すでに来年3月から現在の60万㎾に新たに30万㎾が増える予定)が取りざたされています。
しかしそれでは問題の根本的解決にはほど遠い量というわけです。<焦点は、緊急時に供給エリアを越えて送電する連系線の増強だ。特に北海道と本州は現在の60万キロワット(北本連系線)から増強し、来年3月に容量が計90万キロワットに増えるが、ピーク時で500万キロワットを超える道内電力需要の2割弱の規模しかない。>
<本州-九州間の連系線は九州の電力需要の4割弱に達しており、北海道-本州間の弱さが目立つ。>道知事が世耕弘成経産相に増強を要請し、応じているようですが、現実は厳しいようです。
それは費用の問題のようです。
<連系線の増強には関連設備も含めて「一般的に10年以上の時間と数百億円では収まらない費用がかかる」(電力広域的運営推進機関)といい、最終的には電気代に跳ね返る。>
これに驚きました。数百億円で尻込みしているのですね。いったい原発再稼働にどのくらいかけているのでしょう。桁違いでしょう。
連係線の増強拡大、さらに大都市圏への送電網が拡充できれば、北海道のように再エネの潜在力が大きいところではもっと増大するのではないでしょうか。
ところが現実は潜在能力を発揮できるインフラを欠いています。
<北海道には太陽光や風力など再生可能エネルギーの適地が多く、今後も導入拡大が見込まれる。そこに停止中の泊原発が再稼働すれば、大量の再エネ電力が余って管内で消費しきれなくなる。需給バランスが崩れ、太陽光発電の事業者に供給停止を求めたりしている九州電力と同様の事態になりかねない。再エネの大量導入には、電力需要の大きい大都市につながる送電網の拡充が必要だが、「今の送電網は再エネの余剰電力を送る発想で整備されていない」(大手電力幹部)のが現実だ。>
最後の研究者の指摘を紹介しておきます。
<電力業界に詳しい東京理科大の橘川武郎教授は「東日本大震災の教訓は、大型発電所への依存を見直して電源を分散させることだったが、電力会社の多くが古い発想から抜けきれていない」と指摘する。長年にわたる地域独占の経営で、原発を含む自社の大型発電所に経営資源を集中し、再エネを軽視してきたツケが回っている。>
今日はこれでおしまい。また明日。
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