宇多田ヒカル「HIKARU UTADA SCIENCE FICTION」(ESCL5928-9)(SONY MUSIC)を聴いてみました。
今までLPレコードしか持っていなかったので、彼女のCDは今回初めて買いました。
SCIENCE FICTIONというタイトルの意味が良く理解できなかったのですが、彼女の音楽を一言で表現しているように思います。
「in the room」の歌詞に「夢も現実も目を閉じれば同じ」というのがありますが、私はこのフレーズがとても好きです。
夢と現実、生と死の間を彷徨する魂の不安定な状態を、量子学的にいう電子雲のように表現されています。彼女の独特な声(ある成書<1>によると尺八と同様の非整数次倍音の高周波成分を多く含んでいるようです)が、アコースティックな音とエレクトリックな音が絶妙に混在したドビュッシーも顔負けの和声(理論的に解明したいと思っているのですが..)に彩られ、宇宙的な世界へと誘う稀有な音楽を形成しています。
高周波成分を出しやすい母音が多い日本語の歌詞だからこそ、より心に染み入るのではないかと思います。彼女自身が、英語より日本語の楽曲を作っているのは、意識的なのか、無意識的なのかを本人に是非聞いて見たいところです。何かで彼女自身が、「生活ではほとんど英語を話しているのに、楽曲では日本語が殆どなのはどうなのかな。もう少し英語を入れようか。」と、どこかに書いていたように思います。でも子音が多い欧米の言語のみの楽曲ではこのような雰囲気は決して生まれないと思います。CDよりLPレコードで聴いた方が遥かに感動的で、今回買ったCDの音が物足りなく感じたのはこれと関係しているかも知れません。
予約しているLPが楽しみです。
<1>中村明一著:『倍音』(春秋社、2010年)
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