私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

吉備の中山ーその3

2007-11-18 20:25:13 | Weblog
 もう何度もこの欄でご紹介した「吉備の中山」ですが、前回と重複するのですが、なぜこんなにも「中山」が有名になったのかと、又書いてみます。それぐらいこの山は美しいのです。特に秋のお山がです。

 古今集という平安期の中ごろ(905年)出来上がった勅撰和歌があります。
 その序に、紀貫之は、
「やまとうたは、人の心を種として、よろずの言の葉とぞなれりける。世の中にある人、ことわざしげきものなれば、心に思ふことを、見るもの聞くものにつけて、言ひだせるなり。花に鳴く鶯、水にすむかわずのこゑをきけば、生きとし生けるもの、いづれか歌をよまぜりける。力をもいれずして、天地をうごかし、目に見えぬ鬼神をもあわれとおもわせ、男女のなかをもやわらげ、たけきもののふの心をもなぐさむる歌なり。・・・」
 と書いていて、和歌のすばらしさを紹介しています。

 この古今集には、1111首が納められていますが、その1082番目の和歌が、

 まがねふく 吉備の中山 おびにせる
          ほそたに川の 音のさやけさ
               (詠人不知)
 です。

 この歌は、承和の御べ(大嘗祭ー天皇が即位後の最初の年に、神に対して新穀を奉る儀式)のための新穀を作った(主基)吉備地方のお米に添えられた歌であったようです。(作る地域は占いによって決められます)

 この和歌集が出来た後、この中に取り上げられた「吉備の中山」と「細谷川」が都でもとても有名になり、後々数々の歌の題材として取り上げられています。

 そのうちの有名な歌の2,3をご紹介しておきます。

 ・船とめて 契りし神の ゆかりには
         けふも詠る 吉備の中山   
                (前大僧正慈円)
 ・雪ふかみ きびの中山 跡絶て
         けふはまがねを 吹くや煩う 
                (俊恵法師)
 ・誰か又 年経ぬる身を ふり捨て
         きびの中山 越とすらん   
                (清原元輔)
 ・鶯の 鳴につけても まがね吹き
         きびの山人 春をしるらん  
                (藤原顕季)

 また、鎌倉期の新古今集にも一首あります。
   
  ときわなる きびの中山 おしなべて
         ちとせを松の 深き色かな
                (詠人不知)


 この歌は、我;高尚先生の最も愛された歌だったようです。

 なお、高尚先生がお詠みになった歌は沢山ありますが、この吉備の中山を詠った歌は一つもありませんでした。ただ、中山の月を歌われています歌は二首ありました。
 そのうちの一首、

   思いやる 心のうちに 出でにけり
         わが中山の 山のはの月