その日私は同居の母に嘘までついて家を出た。目的は浅草の金馬亭だった。人生最後の浪曲を聴きにやって来たのだ!あの大好きな電柱軒清月の浪曲を聴きに!
入り口で木戸銭を払い私はその日に限って一番後ろの右端の席に着いた。私は終始うつむきながらも時折前を見て浪曲を聴いた。
「今日で最後にしよう!今日で最後に!」心の中でそう呟いた。中入りを挟んで浪曲と講談と再び浪曲になった。何度も何度も涙を拭った。
「もういいのだ!」畳み込むように自分に言い聞かせていた。とりで大好きだった電柱軒清月が出てきた。私は顔をまともに見ることさえ出来ないでいた。熱演する清月に私はうつむき必死に涙を堪えた。この日は私は一度も清月と目を合わさずに金馬亭を後にした。
もういいのだ!これでいいのだ!言いようもない思いが込み上げてきた。
しばらく行くと私に声をかけてきた人がいた。
「あの、いつも金馬亭に来てくれるお客さんですね!」ふと声をかけられ見上げればそこにはあの浪曲師の荒川こう福が立っていたのだ!
私は矢も盾もいられずこう福の前で泣いた。あのこう福の十八番の母恋吹雪の歌が頭の中を流れたのだ!私はその時必死に涙を堪えながら母恋吹雪をこう福の前で歌った。あの荒川こう福は思わず私を強く抱き締めたのだ!
そこから私は一歩も前に進めなかった。
「お客さん、また金馬亭に来てくださいね!」
こう福が私にそう言ったのだ。懇情の別れのように金馬亭に浪曲を聞きに行った私の心は揺らいでいた。
「そう言えば清月師匠のファンでしたよね!思い出しました。もしかしたら師匠、まだ金馬亭にいるかも知れませんね!戻りましょうか?」
荒川こう福にそう言われた私はゆっくりとこう福に手を引かれながら金馬亭に戻るのだった。
「ちょっと待っててくださいね!楽屋覗いて来ますから!」
そう言ってこう福が楽屋に戻った。程なくして清月が表に荷物を持って出てきた。
さて、この話の続きは?
この話はあくまでもフィクションですから!ほぼフィクションですから!
芝居ならここで三橋美智也の母恋吹雪がの歌がかかるのです!
入り口で木戸銭を払い私はその日に限って一番後ろの右端の席に着いた。私は終始うつむきながらも時折前を見て浪曲を聴いた。
「今日で最後にしよう!今日で最後に!」心の中でそう呟いた。中入りを挟んで浪曲と講談と再び浪曲になった。何度も何度も涙を拭った。
「もういいのだ!」畳み込むように自分に言い聞かせていた。とりで大好きだった電柱軒清月が出てきた。私は顔をまともに見ることさえ出来ないでいた。熱演する清月に私はうつむき必死に涙を堪えた。この日は私は一度も清月と目を合わさずに金馬亭を後にした。
もういいのだ!これでいいのだ!言いようもない思いが込み上げてきた。
しばらく行くと私に声をかけてきた人がいた。
「あの、いつも金馬亭に来てくれるお客さんですね!」ふと声をかけられ見上げればそこにはあの浪曲師の荒川こう福が立っていたのだ!
私は矢も盾もいられずこう福の前で泣いた。あのこう福の十八番の母恋吹雪の歌が頭の中を流れたのだ!私はその時必死に涙を堪えながら母恋吹雪をこう福の前で歌った。あの荒川こう福は思わず私を強く抱き締めたのだ!
そこから私は一歩も前に進めなかった。
「お客さん、また金馬亭に来てくださいね!」
こう福が私にそう言ったのだ。懇情の別れのように金馬亭に浪曲を聞きに行った私の心は揺らいでいた。
「そう言えば清月師匠のファンでしたよね!思い出しました。もしかしたら師匠、まだ金馬亭にいるかも知れませんね!戻りましょうか?」
荒川こう福にそう言われた私はゆっくりとこう福に手を引かれながら金馬亭に戻るのだった。
「ちょっと待っててくださいね!楽屋覗いて来ますから!」
そう言ってこう福が楽屋に戻った。程なくして清月が表に荷物を持って出てきた。
さて、この話の続きは?
この話はあくまでもフィクションですから!ほぼフィクションですから!
芝居ならここで三橋美智也の母恋吹雪がの歌がかかるのです!