171204 一生懸命何をするか? <地球温暖化対策の行方 日本は再生エネ促進を>を読みながら
再生可能エネルギーという言葉を繰り返し、耳にタコができるほど、聞いたのは96年新春でした。翌年12月に京都議定書が採択されるほぼ2年前でした。それはカナダ・エネルギー庁で開催されたパイプライン敷設をめぐるパブリックヒアリング(ある種の環境アセスメント手続き)における質疑の中でした。当初は、まだ聞き慣れない言葉でしたが、92年地球サミットで生まれた気象変動枠組み条約で提唱された大きなキーワードだった程度の意識でした。
それがこうも、具体のパイプライン事業を実施する中で、検討されなければならないとは想定外の事柄でした。しかも、質問者は環境団体や住民団体の代理人弁護士と専門家で、カナダ特有の事業者側が参加費用を負担する制度に基づき、その事業者を攻撃するのですから、なんともすごいことだという方が驚きでしたが。
それにしても、再生エネルギー利用は、その後も、あのアル・ゴア氏が発表した『不都合な真実』で多くの協賛を得たはずにもかかわらず、遅々として進まない状況ですね。いや、上記の鋭い・繰り返しの質問も、傍聴する多くもさほど関心がなく、答えもおざなりでしたし、私一人?がすごいと思っただけかもしれません。儀式的な要素すら、振り返ってみると感じられ、その後のカナダの再生エネ利用が著しく促進されたとか、それと競合する化石エネルギー事業が減退したとは聞いたことがありませんね。
さて、今朝の毎日記事<そこが聞きたい地球温暖化対策の行方 日本は再生エネ促進を 独ポツダム気候影響研究所長 ハンス・シェルンフーバー氏>は、パリ協定の基礎である2度未満の目標を提唱した方だそうで、興味深いです。その聞き手である渡辺諒記者の記事で少し勉強してみたいと思います。
まず、「2度未満」が適当との理由については
<より重要なのは、地球環境が回復不可能な状態まで破壊される臨界点「ティッピングポイント」の温度が2度付近だからです。臨界点を超えると▽サンゴ礁が死滅・白化して元には戻らない▽グリーンランドの氷床が解けて減少する▽海流が変わる--など、地球に大きな影響を与える変化の加速が予想されます。2度未満に抑えれば、完全に安定ではないですが、大きな問題にならないと考えます。>
このこと自体は、アル・ゴア氏も繰り返し述べていますね。新しい著書はまだ読んでいませんが、トランプ大統領のような人に科学的論拠?を与えているかもしれない状況では、改めて私たちもその科学的根拠について知っておく必要があるかもしれません。
京都議定書の問題は、これまで繰り返し論じられてきたので、それはオミットして、今後世界はどうすべきかについて、話を伺いましょう。
まず、削減量の上積み努力です。<パリ協定で各国が掲げている温室効果ガスの削減目標のままでは「2度未満」を達成するのは困難です。各国が削減量を「上積み」しなければなりません。>
続いて、化石燃料から再エネへのシフトです。<「2度未満」を実現するためには、2020年代に火力発電所を順次廃止し、各国が化石燃料関連事業への助成を中止すべきです。効率良くエネルギーを貯蔵する技術開発も必要でしょう。さらに30年代には建設資材を変える必要があります。製造の際にたくさんのCO2が出る鉄鋼やコンクリートの使用をやめ、木材とカーボンファイバー、粘土などを上手に使う技術を採用していく必要があります。排出が容認される温室効果ガスの総量「カーボンバジェット」=2=の点から、低炭素の素材を積極的に利用しなければなりません。>
従来から声高に強調されてきたわが国に温存されている膨大な森林資源の活用ですね。たしか森林税でしたか、こういった税負担という方策もいいですが、やはり森林の活用を本気で取り組む必要があるでしょうね。
とりわけ「コンクリートから人へ」と改革の道を示した民主党がほぼ解党したいま、なにやらコンクリート漬けと鉄鋼の推進すらあったように思われます。その鉄鋼について神鋼の不正がありましたね。杭基礎などでも偽装がありました。不正・偽装はなくさないといけないことはみなさん承知していますが、それ自体をなくす、あるいは使用を減少させると言うことにはなかなか理解が得られない状況でしょうか。
地球温暖化対策を、私たち、そして未来の世代のために考えたとき、もうそういう考えは通用しないのではと考えています。
木材も多様な加工方法で、コンクリート代替性が相当可能になってきているかと思います。さらに利用促進を図るには、それに応じた制度設計を見直す必要があるでしょう。根本的な見直しですね。たとえばバイオマス発電事業などでいえば、単に発電計画だけで承認するというのでは、まさに砂上の楼閣で終わってしまうでしょう。やはり木材の供給元から発電所、そしてこれを利用するエンドユーザーまでの具体の実現性をすべてクリアにするものでなければ、認めるべきではないと思うのです。そのようなシステムにするには、森林地域と利用地域の共同参加も必要でしょう。いまは発電計画だけに終わっているようにしか思えません。
日本政府や国民への期待も聞いています。
<大きな原子力発電所事故を経験した日本が考えるべきなのは、再生可能エネルギーの導入を促進することでしょう。原発をやめる代わりに火力発電を増やすのは危険です。それでは、温室効果ガスの排出量が増え、長期的に見て経済成長のマイナス要因にすらなるでしょう。ドイツは火力発電を段階的に止めて、最終的には、再生エネルギーに移行することを決めています。日本には、脱炭素化産業で世界の技術的指導者としての役割をもっと果たしてほしいと思います。
次世代建材や蓄電技術の開発は次に来るべき「産業革命」です。過去の産業革命ではCO2が増加し、温暖化を招きましたが、次の産業革命では温暖化を緩和するものにしなければいけません。>
自民党政権は、実体のないアベノミクスでいつまでも動いています。こういった建設的議論もなかなか受け入れてもらえないでしょう。後は国民がどう考えるかでしょう。
最後に驚きました、67歳のフーバー氏には9歳の息子さんがいらっしゃるというのです。外見は実際のお年寄り高齢に見えますが、気持ちはとても若い、情熱的な方でしょうか。ま、9歳の孫ではなく、息子がいるのですから、元気溌剌になるはずです。
その最後の言葉は、いいですね。
<現代では、一生懸命仕事をしているだけでは良い環境を残せません。>これこそ至言の一つでしょう。
希望のある言葉で終わりにしたいと思います。
<CO2だけでなく、放射性廃棄物の処分の問題もあります。海には環境を汚すプラスチック製品が多数浮かんでいます。けれども、これらは解決することができる問題です。私たちの世代が仕事のことだけでなく、環境改善を考えて、取り組んでいかなければなりません。>
ちょうど一時間が過ぎました。今日はこれでおしまい。また明日。
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