181220 農業の担い手 <発言 行政含め新規就農対策を=飯田政明>などを読みながら
年の瀬はのんびりと過ごそうと思っていたら、ちょっとしたもめ事がめずらしく次々と持ち込まれ、意外と忙しくしています。既存のケースがほぼ落ち着いてきて、読書の冬を堪能しようと思っていたのですが、最近は月20冊は遠くに及ばず、10冊も満たない状況になってきました。実質5冊程度でしょうか。
今日も新件があり、といっても法テラス案件が多いので、その手続に時間が結構とられています。ブログの方もなかなかゆっくりと考える(いつものことですが)余裕がなく、今日も毎日記事<検証告白、ゴーン前会長逮捕の糸口(その1) 外国人幹部「耐えられぬ」>と昨年から続く検査不正の問題とを整理したいと思いつつ、また別の機会にすることにしました。ただ、一言触れておこうかと思います。
毎日朝刊の上記記事は「検証」と銘打って、<側近告白 アリの一穴>と逮捕の背景・実態に迫るような見出しで、期待したのですが、ちょっと肩すかし気味でした。おそらく取材チームも逮捕後必死に内部情報を得ようと努力し、とりわけ告発者の発言やその経緯などの情報を得ようとこれまで取材を続けてきて、ようやくここまでたどり着いたのでしょう。ただ、情報源らしいものがよくわからず、告発者の告発年月やその契機となった監査役らの日産極秘調査チームによる調査経過も時期・内容が判然としていないため、特捜の捜査経緯との関係も当然ながら闇の中ですね。おおよその感触は得られましたが、一次資料がほとんど明らかにされていないので、まあ今のところはこの程度にとどまるのでしょうね。
さて本題の農業問題に移ります。
同じ毎日の本日付記事<発言行政含め新規就農対策を=飯田政明・有限会社佐束ファーム社長>は、農業を担う人がいなくなりつつある農村社会を憂い、提言するものですが、自ら非農業の世界から農業の世界に入り農業法人を立ち上げ、耕作農地を拡大してきた実績をもつ方ですので、経験に裏打ちされた話として、貴重かなと思うのです。
飯田氏はシステムエンジニアの仕事に40年近く従事し、<約10年前、静岡県掛川市の農業法人が米価下落のため存続の危機に陥った。農地38ヘクタールの全面耕作放棄となる事態を阻止すべく、農業素人の仲間6人で法人を引き継いだ。3人が社員、3人がアルバイトだった。今は10年計画で4集落の農地計90ヘクタールを次の世代に引き継ぐべく、若者2人も新たに仲間に加え、四苦八苦して農地の集積、基盤整備、設備投資に取り組んでいる。>という農業新参者の一人ですね。
掛川といえば、以前も少し紹介した画期的な住民参加型のまちづくり条例の先駆けを作ったまちですね。30年くらい前でしょうか。
そこの農地の現状を語っています。<これから高齢者が次々と終農していくのに、その分をカバーする若者の就農は見込めない。「生業」とする真の農業、会社員とも比較可能で「食べていける農業」へと改革し、若者を呼び込まなければならない。集積すれば、基盤整備すれば、法人化すれば、それで解決すると思っている人がほとんどだが、法人でさえ高齢者ばかりになりつつある。>しかも<このままでは10年後の掛川市の放棄率は5割程度と予測される。>この割合はちょっと驚きですが、実際、農業の担い手、とくに若い人が増える状況がみられないように私も感じています。
これは掛川市だけでなく、全国たいていの市町村で起こっている状況ではないでしょうか。
そこで飯田氏は提言するのです。まず、地域で現状に対する共通認識をもとうと。それはこれまでの農業者と行政だけといった狭い当事者だけではダメだというのです。
つまり、<「地域ごとの10年後の農地放棄予想」を作り、農業者だけでなく市民、行政が共通認識に立つ。そのためには、地域農業の視点を持つ新しい部門、例えば「地域農業係」を自治体とJAにそれぞれ設け、「10年後」について大規模なヒアリングを行う。>
たしかに農業委員会も制度上、市民にも門戸を開くようになりましたが、はたして現実はどの程度市民が委員になれたのでしょうね。農業者以外、農地に関与すべきでないといった農地制度の仕組みがなかなかこういった共通認識を育む土壌をつくりにくくしているように思います。
この点、飯田氏は<ここで共通認識に立てなかったら解決策を考えても意味がない。>と断言しますが、私も基本、賛同します。が、ベルリンの壁みたいなものがしっかり仕切りしていて、容易に壊せないでしょう。
