八日間にわたって長々と映画に対する自分の思いを書き綴ってみました。
一段落です。
やはり、映画の本質は映像表現です。
いかにして訴えたいこと(魂の叫び)を、台詞の力を借りずに、またはできる限り台詞を抑えて映像で表現するか。
私はこの視点で映画を観ています。
フェデリコ・フェリーニの『 8 1/2 』のラストシーンは 深いノスタルジーそして 強烈な魂の叫びそのものですね。
フェデリコ・フェリーニ監督『 8 1/2 』 YOUTUBEより
今や映画はストーリーを追いかける劇映画が本流です。
興業的に成功するためには、起承転結の筋書きドラマという制約が伴います。
しかし、ストーリーに欠ける作品であっても素晴らしい映画は多々あります。
たとえば、知的ネオリアリズムの鬼才と称されたミケランジェロ・アントニオーニの『情事』。
物語の筋はというと、無人島の見物に出かけた一行の一人の女性が突然姿を消し、一組の男女がその行方を探し回る。
ただ、それだけです。
起承 はあっても 転結 はありません。
感情を映像で表現する映画には、下手なストーリーは逆に不要なのでしょう。
表向きでは繋がっている男女も、実際は互いに隔絶し浮遊の個にすぎない、という愛の不毛を 背景の自然を利用しながら映像表現しています。
また、ラストシーンは冷ややかなカメラが二人を傍観するように冷酷に締めくくられています。
映像美学と映像表現のお手本的な作品でした。
普通に物語を追って観ている人には、行方不明になった女性がどうなったかという転結を説明してもらわないと納得できないでしょうね。