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安倍政権、悪行の軌跡:TPP

2015-12-19 17:23:30 | 安倍政権、悪行の軌跡


 安倍政権の悪行シリーズとして、今回はTPPの大筋合意をとりあげる。

 この件については、まず自民党が過去にTPPに反対していたことが問題となっている。
 「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」という、2012年の選挙で自民党が掲げていたポスターが拡散されているので、ご覧になった方も多いだろう。そこに書かれている3つがすべてウソになってしまったわけだら、開いた口がふさがらない。

 約束を破ったということも問題だが、この交渉の進め方も大きな問題がある。
 TPPの交渉は、交渉中にはその中身が明らかにされなかったわけだが、そのこと自体大いに問題があるだろう。交渉の中身が報道されたりすると反対が起きるから、というのが理由なのだろうが、その言い分がまかりとおっていることがそもそもおかしい。ある法律なり制度なりが、「中身が知れ渡ると反対されるから」という理由でその中身を秘密にして交渉するなどということが許されていいのだろうか?

 そして、こうした手続き面だけでなく、TPPはその中身についてもいろいろと問題が指摘されている。

 たとえば水田が環境保全、生態系の維持といった部分で果たしているプライスレスな役割がまったく看過されているということも問題だ。ある試算によれば、コメの関税が完全に撤廃されれば日本の水田の9割が消失するというが、完全でないまでも部分的に関税が引き下げられることで水田が消滅していけば、生態系も深刻なダメージを受けるのではないか。

 そしてもう一つ、食糧安全保障という観点からも問題が指摘されている。
 たとえば、大規模な旱魃などが起きて食糧を輸入しようにも、よその国が売ってくれないというような状況である。そんなとき、食糧自給率が低い状態では、深刻な食糧不足に陥るおそれがある。
 これは、部分的には実際過去にそういう事例がある。
 2007年から2008年にかけて、いわゆるサブプライム問題に端を発した金融危機で、金融市場から逃避した大量のマネーが商品市場に流れ込んだことがあった。このとき穀物価格が急騰し、インドなど一部の国はコメの輸出を停止したのである。この例は、旱魃などでそうなったわけではないのだが、むしろ「マネーの流入によって商品価格が暴騰する」という、また別の、そして将来ふたたび起こりそうなリスクを示してもいる。
 「コメの価格が急騰」というだけならまだしも、輸出が停止されたらカネを出して買うこともできなくなる。TPPによって食糧自給率が極端に低下した状態でこのような事態が発生すれば、この現代日本でリアルに“食べるものがない”ということになってしまうかもしれないのである。

 そして、TPPによって得られる恩恵として「輸入品の価格が下がる」ということが挙げられているのだが、これも私は首をかしげずにはいられない。
 モノの値段が下がるということは、それ自体は必ずしもよいことではない。90年代から2000年代にかけての経験から日本経済はそれを痛感し、だからこそ、この数年間なんとかして物価を上昇させようとしているわけである。それがいいか悪いかというのはひとまずおいておくとしても、少なくとも、アベノミクスはそういう出発点に立っているはずだ。ならば、「TPPで輸入品が安くなる」というのがアベノミクスの基本的な考え方と相反しているのは間違いない。

 このようにみてくると、TPPもまた、大いに問題である。
 以前も書いたように、このTPPもまた対米追従の一環であるわけだが、安倍総理の対米追従姿勢は、自分たちの修正主義的な歴史認識を許容してもらうためともいわれている。つまり、アメリカのいうことは何でも聞くから、過去の戦争を美化したりしても文句をいわないでくれ、ということだ。そのためにTPPも利用しているのだとしたら、くだらない自己満足のために国家を衰亡に追いやっていることになる。これこそいわゆる“売国”というやつではないのか。


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