警察官のせがれとして生まれた私は、遵法精神だけは強く叩き込まれました。
しかし、一度だけ信号無視をしたことがあります。
今から15年ほど前、 北海道での出来事。
当時のパートナーとの北海道一周旅行。
夕張-札幌(泊)-旭川(泊)-稚内(泊)-網走(泊)-釧路(泊)
かなりの強行日程、 さらに運転者は私ひとりでした。
信号無視事件は、旭川のホテルを出発して、稚内のANAホテルを目指している道中に起きたのです。
それも、稚内ANAに到着する直前の交差点で。
その原因は、わかっています。
旭川~稚内間の道路には、ほとんど全くと言っていいほど、信号がありません。
そして、優雅に蛇行する川に沿って、大きく曲がりくねる道。
途中、休憩をとるタイミングを失うほど、私にとっての「北海道」を具現化したような道が続きました。
約250kmが、遠く感じられないほどの素晴らしい景色が現れます。
地元の方たちにとっては退屈極まりない風景も、北海道好きの私にとってはずっと憧れだった雄大な世界。
しかし、体は確実に疲弊していたようです。
距離的にはたいしたことはなかったのですが、神経は相当消耗していたのです。
いわば、「ドライバーズ・ハイ」状態だったのでしょう。
稚内市内に入った頃には、「早く着いてくれ~」という思いが募っていました。
ホテルを目の前にして、久しぶりに信号のある交差点に差し掛かりました。
「赤信号」 の認識はありました。
決して、よそ見などをしていたわけではありません。
しかし、私の足はブレーキを踏むことなく、そのまま交差点へ進入・・・。
キャ~~~~!
元パートナーの悲鳴が車内に轟きました。
「どうしたのよ! 赤なのに! 危ないじゃん!」
私を責めたてる声が響きわたり、
そして夕張で借りたレンタカーは稚内の交差点のド真ん中で、佇むように停まっていました。
前後左右、 車の姿は一台も見当たらないのを確認し、
慎重に停止線までレンタカーをバックさせた私の頭の中は、怒りの思考に満ちていました。
矛先は、もちろん元パートナーです。
もちろん、言葉にはしませんでしたが。
「250kmの移動の車中、ずっと助手席でモグモグ「鮭とば」を、ひとりで食べ続けてたくせに…」
「お前が運転免許を持ってないから、北海道一周、全部俺が運転だぞ…」
「危ないじゃーん! だと? 顔も言い方も、いちいちむかつくんだよ!」
・・・・・・・・・・・
愛も優しさもない夫。 配慮も思いやりもない妻。
その数年後、私たちの婚姻関係が終焉を迎えたのは必然だったんだなー
と、 ときどき思い出してしまう出来事です。
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