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旅の友・ポップス編 (127) 『サマータイム』

2017-06-14 17:07:38 | 旅の友・ポップス編

『サマータイム』 マハリア・ジャクソン
”Summertime” Mahalia Jackson 【YOUTUBEより】


この曲は黒人ミュージカル映画『ポギーとベス』の主題歌で、作曲家のジョージ・ガーシュインが黒人霊歌の
『時には母のない子のように』をベースにしてアレンジしたものです。
「父さんは金持ちで母さんは美人だ」とみずからの希望をわが子に唄う子守歌なのですが、嘘だとわかりながら
過酷な黒人の生活を美化して子どもに安心を伝えようとしている母親のはかない望みがにじみ出ています。
原曲の『時には母のない子のように』は19世紀にアメリカで生まれた伝統的なスピリチュアル(黒人霊歌)で
母親から引き離されてアフリカから遠くアメリカへ連れて来られ、二度と母のいる故郷には帰れない、
まるで母のない子のように感じてしまう…と嘆き悲しむ黒人労働者の憂いを綴ったものでした。
マハリア・ジャクソンはこの『サマータイム』の中に、
Sometimes I feel like a motherless child ( 時々、自分が母のない子のように感じる )
と 黒人霊歌の『時には母のない子のように』のタイトルを重ねて折り込んでいます。

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一方、日本でも『時には母のない子のように』という同名のフォークソングが流行ったようですが、
「母のない子になったなら 誰にも愛を話せない」というデリカシーに欠ける偏見的な歌詞に対して
母親を亡くした人たちから「私たちには愛を語る資格がないのか、ふざけるな」と猛反発を浴びせられていました。
そう思えば配慮に欠けたひどい歌詞だらけです。数多く実在する母のない子を言葉でイジメてはいけません。