とりあえずカッコだけは、と
新調したサイクルウェアに
身を包み
タイヤに空気を入れていると
ぽつんぽつんと雨が降り始めた。
不穏な動きの黒い雲を見上げ
でもまあせっかくだから、と
走り始める。
車道には時折り
わざと意地悪して
幅を寄せてくる車もいる。
やっかまないでよ、
可愛いからって!
排気ガスを吸い込み
悪態を吐き出す。
渋滞ってなんのこと?
わたしの自転車は
するする進む。
決して
びゅんびゅんではないけど
脚に力を込めた分だけ
着実に前に進んでいく。
30分ほどして
辿り着いた小さな
自転車屋。
開店にあわせて
やってきたわたしたちに
続いて
つぎつぎお客がやってくる。
黒光りのサーベロ
鮮やかな色彩のアイドル
趣味にざぶざぶお金をつぎこめる
おじさまたち。。。
自転車屋はそんなおじさまにも
たかがボトル一本買うわたしにも
分け隔てなく丁寧に
対応してくれる。
人気店なのもよくわかる。
店を出て数分で
多摩川に出る。
車との接触の不安もなく
気持ちよく走れる
サイクリングロード。
川縁の運動場では
小さな男の子たちが
お揃いのユニフォームを来て
ボールを追いかけている。
高台の道路沿いの斜面には
キャリーのついたママチャリが
仲良く並んで寝そべっている。
ランニングする若い女の子。
ベビーバギーを押す夫婦。
まぎれもなく、びゅんびゅんと
走ってるライダー。
それらを眺めながら
鼻唄うたって
走っていくと
橋に出る。
これ
越えちゃったら
東京だな。
・・・
やめとこ。
帰り道
お気に入りの
珈琲屋さんに
寄り道。
タルトタタンの甘さが
身体に沁みる。
お店を出ると
すっかり日は落ちて
空気が途端に冷たい。
自宅に到着し
まずは自転車を
綺麗に拭きあげる。
こないだ走りに行ったあとは
しばらくリビングで
行き倒れたように
横たわっていたのだから
わたしも少しは
馬力着いたのかもしれない。
大好きだった
小学一年生のときの
担任が
マラソンをする人で
転勤していった先の
津久井湖のほとりを
ぶいぶい走り
40を超えた今も
タイムが少しずつ
伸びているのが
嬉しい
って
お手紙に書いて
くださっていたのだが
今、やっと
実感として
それがわかるようになった。
運動神経ってやつを
半分がた、お空に残したまんま
生まれてきたわたしが
唯一、ひとなみの筋力で
楽しめる自転車。
乗ってるあいだは
思考も感覚も想像も妄想も
ぜんぶ自分だけのもの。
さて
通勤に使えるように
そろそろ
会社のビルの
管理人さん
たぶらかさなきゃ。
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