さて飯田氏は次に、というか目的は<新規就農で耕作放棄地の拡大を防ぐ解決策を探る。>というものです。
この目的というか目標を達成するには、<「他産業並みの待遇」「売り上げ2年分相当の設備投資」「地域のリーダー育成」など>の課題を挙げています。この<解決策として、企業の参入や第三セクターの導入もあり得るだろう。県の指導のもと、市とJAの「地域農業係」が中心となって大胆に、現実的に取り組んでほしい。>と、若者個人の新規参入を難しさを、企業や三セクで対応することを提案しているようです。
そしてこれまでの国の施策は十分でなく、<若者の新規就農までは全く届いていない。「これからの担い手」だけを「担い手」と再定義し、かつ「地域農業」という視点を入れて新施策を展開してもらいたいものだ。>というのです。
むろん、日本各地では相当程度若者の新規参入がみられる地域もあり、そういう地域ではさまざまな情報媒体を通じて、数珠つなぎのように若者がどんどんというと大げさですが、しっかりした足取りで増えてきているようです。今日もNHKの「おはよう日本」で紹介されていた村(名前を確認しませんでした)では、当地では「井手掃除」という水路に堆積した汚泥や葉っぱ、水路沿いの雑草や枝条を刈払いなど、共同作業に多くの新参若者夫婦が参加していました。地域でも工夫があれば、一人の若者が次の若者を呼び寄せることができますね。
それこそ地域に住む人たちの意識改革が必要なのでしょう。
それはそれとして、では国はどうなのか、ちょっと農水省の予算要求当たりを見てみました。
<平成31年度農林水産予算概算要求の概要について>でおおよそがわかります。が、項目だけ見ても多すぎて、実のところ、よく分かりませんというのが正解でしょうか。
次に<平成31年度農林水産関係予算概算要求の重点事項>を見ると、国が何に重点を置いているか、予算額の多寡でおおよそ想定できます。
担い手の部分をあえて取り上げると
<1 担い手への農地集積・集約化等による構造改革の推進
⑴ 農地中間管理機構による農地集積・集約化と農業委員会による農地利用の最適化
① 農地中間管理機構等による担い手への農地集積・集約化の加速化
② 農地の大区画化等の推進<公共>
③ 農地耕作条件改善事業
④ 樹園地の集積・集約化の促進
⑤ 農業委員会の活動による農地利用最適化の推進
⑥ 機構集積支援事業
⑵ 多様な担い手の育成・確保と農業の「働き方改革」の推進
① 農業経営法人化支援総合事業
② 農業人材力強化総合支援事業
③ 農業支援外国人適正受入サポート事業
④ 女性が変える未来の農業推進事業
⑤ 農業協同組合の監査コストの合理化の促進 >
とそれでも、盛りだくさんで、頑張っている印象です。でも、予算額を見ると、<1 担い手への農地集積・集約化等による構造改革の推進>では、1500億円の②が中心で、次に一桁少ない①、③と続きます。では、もう一つの<⑵ 多様な担い手の育成・確保と農業の「働き方改革」の推進>はというと、②が200億円台で、残りは比較にならない小規模となっています。
でも、<2 水田フル活用と経営所得安定対策の着実な実施>や<3 強い農業のための基盤づくりと「スマート農業」の実現>となると桁違いの規模で、こちらが中心というのが明らかです。直接支払交付金など既存農業者に支給・提供する仕組みが中心かなと思ってしまいます。そこに若者の育成、他方で崩れつつある農村社会の立て直しに対応する措置がどの程度含まれているのか、ぴんときません。
ある相談事例で、補助事業など行政が支給するものの、内容が市民・国民レベルで透明化されておらず(法制度上そのようにはなっていない)、不明朗な支出がある疑いを抱かざるを得ない事案がありました。予算執行の透明化をさらに進めて、市民に開かれた農政になることを願うのです。それは飯田氏が指摘したように、市民も参加した形で、地域の農業のあり方を考え、農業の将来を託す若い人たちに新規参入を促す仕組み作りを地域で考えていくことが必要ではないかと思うのです。
思いつきの議論におつきあいいただきありがとうございました。今日はこれにておしまい。また明日。
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