今生今世~KENNYasia

ミニシアター系映画、お店周りの雑感、アジア旅雑記など

ハッピーオールドイヤー

2020-12-26 14:09:48 | 電影Movie/音楽Music/芸術Art
「あなたの忘れたくない思い出は何ですか?」年末にこの一本
決断。選別。実行。思い出なんてただのゴミ⁈ 捨てる、残す?過去の私と現在の私に問いかける。
#ハッピーオールドイヤー 

 ルール通りに進まない心の断捨離をとおし、主人公は最後の最後に、最善の選択をする、未来のために。描かれるのは恋人との宝物、友情の証、親子の絆...。誰にでも深く心の奥に秘めて触れられたくないものがある。本編ではジーンは感情を出さずに静かに粛々と断捨離を進めていく。元カレと新カノ間の別れもあっさりと、たぶん心中粉々傷だらけなんだろうが、怒りも大泣きもなく、なんでもなく描かれる。
そして、独り静かにニューイヤーイブを迎え、観る側の私たちに問いかけるのだ。

あなたの断ち切れないものは何ですか? 

 
ハッピーオールドイヤー タイ・日本 2019年
監督:ナワポン・タムロンラタナリット
出演:
チュティモン・ジョンジャルーンスックジン、サニー・スワンメーターノン

知人が大阪アジアン映画祭で二度観た、というのもうなづける。静かな作風なのに、じわりじわりナワポン魔法にはまっていく。ジーン役のチュティモン嬢が「バッドジーニアス」よりぐっと成長し、今後が楽しみだ。今年の見納めにふさわしい、観るべし!

来る年がきっとみんなにHappyな一年でありますように。


斧は忘れても、木は覚えている。

2020-12-20 00:00:22 | 電影Movie/音楽Music/芸術Art
  50歳を超えたマレーシア人なら誰もが知っている、しかし誰もが口を閉ざして話さない、1969年5月13日のことを。

「噂を広めてはならない」
と英語・マレー語・華語・タミール語の四言語のスタンプが押された手紙が静かに映し出される。

 10月、みんぱく上映会ではマレーシアの先住民「オラン・アスリ」周辺の森林伐採や自然破壊、マレー化政策の行き詰まりを描いた映画と思って観はじめた。ところが、本編途中に前述の手紙がもう一度映し出されると、513事件の目撃者や投獄された者、焼き討ちの被害者など様々な証言で当時をあぶりだしていくのだった。顔を出せず音声も変えられての証言もあれば、マレー系でありながらリベラルな証言もあり、「人種」を超えての国家の在り方を考察させる痛々しい真実の物語であった。
 
 12月、シネヌーヴォの特別上映では上映後にラウ監督はじめ、信田氏、盛田氏のトークがあった。
 
 ラウ監督の話で印象に残ったのは after1969…, sensitive topic…, not discuss things, getting better Malaysia. 
 物語はEnglish(世界共通語)ではじまり、中国語やマレー語が混じり、最後にオラン・アスリ語(少数民族の方言)の民話で終わる。大きな潮流の中消えかけていく小さな世界を表したという。事件当夜から静かにたたずむ樹木は、いまや都会雑踏の中で忘れ去られた証言者として当時と変わらず生い茂る。その樹木に巣くう鳥達のさえずりが耳に残る。そのサウンドはオラン・アスリ達や513事件の犠牲者の魂が集まっているように聴こえるのだ、と語ってくださった。
マレーシアの黒歴史、語り続けることの大切さ 私達はいつまでも忘れてはならない。
The Tree Remembers / 还有一些树
2019年 製作・台湾 撮影・マレーシア 89分
監督:ラウ・ケクフアット  Lau Kek Huat

2020年12月





バクラウ 地図から消された村

2020-12-18 12:00:35 | 電影Movie/音楽Music/芸術Art
 凄い映画だった。
 まるでサバイバルゲーム⁈ 狩りがはじまったのだ。

 冒頭、田舎道を土ほこりあげてタンクローリーでやってくるシーンから、何か変だ、何か秘密がある、何かおかしいと思わせる。ひと癖ある個性的な村人たちの食欲も性欲もいっしょくたの大らかな暮らしに、暗い影が少しずつ近づいてくる。

