先日「旅のラゴス」のレビューを書いたら、フォロワーさんからこの本を薦められたので早速読んでみました。私の勝手な思い込みで80年代後半の作品だと思ってたら、これが1977年から「別册文藝春秋」に連載され、1979年に刊行されたものでした。1989年に佐藤浩市主演で映画化されてて、私はその当時の記憶が残ってたのかもしれません。(ただし映画は見ておりません。)
実は私は筒井先生の本は高校生の頃によく読んでて、それが1979年~81年なので当時既に発刊されてたのですね。その頃に読んでなかったのは、お金なくて文庫本しか探さなかったせいでしょう。
それでこの本ですが、筒井先生が文学賞を目指し、のたうち回って小説を書きあげる話だと思い込んでたのですが(こればっか)、あんなにとんでもない話だとは知りませんでした。序盤を読んだ時は、同人雑誌の人間関係のドタバタを描くものかと思ってたら、まあ中盤から思いがけない方向に進んで行って、最後はまったく予想外で衝撃でした。
直木賞をもじった文学賞の審査員や審査会の様子も出てきますが、そりゃまあ実際の審査員の人が騒ぐのもわかります。が、ここまで極端なドタバタにしたのならスルーするのが大人というものではないでしょうか。ただ、当時の文壇という世界が案外狭くて実際に閉塞的であり、おちょくられた方もその取り巻きも黙ってはいられなかったのかもという気もします。それこそ筒井先生の思うつぼのようにも感じますが。
小説として決して読後感の良い話ではありませんが、同人雑誌のメンバーのキャラクター設定とその内面とそこからの行動に至る描写などはさすがで、読んでるだけで編集会議や飲み屋さんでの様子が見えるようでした。あの辺の人間の描き方はまさに筒井!というところです。
今更ながらですが、読んでよかったです。薦めていただいた方にはここで感謝申し上げます。おかげで筒井作品への関心が再燃しました。調べてみたら、これまでに読んだ長編、及び作品集として発刊されているものは以下の通り。
緑魔の町
筒井順慶
脱走と追跡のサンバ
家族八景
七瀬ふたたび
エディプスの恋人
虚人たち
朝のガスパール
わたしのグランパ
愛のひだりがわ
にぎやかな未来
馬は土曜に蒼ざめる
将軍が目醒めた時
おれに関する噂
あるいは酒でいっぱいの海
笑うな ショート・ショート集
狂気の沙汰も金次第
旅のラゴス
大いなる助走
高校生の頃に読んだ短編集やショートショートもあらためて読むともっと味わえるかと思ったのですが、書店で見たら新潮文庫のはすごく字が小さかったので断念。大きめの文字で文庫の新装版が出ることを期待します。なので、まずは新しめの長編から始めましょうか。筒井を今読まなくてなんとするという気がしております。