戦士たちの層が凄い。
知性派、肉体美、殺人狂、冷血漢、心病み男、ガンマニア…

村人たちが凄い。
独立独歩の村を守る結束が半端ない。

ソニア・ブラガが凄い。
「蜘蛛女のキス」の妖艶な女優さんのイメージから老獪な女勇者に。

カンヌ映画祭で「パラサイト 半地下の家族」大絶賛のとき、審査員賞は「バクラウ 地図から消された村」受賞。ベルリン映画祭・金熊賞の「スパイの妻」と迷ったが、ウチ的には本作を選んで大正解。怖くて面白くて傑作だった。

BAKURAU  #バクラウ
バクラウ 地図から消された村  
 ブラジル 2019年 131分
監督・脚本:Kleber Mendonça Filho ・ Juliano Dornelles 
クレベール・メンドンサ・フィリオ、ジュリアノ・ドネルス
2020年12月


ファヒム パリが見た奇跡

2020-12-16 00:00:22 | 電影Movie/音楽Music/芸術Art
ファヒム。移民。チェス・チャンピオン。実話。

 名前と小耳にはさんだ情報で、あぁイスラム系の少年が欧州へ移住しチェス試合で優勝した物語ねぇ、と軽くみていたのだが、ジュラ―ル・ドパルデューが出演となると突然、絶対これは観なくちゃ!! と体温急上昇。実は20代のころジュラール様にハマった過去があるのだ。
  • 1900年
  • 隣の女
  • グリーンカード
  • シラノ・デ・ベルジュラック
  • 愛と宿命の泉 
  • カミーユ・クローデル
  • ライフオブパイ etc
あぁ懐かしや。そして、本編での頑固者だが実は恋愛オクテの師匠役が今の彼にぴったり、監督が脚本から真っ先にドパルデューをイメージしたというのもうなづける。

 父親とファヒムの対比がせつない。子供は言葉や文化に即・適応力があるが、親世代は言葉もままならず、自分が背負ってきた背景を簡単に捨てられず適応できないのだよ。通訳の意地悪さもわかる、わかる。わが身を持ってしみじみ感じるエピソードが胸を打つ。そして、時間への観念のちがい。これは日本で生まれ暮らしてきた日本人には到底理解できないだろう。”遅刻しても問題ない。大したことじゃない。怒らないで、みんなHappyだろ?!” は日本以外では日常茶飯事だから、いちいち青筋たてて怒っていたらキリがないのだ。

移民問題、民族差別、格差の拡大いろいろ孕んだいい映画だった。

#ファヒム

ファヒム パリが見た奇跡 Fahim 2019年フランス
監督:ピエール=フランソワ・マルタン=ラヴァル 
出演:ジュラール・ドパルデュー、アサド・アーメッド
2020年8月 

透明人間

2020-12-13 12:00:19 | 電影Movie/音楽Music/芸術Art
はじまりのタイトルバックから引き込まれる。岩場に高波が押し寄せ、不吉なしぶきを上げる嵐の夜。水しぶきの合間から現れる”A24"のロゴタイプ、またしてもA24配給の映画だ。

ホラーやスプラッター映画は苦手の私に、面白いから見たほうがいい、ミステリー調で気に入るはず。と、勧めてくれた映画友Mさん。
たしかに、主演女優の鬼気迫る演技は想像以上だった。

友人や姉妹との関わりを通じ、いる?いない? 病んでる?真実を語っているのはどっち? 見えない恐怖と疑心暗鬼のまま終盤へ。ロマンチックすぎるパスコードが仇となるところが嘘のような真実だった。
翌日、「アス US」を自宅配信で鑑賞。同じ制作会社かつエリザベス・モスが好演し脇を固めてた。やっぱこの女優さん怖いわ~。前月観た「WAVES」も良かったし、A24から目が離せない。

#透明人間

The Invisible Man   透明人間
2020年 122分
監督/脚本:Leigh Whannell リー・ワネル
出演:Elisabeth Moss 
2020年8月